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今週の小ネタ:ルックスに自信がある人ほど職場で主張できる、男性の仕事の満足度はお金の価値観に左右される、起業家にはヤバい性格の人が多い

 


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

ルックスに自信がある人ほど、職場で主張できる

自分は見た目がいいと思っている人ほど、職場で意見を言いやすい!」みたいな話(R)が出ておりました。「実際に美男美女かどうか」とは関係なく、本人が自分の外見をどう評価しているかが自己主張のレベルに影響するってことですな。

 

ここで研究チームが注目したのは、「appearance instrumentality」って概念で、日本語にすると「外見は社会で成功するための道具である、という信念」みたいな感じです。たとえば、

 

  • 見た目がいい人は、周囲から好意的に扱われる
  • 見た目がいい人は、発言を聞いてもらいやすい
  • 見た目がいい人は、能力が高そうに見られる
  • 外見は人間関係や仕事で有利に働く

 

みたいに考える傾向のことを意味してまして、このような考え方を持っている人ほど、職場で発言しやすくなるんじゃないか?と考えたわけです。

 

これは、韓国で働くフルタイム従業員153人を対象にした調査で、平均年齢は約39歳。男女比は男性が44%ほどだったとのこと。

 

調査は2回に分けて行われまして、

 

  • 1回目の調査:参加者に「自分の外見をどれくらい魅力的だと思うか」「外見は社会的に役立つ資源だと思うか」を尋ねる。

  • 2回目の調査(1週間後):今度は「自分の意見や行動は職場に影響を与えられると思うか」「職場で新しいアイデアを提案するか」「職場で問題点やリスクを指摘するか」などを尋ねる。

 

みたいになってます。ここでいう「職場での発言」ってのは、組織心理学で「エンプロイー・ボイス」と呼ばれるもので、これは単なるおしゃべりではなく、会社やチームを良くするために、自発的に意見・提案・懸念を伝える行動を指しております。もちろん組織には重要な行動なんだけど、同時にちょっとリスクもありまして、新しい提案をすれば「面倒なことを言うやつ」と思われるかもしれませんし、問題点を指摘すれば「空気を読めない」と見なされるかもしれませんからね。なので、職場で発言するには、「自分の意見はちゃんと受け止められるはずだ」という感覚が多少なりとも必要になるわけです。

 

で、分析の結果はこんな感じです。

 

  • 自分の外見を魅力的だと感じている人ほど、自分の発言や行動が職場に影響を与えられると感じやすく、その結果として、職場で意見を言いやすくなっていた

 

ってことで、やはり「俺はイケメンだ!」「私は美女だ!」と思っている人ほど活発に発言しやすいって傾向が見られたわけですね。自分は魅力的だと思うことで、「自分には職場で影響力がある!」と感じるってことでしょうな。そう考えると、「自分は見た目がいい」と思ってる人ほど積極的に発言し、それによって社内で評価される可能性も高くなるわけで、ちょっと困っちゃう話かもですな。

 

なので、この知見を個人レベルで活かそうと思うなら、外見そのものよりも自分の状態を整えることで、発言しやすい心理状態を作ろうぜ!ってことじゃないでしょうか。たとえば、過去の研究を見ていると、

 

  • 睡眠不足の日は、自分の外見評価も下がりやすい
  • 服装がしっくり来ない日は、人前で話しにくくなる
  • 髪型や姿勢が気になると、会議中の注意がそちらに奪われる
  • 体調が悪いと、自分の発言価値まで低く見積もりやすい

 

みたいなことは普通にあり得ますからね。「見た目を良くする」というよりは、普段のコンディションを整えて、良いメンタルをキープしておくのがよさそうっすな。逆に言えば、服装や身だしなみは、他人に評価されるためというより、自分の心理をアゲるための調整手段ぐらいにとらえておくのがいいんじゃないかと思うわけです。

 

 

 

男性の仕事の満足度は、パートナーのお金の価値観に左右される!

男性の仕事の満足度は、パートナーのお金の価値観に左右される!」みたいな研究(R)が出ておりました。仕事の満足度は、本人の給料や出世欲だけで決まるのではなく、パートナーと“お金をどう意味づけているか”が噛み合っているかにも左右されるぞ、みたいな話ですね。

 

これはアメリカとイギリスに住む共働きカップル178組を対象にしたもので、まずは全員に「お金は成功の証だと思うか?」を質問。その10〜14日後に、「今の仕事は、自分が求めているものを満たしているか?」を調べ、どんな傾向が見られるのかをチェックしたんだそうな。

 

で、その結果がどうだったかと言いますと、

 

  • 男性の場合、自分と女性パートナーの「お金=成功」観が一致しているほど、仕事への満足度が高かった。

 

って感じだったらしい。もう少し詳しく言いますと、

 

  • 夫婦がどちらも「お金こそ成功の証だ!」と思っている場合は、男性の仕事満足度は高い。
  • 逆に、夫婦がどちらも「お金は成功とは関係ないよね」と思っている場合も、男性の仕事満足度は高い。

 

ってことであります。たとえば、男性本人が「もっと稼ぐことが人生の達成だ!」と思っていて、パートナーもそれを応援しているなら、「よし、収入を上げるために頑張るぞ!」とキャリアの方向性が定まりやすいし、逆に、男性本人が「金より自由や意味が大事」と考えていて、パートナーも同じ価値観なら「高収入じゃなくても、この仕事でいいんだ」と安心しやすい、ってことですな。これはわかりやすい話ですね。

 

一方で、最も仕事の満足度が低いのは「カップルの価値観が中途半端にズレているケース」だったそうで、研究チームは「完全に対立しているわけではないが、なんとなく噛み合っていない状態が最も良くないのかも」と指摘しておられます。これもなかなかリアルな結果で、明確に価値観が違うと「自分とパートナーは違うタイプだ」と認識できるんだけど、中途半端にズレていると「自分はもっと稼ぐべきなんだろうか?」「パートナーは本当は収入を求めているんだろうか?」みたいな曖昧な不安が残るんで、これが日々の仕事の満足度をガッツリ下げちゃうってことですね。

 

ちなみに、女性にはこのような関係が見られなかったそうで、これも面白いところっすね。研究チームは、これは「男女にかかる社会的な期待の違いかもしれない」と指摘してまして、

 

  • 男性は今でも「稼ぎ手であるべき」というプレッシャーを受けやすく、お金を自分の価値や男らしさと結びつけやすい。
  • 一方で女性は、仕事の満足度を考えるときに、収入だけでなく、柔軟性、家庭との両立、ケア責任、職場環境など、より広い要因を見ている可能性がある。

 

みたいなことらしい。確かにこれもありそうですな。

 

まぁ、この研究は米英の異性愛カップルに絞った研究なので、日本に当てはめるには限界がありますけども、「共働きカップルの場合、仕事の満足度は自分の価値観だけで完結しないかも?」って可能性を頭の隅に置いておくのは良いことでしょう。お互いが持つ“お金の哲学”が、本人の仕事感覚に影響してる可能性は、わりと日本でも高そうな気がしますんで。特に男性は「もっと稼がねばならない」という社会的なプレッシャーを勝手に背負いやすいんで、「自分にとって稼ぐとは何か?」を考えておくのは大事なことでしょうな。

 

 

 

起業家にはヤバい性格の人が多い

「起業しやすい人には、ヤバい性格の人が多いかも?」って研究(R)が出ておりました。ここでいうヤバい性格ってのは、このブログではおなじみの「ダークトライアド」のことでして、具体的には、

 

  • ナルシシズム:自分は特別だと思う、注目されたい、支配したい
  • マキャベリズム:目的のためなら人を操作する、戦略的に立ち回る
  • サイコパシー傾向:恐怖心が低い、衝動的、共感性が低め

 

みたいな性格特性であります。普通に考えれば、「そんな人が起業家に向いてるの?」と思うわけですが、今回の研究では、なかでもナルシシズムとサイコパシーの人が起業家に多いと指摘してるんですよ。

 

これは591人のスペイン人を対象にした調査で、平均年齢は45歳。研究チームは、参加者に対していくつかの心理テストをしまして、

 

  • みんなの起業精神を測るために、「ビジネスチャンスを見つけるのが好き」「新しいアイデアを生み出すのが得意」といった項目に、自分がどれくらい当てはまるかをチェック。
  • ついでに、みんなのビッグファイブとダークトライアドもチェックして性格を測る。

 

って感じで、個人の性格と起業精神にどれぐらい関係があるのかを調べたわけです。

 

で、結果はこんな感じです。

 

  • 性別、年齢、雇用状況、性格特性などを組み合わせることで、起業家的傾向のばらつきの約41%を説明できた。心理学の研究で41%というのは、かなり大きめの数字。
  • 具体的に、起業家精神が旺盛だったのは、若い男性、自営業者、好奇心が強い人、マジメな人、外向的な人、ナルシシズムが高い人、サイコパシー傾向が高い人だった。

 

まぁ好奇心や外向性が起業精神に結びつくのはわかりやすいですが、同時にナルシシズムとサイコパシーもかなり強い予測因子だったってのが興味深いところですね。どちらも他人から嫌われる性格なんで、「これが起業に役立つの?」って気がしちゃうわけですが、起業ってのは「自分のアイデアには価値がある!」「自分ならできる!」みたいな誇大感が必要なんで、意外とナルシシズムが役立つ場面は多いんでしょうな。

 

同じように、サイコパスみが強い人はリスクを恐れないので、起業にともなう恐怖を乗り越えるのもラクでしょうからね。その点で、サイコパシー傾向もまた、起業においてはアクセルとして働くケースがあるんでしょう。

 

ということで、この研究からわかるのは、起業精神ってのは良い性格と悪い性格のミックスだってことでしょう。起業家には、たしかにポジティブな特性が必要なんだけど、同時にダークな特性も入り交じった、かなり複雑な心理パッケージなのではないか、という話です。まぁ、世の中を変える人が、必ずしも「性格がいい人」とは限らないので、これはリアルな結論っすね。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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