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内向人間が「陽キャな環境」で消耗する理由とその対処法を調べたぞ!という研究の話

 

「自分の性格に合わない環境にいるとしんどい!」みたいな感覚は、誰にでも覚えがあるはず。たとえば、本来は一人で黙々と作業するのが好きなのに、急に「人前でプレゼンしてね」と言われたり、あるいは雑談が苦手なのに飲み会で場を回す役を振られたり……みたいな感じですね。私もド直球の陰キャなので、初対面の人と会話しなきゃいけない場面に放り込まれるたびに困っております。

 

で、近ごろこの「性格と環境のミスマッチ問題」を掘り下げた研究(R)が出てて面白かったんで、内容をメモっておきましょう。

 

これは「パーソン・エンバイロメント・フィット(Person-Environment Fit)」という考え方を調べたもので、これはざっくり言うと、

 

  • 自分の性格と環境がマッチしているほど幸福度が高い
  • ズレているほどストレスが増える

 

というシンプルな話になっております。要するに「自分に合わない場所にいるだけで、人生の満足度は削られていく」ってことですね。

 

で、今回ミネソタ大学などが行った研究では、このような「性格と環境のズレ」が特に内向的な人に起きたときに何が起きるのかを細かく調べたんですよ。内向的な人における性格と環境のズレってのは、たとえばこんな状況であります。

 

  • 初対面の人とひたすら会話する

  • イベントで雑談する

  • プレゼンや会議で発言する

  • 意見の対立場面で自己主張する

 

私のような内向マンには、どれも「しんどいなー」って感じのものばっかりですな。

 

研究では、内向的な人たちがミスマッチな環境に置かれたときの感情を調べてまして、性格テストで外向性が低いと判断された135名を対象に自由記述式の調査を実施。「陽キャみたいに振る舞わなきゃいけなかった経験」について具体的な状況や感情を報告してもらったんだそうな。さらにその中から17名を選び、半構造化インタビューで詳細な体験(事前・最中・事後の心理や行動)を深掘りしてた感じになります。簡単に言えば、「内向人間が無理な環境に放り込まれたときのリアルな体験をかなり細かく聞き取った研究」みたいな感じですね。

 

すると、結果はこんな感じになりました。

 

  • 性格と環境が合わない場面に放り込まれると、内向人間はネガティブ反応が起きまくった。具体的には、不安、恐怖、緊張、イライラ、不快感、自己否定、恥、心拍数の上昇、発汗、吐き気など。
  • さらに、内向人間はその後もネガティブ反応を引きずりまくり、ずっと「あの発言まずかったかも…」みたいなセルフ反省会を無限に続けていた。参加者の中には、「もう誰とも話したくない!」みたいな、かなり消耗した状態に陥った人もいた。

 

ということで、これは覚えがある人も多いのではないでしょうか。というか、私も会社員時代に大人数の忘年会に参加させられ、その後3日ぐらい寝込んだことを思い出しました。

 

なんとも内向人間には辛い状況ですけども、一方で、この研究では以下のような結果も出ております。

 

  • 内向人間でも、回数を重ねるとミスマッチな環境に慣れる
  • ミスマッチな環境を繰り返した内向人間は、それなりに対処できるようになる

 

いかに内向的な人でも、回数を重ねればさすがに慣れが生じるってことですな。これはちょっと希望がありますが、ここで重要なのは、決して「慣れたところで快適になるわけではない」のでご注意ください。つまり、回数を重ねれば内向人間でもミスマッチには適応するものの、決して陽キャな状況を好きになれるってわけじゃないんですね。ここは勘違いしがちなポイントなので、頭に置いておきたいところです。

 

でもって、この研究では、「内向人間たちは、どうやってこのミスマッチを乗り越えていたのか?」ってところも調べてまして、これがなかなか参考になります。ここで出てきた方法をまとめると、だいたいこんな感じになります。

 

  1. 事前準備でダメージを減らす:会う人の情報を調べたり、話題をあらかじめ用意したり、よく聞かれる質問を想定して答えを準備したり、自己紹介のテンプレを作っておいたりといった事前準備で不確実性を減らすだけで、ストレスはかなり軽減される。

  2. 「安心できる人」を見つける:知っている人の近くにいたり、話しやすい相手を優先したり、先に軽く会話してウォーミングアップしたり、共通点がある相手を探して会話を固定したりといった戦略で、社会的な「セーフゾーン」を作る。

  3. セルフトークで自分をだます:「大丈夫、これは練習だ」「別に完璧じゃなくていい」「全員が自分を評価してるわけじゃない」「多少ミスっても誰も覚えていない」みたいに、認知の再解釈(リフレーミング)を行う。

  4. “頭が真っ白”対策を仕込む:内向人間はコミュニケーションの場で頭が真っ白になりやすいので、これを防ぐために「メモを取る」「話すポイントを書き出す」「あらかじめキーワードだけ手元に置いておく」「質問リストを用意しておく」みたいに、外部記憶を使う。

  5. 意図的に回復時間を入れる:一人の時間を確保したり、何も考えない時間を作ったり、散歩や軽い運動で神経をリセットしたり、スマホや人間関係から完全に離れる時間を作ったりといった回復時間を作らないと、内向型は詰みやすい。

 

どれもそこまで特別なスキルが必要なわけではないんで、自然に実践している内向人間も多いんじゃないでしょうか(私もすべてやってました)。

 

ちなみに、ここまでの話を読むと「やっぱ自分に合わない環境は全部避けるべきなのかなー」とか思うかもですが、これは判断が難しいところです。というのも、この研究では、

 

  • 確かに、性格と環境のミスマッチはストレスになる
  • しかし、そのストレスは成長のきっかけにもなる

 

という両面が確認されているんですよ。つまり、完全に避けたら成長しないし、無理し続けたらメンタルに良くないしで、やはりバランス問題ってことですな。

 

なので、個人的には以下が落としどころかなと思っております。

 

  • 基本は「フィット重視」で、自分に合う環境を優先すればOK。無理な環境には近づかない。
  • ただし「限定的にミスマッチに飛び込む」のはアリ。プレゼンを月1回だけやるとか、苦手な場面も短時間ならストレスをコントロールしつつ成長できる。
  • イベント後は予定を入れず、意識的に一人時間を確保するなど、回復をスケジュールに組み込む。これやらないと普通に消耗するので。

 

というわけで、今回のポイントをまとめると、

 

  • 性格と環境のズレはガチでストレスになり、内向型は特にダメージが大きい

  • ただし人はある程度は適応できるので、完全回避ではなく「コントロール」が重要

 

って話でした。「自分はこの環境に向いてないのでは…」と悩んでいる方は、ぜひうまく距離を取りつつ、必要な分だけ付き合うようなバランス感覚を意識してみてくださいませ。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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