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運動でストレスは減る!でも「メンタルは強くならない」!という研究を読んでみよう

 
 

「ストレスを減らすには運動がいい」って話は何度も書いてきたし、それを証明するデータも山ほどあるわけですが、まだよくわかっていなかったのが「運動によってストレスへの耐性そのものが上がるのか?」ってポイントであります。「体を動かせば、その場のイライラや目の前の不安や怒りに強くなるのか?」って問題については、意外とハッキリした結論が出ていなかったんですよ。

 

そこで今回は、「運動はストレスへの耐性を上げてくれるのか?」ってのを調べた研究(R)をチェックしておきましょう。これはピッツバーグ大学などの研究で、26〜58歳の健康な男女130名を集めて、全体を2つのグループにわけたんだそうな。

 

  1. 週150分の有酸素運動(ウォーキング・ジョギングなど)

  2. 何もしない対照グループ

 

実験の期間は1年に及んでまして、なかなか気合いの入ったデザインになってますね。

 

ここで研究チームが検証したかったのが、「クロスストレッサー適応仮説」って考え方です。これが何かと言いますと、

 

  • 運動で身体にストレスをかけると、それに体が適応しようとしてメンタルも強くなるのでは?

 

という仮説であります。たとえば、ランニングで心拍数が上がると、そのストレスに体が少しずつ慣れてきて、そのおかげで仕事のイライラにも強くなるかも?みたいな話ですね。当然ながら、身体のストレスと精神のストレスは、そこそこ同じ生理システム(自律神経やホルモン系)を共有しているんで、この考え方はいかにも正しそうな気がするわけです。

 

ちなみに今回の研究では、参加者の髪の毛をもとにストレスを計測していて、これも個人的に評価ポイントでした。通常、この手の研究では「血液」や「唾液」なんかでコルチゾール(ストレスホルモン)を測るんですが、これだと「その瞬間に発生した短期的なストレス」しか分からないんですよね。その一方で、髪の毛にはコルチゾールが長期にわたって蓄積されるので、髪を調べれば過去数ヶ月で「どれぐらいのストレスを味わったのか?」がわかるんですよ。「慢性的なストレス」を見るには、髪の毛のほうが断然いいわけっすね。

 

で、1年後の結果はこんな感じになりました。

 

  • 運動したグループは、髪のコルチゾールが低下していた

  • 対照グループには変化がなかった

 

つまり、定期的な運動には「長期的なストレスを確実に下げる働きがあった」ってことですな。これはかなり重要なポイントで、コルチゾールが高い状態が続くと、

 

  • 心疾患リスク増加
  • 代謝異常(太りやすくなる)
  • 睡眠の質低下

 

みたいに、いろいろ問題が起きちゃうんですよ。そう考えると、「週150分の運動でこれが下がる」というのはかなり優秀な結果だと言っていいんじゃないかと。

 

が、ここで難しいのが、「じゃあ運動すればストレスに強くなるのか!」と思いたいところですが、話はそう単純でもなかったりします。実はこの研究では、脳のストレス反応や血圧の変化、感情の揺れなども測ってるんですが、このあたりにはほぼ変化が出ていないんですよ。

 

つまり、定期的な運動ってのは、

 

  • 慢性的なストレス(体のベース状態)を改善してくれる
  • が、その場のイライラ耐性を改善してくれるわけではない

 

ってことになりますね。イライラ耐性に変化がなかったってのは、ちょっと意外な結果ですなぁ。

 

このような結果が出た理由について、研究者たちはいくつかの原因を推測してまして、個人的に納得感があったのはこのあたりです。

 

  1. そもそも全員が健康すぎた問題:今回の参加者は「かなり健康な人」だけなので、コレステロールや炎症マーカーなどが元から良好で、「これ以上よくなりようがない」状態だった可能性がある。

  2. 日常ストレスの記録がない:この研究では、「どれくらいストレスのある生活だったのか?」「日々のイライラはどの程度だったのか?」などを測っていないので、「コルチゾールは下がったけど、主観的ストレスはどうなの?」が不明だったりする。

 

いずれも「ここは判断が難しいなー」ってポイントでして、ここまでの話を踏まえると実用的なポイントはこんな感じになるでしょう。

 

  • どうやら、運動すれば日ごろから最強のメンタルを手に入れられるってわけではないらしい

  • しかし、運動は“ストレスの蓄積”を減らすのには役立つ

 

運動とストレスの関係を考える際は、この違いを理解しとくのが大事ってことですね。

 

なので、長期的なストレスに立ち向かうために運動を使うのであれば、

 

  • 週150分(1回30分×週5くらい)
  • やや息が上がる強度(早歩き〜軽いジョギング)を維持する

 

ってラインを目安にすると良いでしょう。いわゆるWHOが推奨する運動量と同じですな。

 

また、最も重要なポイントとして、今回の結果を見る限り「運動はその場で起きたストレスに強くしてくれるわけではない」って感じなので、

 

  • 認知行動療法みたいに認知のクセ(考え方)を変えるテクニック
  • セルフケアに特化したストレス対処スキル

 

みたいな「心理的アプローチ」は別に必要になるのかもですな。

 

というわけで今回のまとめとしては、

 

  • 運動は慢性的ストレスには効く!
  • ただし即効的なストレスの強さを上げてくれるわけじゃない!


ってことでして、いわば運動は「気づかないうちに効いてるタイプのストレス対策」なのだと申せましょう。即効性こそないものの、長期的なストレス対策を考えるならやはり外せない習慣ではありますね。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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