今週の小ネタ:マインドフルネス瞑想で記憶力は上がるのか?ゲームへのモチベが高い人ほど創造性が高い?SNSは脳に悪いのか?

ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
マインドフルネス瞑想で記憶力は上がるのか?
かつてのマインドフルネスブームもだいぶ落ち着いてきた印象ですけども、最近はだいぶ落ち着いてきた感じっすね。とはいえ、水面下では研究は着々と進んでおりまして、近ごろは「瞑想で記憶力は上がるか?」を調べたデータ(R)が面白かったんで、内容をメモっておきましょう。
こいつは河南大学などのチームが行った研究で、「瞑想と時間ベースの展望記憶」について調べたものです。ちょっとややこしい名前ですが、簡単に言えば「◯時になったら◯◯をやる」と覚えておく力を意味しております。たとえば、
- 17時になったら薬を飲む
- 30分後に洗濯物を取り込む
- 会議の5分前にZoomを開く
みたいなタスクを覚えておくために必要なスキルのことですね。これは意外と脳への負荷が高い作業で、なぜかと言うと、
- 時間の経過を自分で把握する(プロスペクティブ要素)
- やるべき行動を覚えておく(レトロスペクティブ要素)
という、2つの処理を同時にこなす必要があるからです。しかも、「アラーム」みたいに外部からの刺激がない場合には、完全に自分の頭の中だけで管理しなきゃいけないので、注意力が削られやすくなっちゃうんですよ。「あ、あとでやろうと思ってたのに忘れた…」って問題は、この能力が上手く働かないせいで起きることが多いんですね。
で、ここで研究チームが目をつけたのがマインドフルネス瞑想で、ざっくり言うと「今この瞬間に注意を固定するトレーニングによって、「未来の予定を覚える力」が向上するかもしれないと考えたんですな。そのために、研究チームは大学生95名を集め、全体を2つのグループにわけております。
- 瞑想グループ:1週間、毎日ガイド付き瞑想をする(瞑想の内容は、呼吸に集中して、気が散ったら戻すという王道スタイル)
- コントロールグループ:普通に読書などをする
その上で、全員に「時間ベースの展望記憶」を測るテストをやってみたところ(時計をほぼ見れない状況で「1分ごとにボタンを押す」みたいなやつ)、
- 瞑想グループのテスト成功率は約52%
- コントロールグループの成功率は約28%
ということで、ほぼ2倍の差が見られたんだそうな。それというのも、瞑想していた人たちは「なんとなく時間を感じる能力」が上がっていたらしく、そのおかげで時間をベースにしたタスクが改善しやすくなったらしい。面白いですねぇ。
まぁ、この研究は単純化されたラボ実験なんで、リアルな生活でも同じことが言えるのかは謎なんですけども、
- 会議中に時間を気にしながら話す
- 試験中の時間配分
- スマホを見ずに作業時間を管理する
みたいな状況で、瞑想のトレーニングが役立つ可能性はあるんじゃないでしょうか。
というわけで、上記のような記憶力を手に入れたい方は、シンプルな呼吸瞑想をやってみるのもいいんじゃないでしょうか。呼吸に意識を向けて気がそれたら戻すって作業を1回10〜15分、1日1回ずつ最低1週間続ければ、なにがしかの効果を得られるかもしれません。
ゲームへのモチベが高い人ほど創造性が高い?
ここ数年は、ゲームのベネフィットを報告するデータが増えてまして、新しい研究(R)も、「ゲームへのモチベーションが高い人ほど創造性が高いのでは?」といった仮説を提案しておりました。
これは台湾で行われた調査で、まず研究チームは、「ゲームと創造性」を調べたデータはすでにそこそこあるって事実を指摘しておられます。たとえば、
- ゲームをよくやる子どもは創造性テストのスコアが高い
- 暴力的ゲームでも創造性は下がらない
- 学生の創造的思考が改善する
みたいな報告はいくつもありまして、この点でやはりゲームにはメリットがありそうなんですよね。ただし、これまで行われた研究の多くは、視覚能力や問題解決能力ばかりをチェックしたものが多く、「想像力(イマジネーション)」との関係はあまり深掘りされていなかったらしいんですな。
そこで今回の研究では、
- ゲームへのモチベーション
- 想像力
- 創造性
という3つの関係をまとめてチェックしていて、めっちゃいい感じなんですよ。具体的には、
- 202名にアンケートを行い、ゲームへのモチベーション、想像力、創造性をそれぞれスコア化して測定。
- さらに12名を対象に、「『原神』をプレイするグループ」と「『Roblox』をプレイするグループ」に分けて4週間ゲームをやってもらい、脳活動(EEG)を測定。
みたいになってまして、なかなか気合いが入っております。
で、結果がどうだったかというと、
- ゲームへのモチベーションが高い人ほど想像力が高い!
- 想像力が高い人ほど創造性が高い!
という関係がバッチリと確認されたんですよ。つまり、ゲーム好きは想像力が旺盛で、そのおかげで創造性も高まるって仮説が支持されたわけです。
まぁこの結果には割と納得でして、ゲームって普通に想像力を使うものが多いですからね。たとえば、
- オープンワールドゲーム → 世界を自由に探索
- サンドボックスゲーム → 自分でルールを作る
- RPG → ストーリーやキャラに没入
みたいな要素ってのは、全部「頭の中でシミュレーションする力」を使うじゃないですか。この「頭の中で世界を作る力」ってのはまさに想像力ですし、この力が強ければ、
- 新しいアイデアを組み合わせる
- 既存の枠にとらわれない発想をする
みたいな創造性につながるってのも、わかりやすい話じゃないでしょうか。もちろん、実験パートの人数が12人と少ないし、EEGから心理状態を推定するのはやや荒いんで、そこは注意ですけども、個人的にはゲームはいいんじゃないかって気がしましたね(特に「作る系」のゲーム)。
SNSは脳に悪いのか?
「SNSは脳に悪いのか?」を調べた研究(R)が出ておりました。SNSの研究といえば、だいたい「メンタルが悪化する」「睡眠が乱れる」「依存がヤバい」みたいな“行動レベル”の問題を調べたものが多いんですが、ここでは「SNSが脳の構造そのものに与える影響」をチェックしていて、勉強になりました。
これは10〜13歳の子ども 7,614人を対象にした研究で、みんなのSNS利用時間を調べつつ、同時にMRIで脳の構造を測定したんですよ。もちろん、家庭の収入や教育レベルなども細かく調整してまして、なかなかガチな設計でいいですな。
で、分析の結論をざっくり言うと、
- SNSの使用時間が長い子ほど、大脳皮質が薄い傾向があった!
みたいになります。ご存じのとおり「大脳皮質」ってのは、思考、記憶、注意、感情コントロールなどを行う、いわば“人間らしさの中枢”でして、ここが薄くなっているってのは「ちょっとヤバいのでは?」って感じがするわけです。
まぁ大脳皮質が薄いからといって必ずしも悪いとは言えないので、これが本当にマズい問題なのかは謎なんですが(脳は成長の過程で自然に薄くなるんで)、過去の研究では、
- 皮質が過剰に薄くなると、感情のコントロールに問題が出るかも?
とは報告されてまして、「問題の可能性はあるかもなー」という気もしてくるんですよ。なんとも言えないものの、気になる報告であるのは間違いないっすね。
とりあえず、今回のデータを見る限りは、とにかくSNSを長時間使うことがリスクになるっぽいので、1日30〜60分程度に収めたり、ダラダラスクロールを避けるってあたりは意識したほうが良さそうっすね。特に、10〜13歳は脳の発達において超重要な時期なんで、使用時間はある程度コントロールしたほうがいいかもですな。


