【質問】処方せんなしで買える【最新ダイエット薬】って意味ありますか?
こんなご質問をいただきました。
肥満改善の飲み薬を、処方せんなしで薬局で買えるようになったようです。薬剤師の指導だけで買えるようなのですが、これはどれぐらいの効果があるのでしょうか? 肥満の予防に効いたりしませんか?
ということで、近ごろ「処方せんなし「肥満改善薬」薬局で販売へ」なんてニュースも出まして、ちょっと盛り上がっている感じじゃないでしょうか。
で、今回承認された薬の主成分は「オルリスタット」というやつです。肥満改善の薬としては長い歴史がある成分で、私が20代のときに、海外から個人輸入して試してみたことがあったりします。
この成分は、脂肪を分解する酵素の働きをジャマする働きがありまして、そのおかげで摂取カロリーが減ると考えられているんですよ。汚い話で恐縮ですが、私が試したときは、排便後のトイレが豚骨スープみたいにギトギトになってビックリしました。「ほんとに脂肪の吸収を防いでいる!」ってのが視覚的にわかる感じでしたね。
アメリカだと、FDAがオルリスタットを認めたのは1999年で、BMI30以上の肥満かBMI27以上の過体重の人に役立つ減量薬として世に出たのが初めてですね。通常は、カロリー制限のサポートとして使われます(R)。
その点で、ダイエット薬としては定評があるのは間違いなく、だいたい以下のような実験が行われております。
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3,305人の肥満患者を対象にした長期研究(4年間)(R)では、120mgのオルリスタットを1日3回ずつ飲んだグループは、最初の1年間で体重が平均で10.6kg減ったのに対し、プラセボ群は6.2kgの減少にとどまった。
ただし、残りの3年間は両グループともリバウンドが起こり、オルリスタットを飲んだグループは5.8kgの体重減少に終わった(プラセボ群は3.0kg)。
また、この実験は、現在の体重を維持するために必要なカロリーよりも1日800キロカロリーものカロリー制限をしているので、その点も注意が必要。つまり、オルリスタットさえ飲んでいればダイエットに成功するわけではない。
- 2014年のレビュー(R)によると、低脂肪食をしつつオルリスタットを飲んだ男女は、プラセボよりも1年で体重が3.4kg多く減った。これは初期体重の3.1%に相当するぐらいの減り幅なので、そこまで激しい効果というわけではない。オルリスタットが60mgの場合はさらに効果が低く、プラセボ群に比べて2.5kgぐらいしか体重が減らなかった。
また、治療をスタートしてから1年ぐらいで、リバウンドも起こるっぽい。
ということで、こうして見てみると、「まー、そんなめちゃくちゃ効果があるわけじゃないけど、カロリー制限と組み合わせれば意味はあるのでは?」ぐらいの印象じゃないでしょうか。激しく肥満に悩んでいる方であれば、そこそこ使う意味はあるでしょう。
ただし、オルリスタットにはそれなりの副作用もありますんで、そこらへんも注意したいところではあります。具体的には以下のような感じですね。
- 消化器系のトラブル起こりがち:オルリスタットは脂肪の呼吸を妨げるので、未消化の脂肪が腸にたまり、腹痛や下痢が起きることがあります。また、そのせいでお腹がゆるくなりすぎて、便失禁などが起きることもあったりします(R)。
- 栄養吸収が阻害されがち:オルリスタットをずっと飲んでいると、ビタミンA、D、E、K、カルシウムなどの吸収が損なわれ、栄養不足になる可能性もあったりします(R)。
- 腎臓障害のリスクが増える:吸収されない脂肪が消化器官でカルシウムと結合して、腎臓トラブルが起きやすくなる可能性もあったりします(R)。
ということで、オルリスタットを飲む際は、ここらへんの副作用に気をつけねばならないわけです。特に消化器系のトラブルはかなり起きがちなんで、お腹がゆるい人はかなり注意が必要ですね。
そんなわけで、オルリスタットについてまとめると、こんな感じになります。
- オルリスタットには減量効果がある。しかし、その効果は割とひかえめだし、カロリー制限や運動などと組み合わせないと、効果を得られにくいと思われる。
- また、オルリスタットの研究は、かなりの肥満体な人にしか行われていないため、ちょっと体がぷよってるぐらいの人が使って意味があるかは謎(おそらく無駄だと思う)。
ということで、オルリスタットを使う際は、もともと激しい肥満に悩んでいる人じゃないと意味がないし、厳しいカロリー制限が必要だし、それでも大した効果ってわけでもないしで、個人的には激しくおすすめってわけでもないです。あくまで、激しい肥満にお悩みの方はご一考ください。