今週の小ネタ:マインドフルネスはなぜ睡眠に効くの?不安が増しちゃうかもしれない危険食品とは?あなたの信頼度を上げる簡単なコミュニケーションハックとは?
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
マインドフルネスはなぜ睡眠に効くの?
「マインドフルネスはなぜ睡眠に効くの?」ってポイントを調べた研究が出ておりました(R)。マインドフルネスでよく眠れるようになるって報告は昔からあったんですけど、その理由についてはまだよくわかってなかったんですよね。
研究チームいわく、
マインドフルネスは、労働者のストレスに対する魔法の特効薬のように思われがちだ。
その理由は、今この瞬間に集中し続けることで、あたかもストレスを感じることがないかのように思えるからだろう。
しかし、マインドフルネスのこの側面には、もっとニュアンスを加える必要があるだろう。
とのことで、闇雲にマインドフルネスを持ち上げるんじゃなくて、しっかりメカニズムを調べようぜ!って視点が強調されておりました。そりゃそうですよね。
ってことで、この研究では、144人の看護師を対象に、2週間にわたって自分が考えたことを記録してもらいつつ、同時に日々のストレスレベルと睡眠を測定したんだそうな。すると、その結果にはハッキリした傾向が見て取れまして、
- 日中、マインドフルネスに過ごす時間が多い人(心を今この瞬間に保つことができた人)は、夜もよく眠れ、ストレスも少なく、健康状態も良好だった。
- このようなマインドフルネスのメリットは、ネガティブなことを何度も考えてしまう状態が少ないことと強く相関していた。
って感じだったらしい。マインドフルネスは看護師のネガティブ思考の総量を減らし、それによって睡眠が改善している可能性が高いわけですね。
さらに研究チームいわく、
マインドフルネスは、自分の置かれた状況について異なる考え方をする手助けになる。
例えば、仕事で否定的な評価を受けたとしたら、自分がいかに失敗したか、いかに無能かという否定的な考えから、何が正しかったか、どうすれば成長できるかという肯定的な考えに焦点を移しやすくなる。
生まれつきマインドフルネスのレベルが低い人でも、目の前で経験していることに集中するように意識することで、有益なメリットを得られる可能性が高い。
とのこと。マインドフルネスが上手くなると、ネガティブな思考や感情から距離を取るのが上手くなり、そのおかげでよりポジティブな思考が可能になるんで、最後には睡眠の改善につながるんだ、と。これは、いかにもありそうなメカニズムですな。
不安が増しちゃうかもしれない危険食品とは?
「高脂肪食で不安が激増する……かも?」みたいな動物実験(R)が出ておりました。ストレスを感じると脂肪たっぷりのお菓子などを食べたくなる人は多いですが、もしかしたらこれは逆効果なのかもしれないわけですな。
これはラットを使った実験で、全体の半分には脂肪が45%を占める食事を9週間与え、残りの半分には脂肪が11%しか含まれない通常の食事を与えたそうな。でもって、実験の間にラットの腸内細菌を測定し、行動テストで不安レベルを評価したところ、こんな結果が見られました。
- 高脂肪食を摂取したラットは、体重が増加しただけでなく、他のグループに比べて腸内細菌の多様性が低くなっていた(細菌の多様性が高いほど、一般的に健康状態が良いと言える)。
- 高脂肪食グループは、ファーミキューテス菌のレベルが高く、バクテロイデーテス菌のレベルが低かった(ファーミキューテス菌が多いと、肥満になりやすいと言われる)。
- 高脂肪食を食べたラットは、感情の調節に重要な脳領域へのセロトニンの産生と輸送に関わる遺伝子の発現が多かった。一般にセロトニンは "気分の良い "ホルモンと言われるんだけど、ある種のセロトニンのサブセットは不安を引き起こす可能性があったりする。
- 結果、高脂肪食を食べたラットは、不安っぽい行動を取ることが多くなった。
ってことで、この結果を見る限り、高脂肪食によって腸内環境が乱れ、細菌の多様性が減り、それによって不安が増えてしまうのではないか?って気がするわけです。
あくまで動物実験なので、どこまでヒトにも同じことが言えるかはわからないんだけど、「人間でも高脂肪食で神経炎症が増えたよー」って報告は過去にもあったんで、飽和脂肪の摂り過ぎが不安を激増させる可能性はあるかもですね。
研究チームいわく、
この研究は、飽和脂肪酸を中心とした高脂肪食により、若者の不安を急速に増大させる可能性があることを示唆している。
腸内環境を改善するために、発酵食品とともに果物や野菜を多く食べたほうが良いだろう。
とのことなんで、脂肪好きの方はぜひお気をつけください!
あなたの信頼度を上げる簡単なコミュニケーションハックとは?
「人は同じような話し方をする相手を信頼する!」って研究(R)が出ておりました。例えば、コンピュータのことを「PC」と表現する人は、コンピュータを「パソコン」という人に対して無意識に壁を感じるし、「ミーティング」って言葉をよく使う人は、「会議」という人になんとなく抵抗を感じるしで、いまいち仲良くなりづらい気がしてしまうって話ですね。
この研究は、100人の参加者を対象にしたもので、まずは全員がどのような話し方をして、どんな文法や構文を使っているのかをチェック。そのうえでお互いに会話をしてもらい、どの相手と協力したいかを尋ねたんだそうな。
その結果について、研究チームはこんなことを言っておられます。
予想通り、参加者たちは、自分と同じような話し方をし、同じ文法と構文を使う会話相手を信頼できる人間として選ぶ傾向があった。
自分にとって自然な言語表現に基づく同じ社会集団への帰属意識は、協力相手を選ぶ上でより決定的な要因である。
一方で、相手と自分の表現方法が似ていることによる協力的な姿勢の誇示は、はるかに重要度が低い。
今回の研究は、私たちが意識していないような小さな言語的差異でさえ、私たちの協力意欲に一役買う可能性があることを示している。
ちょっとややこしい表現なんで、簡単にまとめ直しておきますと、
- 私たちは、自分がよく使う表現を使う人を信頼する。
- 同じ言葉づかいの人を信頼するのは、その人が同じ社会的グループに属していることの証明になるからである。
- 「この人は自分の言い方に合わせてくれているから協力的だろう」と感じる人もいるだろうが、こちらが信頼感に与える重要度はめっちゃ低い。
って感じになります。要するに、同じ言葉を使う人は同じコミュニティに所属しているから、より信頼できそうに思えるんだってことですね。裏社会の人が隠語を使いまくるのも、同じ理由によるところが大きいですもんね。
ということは、ここで大事なのは「同じ言葉を使う」ってとこではなく、「相手と同じコミュニティに所属する」ってところなんでしょうなぁ。ここは大事なポイントですね。