瞑想で老化は防げるのか?を18カ月の実験で検証したらどうなった?
「瞑想で若返るのか?」ってのを調べたデータ(R)が出ておりました。
実は昔から「瞑想をするとストレスが減るから老化が遅くなる」みたいな話は出てまして、2010年代に心理学者のエリザベス・ブラックバーン先生(ノーベル生理学・医学賞受賞者)が、こんな指摘をしたんですよ。
ストレスはテロメアを短縮させ、逆にマインドフルネスや瞑想はテロメアを保護する可能性がある。
テロメアってのは染色体の末端にあるDNAの保護キャップのようなもの。細胞分裂のたびに短くなり、限界まで短くなると細胞は寿命を迎える性質を持ってまして、つまりテロメアの長さは「細胞の年齢」とも言えるわけですね。
事実、このテロメアが短くなると、老化や認知機能の低下、心疾患、がんなどの病気が起きやすくなることがわかってたりします。そのため、「テロメアを維持できれば、老化を遅らせられるのでは?」って発想が生まれ、いろんな方法が模索されてるわけですな。
そこで近年は「瞑想がテロメアを守る説」にも注目が集まりまして、今回の研究はそこらへんを割と厳密に調べてくれてるんですよ。具体的には、この研究は65歳以上の高齢者137名を対象にしたランダム化比較試験(RCT)で、参加者は以下の3つのグループに分けてます。
- 瞑想グループ:18カ月間の瞑想トレーニングを受ける(週1回のクラス+自宅での実践)
- 外国語学習グループ:18カ月間、英語を勉強する
- 何もしないグループ:普通に生活を続ける
その上で、すべての参加者の血液を採取してテロメアの長さを測定したところ、結果はこんな感じになりました。
- 残念ながら、瞑想でテロメアは伸びなかった
- ただし、データを細かく見ると、瞑想を続けた人はテロメアの短縮が抑えられていたっぽい。つまり、瞑想そのものに効果があるかどうかは微妙だけど、しっかりと実践を続けた人には何らかの良い影響があるのかもしれない。
- 「オープンネス(新しい経験を受け入れる傾向)」が低い人ほど、テロメアの短縮が少ない傾向もあった。「オープンネスが低い人」とは「新しいことに対して慎重なタイプの人」を意味しており、ルーティンや決まった行動を好む傾向がある。そのため、瞑想を続けるのが上手かったのかもしれない。
ってことで、どうも瞑想をしてもテロメアが伸びるわけではないものの、ちゃんと続けていればテロメアの短縮を抑えることは可能なのかも……?ぐらいの結果ですね。これを見ると、「瞑想=若返りの秘訣」 って単純な話にはならなそうなんだけど、1日20分の瞑想を18カ月にわたって毎日続けられるような人であれば試す価値はありそうな気がしますな。瞑想がストレスを減らすのは間違いないので、それが間接的に老化を遅らせる可能性は十分にありますし。
ちなみに、この実験では「マインドフルネス瞑想」と「慈悲の瞑想」という2種類の手法を採用してまして、それぞれ9カ月ずつ行うように指示したらしい。いちおうそれぞれの瞑想法も記録しておくので、瞑想をアンチエイジングの手段にしたい人は、こちらも参考にしてみてくださいませ。
1. マインドフルネス瞑想
現在の瞬間に注意を向け、雑念に流されずに「今ここ」に集中することを目的とした瞑想法。具体的には、以下のように行う。
- 呼吸に意識を向ける(「今、息を吸っている」「今、息を吐いている」と観察する)
- 雑念が浮かんでも、それを判断せずに流す(「考えが浮かんだな」と気づき、また呼吸に戻る)
- 身体の感覚や周囲の音などをただ観察する
- 20分が過ぎたら終了
この方法は最も研究例が多く、ストレス軽減、感情のコントロール向上、集中力アップといった効果が報告されてたりします。なので、「瞑想っていろんな方法があるけど、どうすりゃいいのかわからんな……」って時は、とりあえずこれをやっとけばOK。
2. 慈悲の瞑想
こちらも研究例が多い瞑想法のひとつ。自分や他人に対してポジティブな感情を育てることを目的とした手法で、特に社会的つながりや感情の安定を高めるのに効果があるとされる。具体的には、以下のように行う。
- 自分に向けて「幸せでありますように」と祈る
- 家族や友人、さらには苦手な人にも同じように願う
- 「すべての生き物が幸せでありますように」と広げていく
- 20分が過ぎたら終了
こちらの瞑想については、社会的つながりの強化、孤独感の軽減、ポジティブな感情の増加といったメリットの報告が多いんで、対人関係にお悩みの方ほど試す価値があるでしょう。上の瞑想法でマインドフルネスの基盤を築いたら、さらにこちらに移行してみるのもアリっすね。
まぁ、正直なところ、今回のデータを見る限り「テロメアを伸ばす」のが目的なら、瞑想よりは運動や健康的な食生活を心がけたほうが確実な効果を得られそうではあります。なので、あまり期待せずに「ストレス軽減のついでにテロメアの短縮が抑えられればいいなぁ……」ぐらいの姿勢で取り組むといいんじゃないでしょうか。どうぞよしなに。