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「クレアチンでハゲる」は本当か?髪とサプリの因果関係をがっつり検証した研究の話

   

 

「クレアチンを飲むとハゲるらしい……」みたいな都市伝説が、筋トレ好きの間ではまことしやかに流れているわけです。簡単に言うと、

 

  • クレアチンを飲む→テストステロンがDHTに変わる→髪の毛が抜ける!

 

みたいな考え方でして、これが事実ならクレアチンラバーの私としては困っちゃうわけです(まあ個人的にはあんまり信じてないんだけど)。

 

で、新たに「クレアチン=ハゲ説」の真偽を確かめるために行われたナイスな研究(R)が行われましたんで、これまでの経緯もふまえつつ内容をチェックしときましょう。

 

 

なぜ「クレアチン=ハゲ説」が広まったのか?

ことの発端は、2009年に発表された小さな研究(R)にさかのぼります。南アフリカの研究チームが、ラグビー選手たちに21日間クレアチンを飲ませたら、

 

  • 血中のDHT(ジヒドロテストステロン)濃度が約40%アップ!

 

という衝撃的な結果を発表したんですね。ご存じのとおり、DHTってのは男性型脱毛症(AGA)の最大の原因とされてまして、毛根にある受容体にくっつくことでヘアサイクルを乱してしまうわけです。となると、「クレアチンがDHTを増やす=ハゲの原因!」って発想になるのは当然で、ネットやSNSを中心に、いわゆる「クレアチンでハゲる説」が定着していったという流れになっております。

 

が、よくよく考えると、この研究にはいくつか問題点がありまして、

 

  • DHTの増加は確認されたが、脱毛そのものは評価していない
  • サンプル数はたった20人
  • クレアチンの量が一般的な摂取量(5g)よりかなり多かった(25g/日)

 

というあたりが、「それはどうなのよ?」と思うしかない感じになってるんですよ。

 

 

最新研究では「クレアチンでハゲる証拠なし」

そんな中、新しい研究では、「クレアチンを12週間飲み続けたら、実際に髪の毛にどんな影響があるの?」という、このクレアチン都市伝説をガチで検証した内容になっております。ありがたいですねぇ。

 

研究のポイントをざっくりまとめてくと、

 

  • 18〜40歳の筋トレ歴1年以上の男性38名が対象
  • 実験の期間は 12週間
  • 参加者に1日5gのクレアチン、または味・見た目を合わせたプラセボを摂取してもらう
  • 血中ホルモン(テストステロン、DHT)測定と、高精度カメラによる毛髪・頭皮の状態チェックを行う

 

みたいになります。1日5gというリアルな量で、クレアチンが頭皮にどんな影響が出るのかをチェックしたわけっすね。良いですねぇ。

 

で、結果がどうなったかと言いますと、

 

  • DHTもテストステロンも、クレアチン群とプラセボ群で変化なし!
  • 髪の毛の太さ・密度・本数にも、目立った差はなし!

 

という、まさかの「完全にノーダメージ」って結果だったんですな。厳密に言えば、DHTはちょっと動いてるんですけど、あくまで正常の範囲内に収まってまして、脱毛に直結するような変化はなさそうっすね。となると、最初にクレアチン=DHTアップという結論を出した2009年の研究が気になりますが、当時は「研究の結果を盛りすぎた俗説」が広まったってことなんでしょうな。

 

 

クレアチンでハゲる可能性、ホントにゼロ?

ただ、そう言われても「研究で“影響ない”って言っても、ゼロとは言い切れないよなぁ…」と思っちゃう人もおりましょう。たしかに、この研究も12週間しか見ていないので、「10年飲み続けたらどうなるか?」という点は、まだよくわからんとしか言いようがないっすね。

 

また、DHTの影響には個人差も大きくて、

 

  • 毛根のDHT受容体の感度
  • 5αリダクターゼ酵素の活性
  • 遺伝(特に母方の家系)

 

なんかが絡んでくるため、ある人には影響が出ても、別の人には出ないというパターンも十分あるのが難しいところ。とはいえ、現時点のエビデンスを見た限りでは、「クレアチンが原因でハゲる」という根拠はかなり薄く、「もし仮にあったとしても、ごく少数の例外的な話にとどまる」可能性が高いでしょう。

 

もしも本当に「髪の毛を守りたい!」ということであれば、クレアチンどうこうよりも、

 

  • 慢性的なストレス: コルチゾールの上昇が脱毛を促進するという報告もあり
  • 鉄・亜鉛・ビオチンなどの栄養不足: 特に女性では要注意(ただし、サプリを乱用するのはNG)
  • 慢性疾患や投薬の影響: 甲状腺疾患、抗がん剤、抗うつ薬なども関係

 

といったあたりに気を配るほうがいいでしょうな。

 

ということで、今回の話をまとめると、

 

  • クレアチンを飲んでも、DHTや髪の健康には影響しない
  • 髪の毛を守るには、栄養・ストレス・ホルモン環境がもっと重要
  • 「クレアチンでハゲる」は、2009年の小規模研究から生まれた神話
  • エビデンス的には、安心してクレアチンを摂ってOK!

 

って感じになるでしょう。なにせクレアチンは、筋力アップ・認知機能サポート・神経保護など、多くのメリットが示されている優秀サプリなんで、「髪が……」と心配して敬遠していた方は、これを機に安心して使ってみても良いかもしれませんな。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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