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コラーゲンサプリは本当に肌に効くのか?最新メタ分析をガッツリ読んでみよう!

 
 

コラーゲンは本当に肌に良いのか?って議論はまだまだありまして、これまでの流れをまとめておくと、

 

  1. かつて、科学クラスタでは「コラーゲンは体内でアミノ酸に分解されるから、特別に肌に良いはずがない!」って論調が一般的だった

  2. しかし、ここ10数年では「加水分解されたコラーゲンであれば、実際に肌の老化にメリットがあるのではないか?」と言われ始めた

  3. 実際のところ、小規模な研究では、加水分解コラーゲンの有用性を示したものも増えている

 

みたいな感じになります。かつては「コラーゲン=肌に良い」説は擬似科学も同然のように扱われていたんですが、意外と最近はコラーゲンが巻き返している印象なんですよ。

 

ってことで、そんな状況下、コラーゲンの美容効果をがっつり調べたメタ分析(R)が出ていたので、こちらの内容をチェックしておきましょう。

 

で、まずは、研究チームの結論をまとめておくと、大体こんな感じになります。

 

すべてのRCTを統合したメタ分析では、コラーゲンサプリメントが肌の水分量、弾力性、シワの改善に有意な効果を示した。

 

しかし、資金提供元によるサブグループ分析では、製薬会社などから資金提供を受けていない研究では効果が見られなかったのに対し、資金提供を受けている研究では有意な効果が認められた。

 

同様に、研究の質による分析では、高品質な研究ではすべての項目で有意な効果が認められず、一方で低品質な研究では「弾力性」において有意な改善が見られた。

 

ということで、ご覧のとおり、大筋では「信頼性の高い研究ではコラーゲンの効果なし!」って感じで、研究チームはまとめているんですよね。なので、これだけ読むと「コラーゲンサプリはやはり意味がないのか!」と断定したくなりますけれども、私としては珍しいことに、研究チームがくだしたこの結論には、いささか問題があるんじゃないかと思っております。というのも、このデータをちゃんと見てみてみると、「あれ?実際にはコラーゲンって有効なんじゃないか?」と思わせる結果になってるもんですから。研究チームの結論そのものにケチをつける事はあんまりないんですけど、今回は珍しく「これはどうなんだろうなぁ」と思ったので、その点をまとめてみましょう。

 

ということで、まずこの研究がどのような調査をしたのかをまとめておくと、ここでは計23件のランダム化比較試験(RCT)から1474人のデータを分析しております。その結果、コラーゲンを飲んだグループは、

 

  • 肌の水分量が有意に改善!

  • 弾力も有意に改善!

  • シワの深さが有意に減少!

  • 肌の粗さが改善傾向あり

 

って感じだったんですよ。事実、私が確認してみたところ、23研究中22がポジティブ(改善あり)でして、「あれ?なんで筆者たちは確実なエビデンスとは言えないって結論にしたんだ?」みたいな気分になっちゃうわけです。さらに言えば、もうちょい内容をチェックしてみると、高品質とされた研究のうち5本中4本で有意な改善が見られてるし、平均Jadadスコアは4.3点だしで、決して上記の結論にあるような「高品質な研究では効果がない」ってこともないんですよ。うーん。

 

では、なんで研究チームが「コラーゲンに効果なし」という結論に至ったのかと言いますと、だいたい以下のような理由があるかと思われます。

 

  • p値へのこだわりが強すぎる問題:研究チームは、高品質(Jadadスコアの高い)研究だけを再分析してるんだけど、そのせいでサンプル数が減って、統計的パワー(検出力)が低下しちゃってるんですよ。結果、一部の指標(特にシワ)ではp値が0.05を少し超えてまして、これを研究チームは「有意差なし → 効果が確実とは言えない!」と判断したわけです。

    まぁ「p値が0.05を切らなかったからアウト」ってのは定番の判断ではあるので、決して文句は言えないところであります。が、ここで具体的な効果量(Cohen’s d)を見てみると、0.5前後(中程度)の数値を出してまして、これは統計的にギリ有意じゃなかったとしても、見過ごすには惜しい成果が出てると思うんですよねぇ。だいたい、被験者の肌は8〜10%ほどシワが浅くなってたみたいですし。

 

  • 「高品質研究」ほどp値が出にくい問題:これも重要なポイントで、高品質なRCTほど「被験者数が少ない(コストが高くなるから)」「 測定が厳密でばらつきが大きく見える」「条件が細かく、現実的な変化が出にくい」みたいな結果が出やすいんですよね。要するに、研究ってのは丁寧にやるほど「有意差」が出にくくなる傾向がありまして、このメカニズムを知らないと、「質が高い研究ほどコラーゲンの効果が出ていない」みたいな錯覚が起きがちなんですよ。これもまた、p値が低いせいでコラーゲンの効果が切り捨てられる原因になってまして、なんとも切ないところです。

 

  • 企業の出資を怪しく思いすぎ:研究チームは、「企業資金あり vs なし」でサブ解析も行ってまして、その上で「企業資金ありの研究では効果があるが、資金なしでは効果がない。」と言っておられます。が、実際のデータを見てみると、資金なし研究の7本中6本でポジティブな結果が出てるんですよね。 つまり、これは資金源の有無ではなく、単純にデザインと検出力の問題で食い違いが出てる感じなんじゃないかと。

 

ということで、これらの問題を見るにつけ、この研究については「統計的有意性(p値)」よりも 「臨床的有意性(実際に変わったか)」を重視したほうがいいんじゃないかなーと、個人的に思った次第です。要するに、有意性がギリ怪しかったとしても、実際に一貫して改善が見られているんだから、“確実ではない”よりも、“効果がある可能性が高い”と書くべきなんじゃないか、って話であります。私だったら、このデータを見たら「コラーゲンを使うのはアリっぽいなー」と判断しますねぇ(23本中22本の研究で良い結果が出てるんで)。

まあ、これについては、私が研究チームに反論してるってことじゃなくて、あくまでも目的の違いですんで、そこはご注意ください。疫学者は「間違って効くと言わないこと」が目的なのに対して、私のような一般人は「現実に効く方法を見つけること」が目的になりますんで。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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