15%痩せる薬?GLP-1のリアルな効果と限界についての話
あいかわらずGLP-1受容体作動薬が流行ってますな。こいつは最新の肥満治療薬のことで、商品名でいうと「ウゴービ」や「オゼンピック」などが有名ですね。
この薬を使った人たちからの評判は良くて、近年も「食欲が消える」「15〜20%痩せた」なんて口コミをよく見かけるわけです。一部には『世界を変える薬』とまで言う人もいるほどでして、実際に臨床試験でも大きな減量効果がバンバン出てたりします(平均 −14.9%ぐらい体重が減る)。この薬にダイエット効果があるのは間違いないところでしょう。
が、ここでまだよくわかっていないのは、
- GLP-1薬によって筋肉にダメージはないの?
- GLP-1薬は一生続けないとリバウンドしちゃうの?
- GLP-1薬は“ちょっと太った人”でも使っていいの?
というところでしょう。ってことで今回は、このGLP-1薬の正味なところをチェックしてみましょう。
GLP-1薬がなぜここまで効くのか?
まず前提としてあらためて強調しておきたいのが、GLP-1薬は本当に効くってことです。
臨床試験(R)では、食事制限も運動もせずに使っただけで、体重の15%近くが落ちたという報告もありまして、そりゃあ人気も出るってもんです。 これは、GLP-1薬が脳の食欲中枢に作用して「お腹空いた…」という信号を減らしつつ、胃の排出も遅くして「もう食べなくていいよ〜」という満腹感を持続させる働きがあるからです。
ザックリ言うと、
- 食欲激減
- 胃腸の動きを遅らせて満腹感アップ
- 脳と自律神経に効いて「食べたい」をリセット
- インスリン感受性アップ、脂肪肝改善などのメリットもある
って感じで、体を“太らないモード”に切り替えてくれるわけですね。一方で、体内で自然に分泌されるGLP-1は、ご飯を食べた後ちょっと増えるだけなので、どうしても薬の力にはかなわないんですよね。うーん、凄い。
が、リバウンドと筋肉の減少問題はある
ただし、この薬には困ったところもありまして、それがリバウンド問題であります。これまでの研究をざっくりまとめると、
- 薬の服用をやめると、平均で25〜90%の体重がリバウンドする。
みたいな傾向が明らかにされてたりするんですよ(R,R)。つまり「飲んでる間だけはほぼ間違いなく食欲が減るが、やめたらすぐ元に戻っちゃうかも」って感じですね(だいぶ個人差は大きいですけど)。
その理由はシンプルで、GLP-1薬をやめると元の食欲が戻っちゃうからです。つまり、GLP-1薬でダイエット効果を得るためには、一生使い続けるしかないってことでして、そうなるとどうしてもコストの問題は出てきちゃいますわな。
でもって、ここでさらに懸念されているのが、GLP-1薬によって引き起こされる、
- 筋肉量の減少
- タンパク質・栄養素の不足
というリスクであります。といってもGLP-1薬そのものに筋肉を減らす働きがあるって話ではなく、この薬を使っている人はとにかく食べたくなくなるので、結果としてタンパク質もビタミンもミネラルも摂れなくなり、これが筋量の減少や代謝低下、免疫の乱れなどに直結するってことです。
つまり、GLP-1薬を使うと、「体重は落ちたけどやつれた」ってことにもなりかねないので注意っすね。実際、薬使用者の食事ログを見るとタンパク質と栄養素が大幅に不足しがちなので、これは意識して栄養レベルを調整するしかないでしょうな。
また、これはあらゆる薬に言えることですけども、GLP-1薬にも副作用の報告はありまして、
- 胃腸トラブル(吐き気、食欲不振)
- 胆のうトラブル
- 甲状腺・膵がんのリスク → 現状、ヒトでは有意ではないが警戒は継続
みたいな報告があるので注意したいところです。過度な心配は不要ですけども、劇的な効果の裏には、それなりのリスクもあるんだよーってことで。
GLP-1薬をどう使うべきか
と、上記の話だけ読むと怖くなりそうですけども、GLP-1薬ってのは、正しく使えば最高レベルの肥満治療になりますんで、もしGLP-1薬を使うときは、
- 週2〜3の筋トレは必須:筋量を維持するために必須
- タンパク質は1日に体重1kgあたり1.6〜2.2gを目指す:食欲が減ってもここは死守しておきたい
- 栄養補助(マルチビタミン・EAAなど)も検討:栄養の欠乏を回避するため
ってあたりは押さえておきたいところです。個人的には、GLP-1薬を飲んで食欲が減っている間に、そのチャンスを使って、正しい運動と栄養のルーチンを身体に染み込ませるために使うのがいいんじゃないかなーって感じですね。
ちなみに近年では、美容クリニックなどで、「ちょっと痩せたい」とか「体型を維持したい」ぐらいの人にもGLP-1薬が使われるケースも増えてますな。この薬は強力なので、体重が数キロ多い人にも食欲の低下が起きるのは間違いないんですけども、個人的には、そこまで肥満体でもない人が使うと、上記で述べたリスクやデメリットが前景化しやすくなるんじゃないかと思っております。簡単におさらいすると、
- 筋肉の減少:食欲が落ち、タンパク不足に陥りやすい
- リバウンド率が高い:中止すると体重の25〜90%が戻る
- コスト:高額で保険適用外のことが多い
- 副作用 吐き気、消化不良、胆のう障害など
- 根本的な生活改善にならない 薬やめたら元通りになりやすいんで
みたいな感じですね。ここらへんのリスクを冒してまで使う意味があるのかなーってのが正直なところなので、「スリムな体型を維持したい!」ぐらいの気持ちで用いないほうが良いのではないかと。
多くの国のガイドラインだと、BMI 30以上またはBMI 27以上 + 健康リスク(糖尿病、脂質異常、血圧など)で初めて「適応」とされるんで、それ以外の方が手を出すのはいかがなもんかって感じです。ちょい太めの人も、だいたいはまずは生活改善だけで高い成果を得られますからねぇ。


