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今週の小ネタ:夢を問題の解決に使うには?「気づいたら頭が真っ白だ!」はヤバいのか?性的な妄想と性格の意外な関係

 


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

 

夢を問題の解決に使うにはどうすべきか?

「寝てる間に問題が解けた!」なんて話をたまに耳にしますな。歴史を振り返ってみても、夢からアイデアが生まれた例はそこそこありまして、周期表の構造とかポール・マッカートニーの「Yesterday」とかが有名でしょう。

 

そこで新たに出た研究(R)では、「夢をコントロールして問題解決に使えるのか?」って問題を掘り下げてくれてて面白かったです。これはノースウェスタン大学のカレン・コンコリーらによるもので、「夢の内容を操作したら、創造的な問題解決はブーストできるのか?」ってところを調べております。実験の流れをざっくりまとめると、

 

  1. 月に1回以上「明晰夢(夢の中で夢と気づける状態)」を見る男女20人を集める

  2. まず難しいパズルを解かせて、「どうしても解けない問題」を4つ残す

  3. 各パズルには、それぞれ特定の音(8〜12秒)をひもづけて記憶させる

  4. その後、睡眠中に脳波などを測定しながら観察

  5. REM睡眠中に、その音を再生して夢の内容を誘導

  6. 翌朝、もう一度パズルに挑戦させる

 

みたいになります。要するに、「解けなかった問題を、夢の中で再び思い出させてみたらどうなるか?」をチェックしたわけですね。

 

で、その結果がなかなか面白いもんでして、

 

  • 参加者の約75%が、夢の中でパズルに関連する内容を体験した

  • 夢に出てきた問題の正解率は42%だった

  • 夢に出てこなかった問題の正解率は17%だった

 

ということで、夢でパズルにチャレンジした人たちは、そうでない人と比べて倍以上の差がついたんだそうな。つまり、夢に出てきた問題ほど翌朝に解ける確率が高くなるわけですな。

 

なんでそんなことが起きるのかと申しますと、この研究から考えられるメカニズムはだいたい2つでしょう。

 

  1. 脳の“制約が外れる”夢の中では、現実の論理や常識がゆるむため、普段は思いつかない組み合わせが起きやすい。

  2. 記憶の再構築が進む:REM睡眠中は、記憶の整理・再構成が活発になる時間帯なので、今回のように「特定の問題を音で再活性化」すると問題に関する記憶が再び呼び起こされ、それが別の記憶と結びつく可能性が高まる。

 

起きている間に考えたことが睡眠中にも別の形で処理され、その結果が「ひらめき」として戻ってくるわけですね。まぁこの実験は明晰夢を見られる人だけが対象なので、一般化できるかどうかは不明なんですけども、とりあえず試してみてもよさそうなポイントはいくつかあるんじゃないでしょうか。具体的には、寝る前に解けていない問題を軽く見直したり、寝る前に関連情報をざっと眺めておいたりみたいな感じで、脳に「これは重要だぞ!」と事前にたたき込んでおくといいんじゃないかと。私も原稿に詰まった翌朝にスルッと書けることがよくあるんですが、あれもたぶん似たような現象なんでしょうな。

 

 

 

「気づいたら頭が真っ白だ!」はヤバいのか?

「気づいたら頭が真っ白だ!」みたいな状態は誰にでもあるはず。「ちゃんと集中しなきゃ!」と思っていたはずなのに、気がついたら“無”になっていた、みたいなことですね。

 

で、これは単なる気のゆるみだと思われがちなんですけど、新しい研究(R)は「人間の意識はずっと続いているのか?」ってところを掘ってておもしろかったです。これはソルボンヌ大学などのチームによる研究で、このテーマはめっちゃシンプルで「人は起きている限り、常に何かを意識しているのか?」というところを調べたんですな。

 

なんでこんなことを調べたのかと言いますと、心理学の父とも言われるウィリアム・ジェームズは、かつて「意識は絶えず流れるストリームである」と考えてたんですよ。つまり、

 

  • 外界の情報
  • 自分の思考
  • どうでもいい雑念

 

といったものが、人間の意識のなかでは途切れることなく流れ続けている、って考え方でして、なんとなく「そんなもんかなー」と思えるような説じゃないでしょうか。

 

が、今回の研究では、62名の参加者にシンプルな注意課題をやるように指示。その際にみんなの脳波を40〜70秒ごとに計測しつつ、「直前の心の状態」を報告してもらったんだそうな。それで何がわかったのかと言いますと、

 

  • 起きていても、“完全に何もない状態”は普通に起きる!

 

って感じだったんだそうな。これは、雑念すら浮かんでいないただ意識の“空白”だけがある状態でして、

 

  • 反応時間が遅くなる
  • ミスが増える
  • 脳の結合パターンが変化する
  • 一部で“睡眠っぽい活動”が出る

 

みたいな感覚になるんだそうな。つまり、「ぼーっとしてた気がする」ではなく、脳の状態そのものが変わっているわけですな。研究者いわく、

 

意識の空白は、睡眠に近いが、全体としては覚醒している状態。

 

とのこと。「脳の一部がオフラインになってる」ようなイメージですかね。

 

ちなみに、そういうと「意識の空白」悪いのか?って問題が出てきますけども、たしかにこの状態に入った脳は反応が遅くなるので、作業中に頻発すると困るのは事実でしょう。ただし、近年の研究では、思考がぼんやりした状態ってのは、創造性や問題解決に役立つケースが多いと報告されてますからねぇ。なので、意識の空白についても、同じように「脳をリセットしている状態」として機能している可能性はあるんじゃないかと。

 

なので、ここで大事なのは意識の空白を「失敗」と捉えないことでしょうね。「ちゃんと考えなきゃ!」と焦るほど逆に思考は止まっちゃうんで、これについては「今は脳が再起動中だな」ぐらいに構えておくほうが、問題解決には役立つんじゃないでしょうか。

 

 

 

性的な妄想と性格の意外な関係

人間であれば誰でも性的な妄想にふける瞬間はあるもの。「こんなことを考えてるのは自分だけでは?」と思っちゃうケースもあるでしょうが、新しい研究(R)では「性的な妄想は、性格やメンタル状態と深く結びついているぞ!」って話になってて面白かったです。

 

これはミシガン州立大学のチームがアメリカの成人5,000人以上を対象にしたもので、みんなの「性的な妄想の頻度」と「性格特性(ビッグファイブ)」の関係を調べたんだそうな。で、この研究でわかったポイントをまとめておくと、

 

  • 不安になりやすい人ほど性的な妄想をしやすい:全体として神経症傾向が高い人ほど、性的にいろいろ妄想することが多かったそうな。神経症傾向ってのは、不安になりやすくストレスを感じやすい性格でして、ネガティブな人ってのは嫌な感情から逃れるために性的な妄想を使うことが多いんだそうな。
  • まじめで優しい人ほど妄想は少ない:一方で、誠実性(コツコツ型)や協調性(思いやりが強い)が高い人ほど、性的ファンタジーの頻度は少ないって結果も出ております。その理由としては、協調性が高い人は人間関係が安定しやすいので生活の満足度が高く、そのため「わざわざ妄想で補う必要がない」のからだそうな。また、誠実性が高い人は責任感が強いため、ファンタジー自体にブレーキがかかりやすい傾向もあるとのこと。
  • 「開放性」は関係なかった:新しいもの好きで好奇心が強い「開放性」が高めの人は、性的ファンタジーの頻度と明確な関連がなかったそうな。「オープンな人ほど妄想も多そう」と思いがちですが、実際はそう単純でもないみたいっすね。

 

みたいになります。やはり性格と性的な妄想の種類には関係があるみたいですな。

 

で、ここで大事なのが、「で、性的な妄想はいいの?悪いの?」って問題ですけども、結論から言うと妄想そのものは問題じゃないんでご安心ください。研究チームは、「性的な妄想は、むしろストレス発散や感情の調整、想像力のトレーニングといった役割を果たすこともある」と指摘しておられますんで。それ自体が悪いってことではないわけですな。

 

ただし、妄想に頼らないと気分が安定しないとか、それで日常生活に支障が出ている場合は、ストレス状態が強すぎる可能性が高いんで注意っすね。「最近やたら妄想が増えたな」と思ったら、「ストレスが溜まっていないか?」とか「睡眠は足りているか?」をチェックするといいかもですね。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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