オープンオフィスで“いじめ”が増える理由:問題はレイアウトにありました
「オープンオフィスってどうなの?」ってのは昔からよく議論されてきたテーマ。オープンオフィスってのは壁や仕切りを極力なくして、社員同士が同じ空間で働くような職場のことで、「コミュニケーションが活性化する」「チームワークが向上する」みたいに言われてきたんですな。実際、GoogleやFacebookといった企業が採用していることもあって、「これからの働き方のスタンダード」みたいな扱いをされたこともあったりとか。
しかし、ここ数年の研究を見ていると、オープンオフィスの立場はわりと良くないものがありまして、むしろ、
- 病欠が増える
- ウェルビーイング(幸福度)が下がる
- 対面コミュニケーションが減る
みたいに残念なデータが積み上がってきてるんですね。日本でもオープンオフィスを採用してる会社は多いんで、ちょっと心配になっちゃう話ですな。
でもって、新しい研究(R)では、さらに「オープンオフィスは“いじめ”が起きやすいぞ!」って話になってまして、あらためて恐ろしい話になっておりました。この研究は、スウェーデンの労働者3,300人以上を対象にした大規模な調査で、「オフィスの種類といじめ経験の関係」をチェックしたもの。そのデザインがどんなもんだったかと言いますと、
- 参加者は全員、日常的にオフィスワークを行う人たち
- 自分の働くオフィス環境(個室・小規模共有・オープンなど)を報告してもらう
- いじめ経験の有無、仕事満足度、離職意向なども回答してもらう
- 年齢、性別、性格(社交性・神経質傾向など)も統計的に調整する
みたいになります。この調査をすることで、オープンオフィスが“いじめ”に与える影響だけを、できるだけ絞り込もうとしたわけですな。
で、その結果は、このようになりました。
- 全体の約12.8%(約8人に1人)が職場でいじめを経験していた
- オープンオフィス勤務者は、明らかにいじめの報告率が高かった
- 個室・少人数オフィスの人は、いじめの報告率が最も低かった
ということで、オープンオフィスで働く人ほど“いじめ”を体験する傾向があったらしい。興味深いことに、この傾向は年齢や性格をそろえても差が消えなかったそうで、「オープンオフィスそのものが“いじめ”の発生を引き起こしている可能性が高い」と考えられるわけです。
が、そうはいっても、すべてのオープンオフィスが悪いって話ではなく、この研究では、オープンオフィスを2つに分けております。
- 伝統的オープンオフィス(いわゆる大部屋):仕切りがなく、個室もなく、常に他人の視線にさらされるようなオフィス。
- アクティビティベース型オフィス:作業内容に応じて場所を変えられたり、静かなエリアや会議エリアなどが分かれているオフィス。
その上で、オープンオフィスと“いじめ”の関係をチェックしてみたところ、いじめリスクが高かったのは「1だけ」で、2では“いじめ”リスクが増加しなかったそうな。つまり、「オープンオフィスだからダメ」ってことではなく、適切な設計が大事ってことみたいなんですよ。
では、なぜ大部屋オフィスはいじめを生みやすいのか?ってのが気になりますが、研究チームは「小さなストレスの蓄積が問題なのでは?」と主張しておられます。たとえば、オープンオフィスだと、「キーボードをやたら強く叩く人」「独り言が多い同僚」「ずっと貧乏ゆすりしてる人」みたいな「どうでもいいけど気になる」行動がいやでも目につくじゃないですか。個室ならスルーできますが、オープンだと逃げ場がないんですよね。その結果、
- 小さなイライラが積み重なる→
- 相手の欠点に注意が向き続ける→
- ネガティブな認知が強化される→
- 衝突やいじめに発展!
みたいな流れが起きやすいわけですね。これに加えて、オープンオフィスは「常に見られている感覚」もあるので、心理的な余裕も削られやすいのが困ったところ。このへんは過去のストレス研究とも一致する話ですな。
となると、「じゃあ個室オフィスに戻せば解決では?」って気にもなるわけですけども、そう単純な話でもなかったりします。なぜなら、オープンオフィスには、
- 情報共有の速さ
- 偶発的なアイデアの創出
みたいなメリットも確認されているからであります。そこで今回の研究を参考にしてみると、「マシなオフィス設計」は以下のようになったりします。
- 逃げ場を作る:静かなスペースを用意し、一人になれる場所を確保する。「距離を取れること」がストレス軽減のカギになるので。
- 用途ごとに空間を分ける:集中作業ゾーンや会話OKゾーンみたいに、いくつか空間をつくるのも吉。これでノイズ問題をかなり減らすことができる。
- ルールを明確にする:音・会話・マナーのガイドラインを作っておき、これを守らない人にはすぐ注意ができるようにしておく。放置すると確実に悪化するので。
というわけで、今回のポイントをまとめると、「オープンオフィスは“いじめ”リスクと関連があるが、柔軟な設計ならリスク増加なし」って感じです。個人的にもいろんなオフィスを見てきましたが、「うまくいってるオープンオフィス」ってのは、例外なく逃げ場がありますんで、どこかに一人になれるスペースを確保しておきたいところです。逆に、「とりあえず壁をなくしました」みたいな雑な設計は、だいたい人間関係がギスギスしやすくなりますんで。
もし皆さんがいまオープンオフィスで働いていて、「人間関係がギクシャクしているなー」とか感じているなら、それは社員の問題よりも環境のせいかも?と考えてみるのはよいことでしょう。この手の問題は個人の努力でどうにかできるものでもないので、環境をいじったほうが100倍ラクに解決するかもであります。



