商売で商品のメリットだけ打ち出すのは本当に良いことなのか?問題
なんらかの商品を売りたいときはセールスポイントを強調するのが基本。できるだけ商品の良いところを述べまくり、できるだけ悪いところは隠すべきだと考えるのが一般的な考え方でしょう。
が、一方で現代では”透明性”が重んじられる時代なので、「逆に短所もガンガン公開した方がいいのでは?」みたいな考え方もあるわけです。悪いとこを隠して宣伝を続けるよりも、どうせならあけっぴろげなほうがいいんじゃないか?って考え方ですね。
といったところで、新しくハーバード・ビジネス・スクールから「商品のメリットだけ打ち出すのは本当に良いことなのか?問題」について調べた話(R)が出てておもしろかったです。
これがどんな研究かと言いますと、
- オーストラリア・コモンウェルス銀行に協力を頼んで、クレジットカードの口座を作ろうかどうか悩んでいるお客さん38万9611人を集める
- コモンウェルス銀行のホームページに、以下の2パターンの宣伝文句を掲載してもらう。
- クレジットカードのメリットだけをガンガンに強調した宣伝ページにする
- クレジットカードのダメなところを目立つように掲載した宣伝ページにする
- お客さんがクレカを使い始めたあとで、9カ月間の支出を追跡する
みたいになってます。クレジットカードの欠点を書くバージョンの宣伝は、「年会費が高い!」とか、「海外取引をすると追加の料金が発生するよ!」といった内容で、法的には「ちゃんと書いておいてくださいねー」と言われているものの、普通の会社だと小さな文字でこっそり書いておくようなものを、あえてめちゃくちゃ強調したらしい。確かに、追加料金とかをガンガンに打ち出す宣伝ってめずらしいですな。
さて、どのような結果が出たのかと言いますと、
- クレジットカードのダメなところを強調したページから加入したグループは、メリットだけをガンガンに強調したページから加入したグループよりも、毎月の平均利用額が9.9%多かった
- クレジットカードのダメなところを強調したページから加入したグループは、メリットだけをガンガンに強調したページから加入したグループよりも、解約率が20.5%ほど低く、支払いが遅れる確率も11%低かった
- なかでも28歳以上のお客さんほど違いが大きく、クレジットカードのダメなところを強調したページから加入したグループほど、月の平均利用額が高くなる傾向があった(これは、年齢を経た人ほどクレジットカードを長く使っているので、与えられた情報を使うのもうまかったのだと思われる)
だったそうな。商品を売るときは、ついついヤバいところを隠しがちなんですけど、実際には短所もはっきり打ち出すぐらいのほうが、最終的には良い影響をあたえられるのではないか、と。おもしろいですねぇ。
ただ、研究チームは「なんでこういう違いが出るかはよくわからないなー」って見解なんですが、いまのところの仮説としては、
- 欠点の情報をわかりやすくに表示することで、多くのお客さんは自分のニーズに合ったクレジットカードを選ぶことができ、そのおかげで顧客の体験が向上し、トラブルを回避できたのではないか?
みたいに考えられております。あえてデメリットをさらけだすことで、客のなかに「この商品はこういうものなんだ」という理解が生まれ、そのおかげでいざ問題が起きても納得するんだって話ですね。そりゃそうかもしれんですね。
研究チームいわく、
見込み客に対してすべてをさらけだすと失うものが大きいと、多くのビジネスマンは思っている。しかし、これは完全に間違っている可能性がある。
とのこと。これは商売だけでなく対人関係でも言えそうな話ですなー。