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20歳を過ぎると集中力が落ちるのはなぜか?それを食い止めるのはどうすればいいのか?みたいな話



The Distracted Mind(気が散る心)」って本を読み終わり。著者のアダム・ガザレイ博士は「歳をとると脳はどうなるか?」をずっと調べている先生で、本書でも「歳をとって集中力がなくなるのはなんで?」ってのを解説してくれてて楽しいです。

 

 

かく言う私も40を超えてからめっきり注意力がなくなりまして、「ヤバい集中力」であつかったような手法を駆使しまくってなんとかしてる状態っすね。事実、本書によりますと、

 

  • 人間の注意力は20歳近くでピークに達し、時間とともに低下することがわかっている

 

ってことでして、40代ともなればかなりマズいことになるんだそうな。嫌になっちゃいますな。

 

 

ただ、一方では希望もありまして、博士はこんなことを言っておられます。

 

興味深いことに、高齢者の脳は、20歳の若者と同じように情報へ集中することができる。

 

ということで、複数の実験だと、別に高齢者だからといって特定の情報に注意を向けられないわけではないらしい。では、なんで歳をとると集中ができないように思えるのかと言いますと、

 

高齢者が苦手なのは、無関係な情報を抑制することだ。我々の研究では、高齢者が抱く注意力の問題は、若者よりも気が散ってしまうところにあるのがわかった。

 

とのこと。要するに、人間ってのは歳をとると「関係ない情報を無視する能力」が衰えてしまうんだ、と。

 

直感に反するように思えるかもしれないが、集中と無視は表裏一体の能力ではないことがわかってきた(中略)何かに集中すれば、自動的に他のすべてを無視できるわけではない。私たちの研究では、同じものに無視するときと集中するときとでは、異なる脳内ネットワークが働くことがわかっている。

 

人間がなんらかの情報に集中する時には、脳は「注意」と「抑制」っていう独立したふたつのシステムを使いわけており、このいずれかが損なわれると、私たちは集中力を失うわけですね。つまり、歳をとった人でも脳の抑制系がうまく働くようにしてやれば、若い人と同じレベルの集中力を保てる!というわけでして、なかなか希望があってよろしいのではないでしょうか。

 

 

では、脳の抑制系をうまく働かせるにはどうすればいいかってことですけど、ここらへんは周知の話が多かったんでざっくりまとめときます。

 

  • 整理整頓!:散らかってたら抑制系は働かないんで、そりゃそうですな。ただ、ここでいう整理整頓はデジタル環境もふくまれまして、PCのモニタはグレーにせよ!一度に使うモニターは1台だ!ブラウザのタブやウィンドウも1つに限れ!起動するアプリも1つに絞れ!といったアドバイスが提示されておりました。正直、ここまで制限するのは難しいですけど、私も気を抜くとブラウザのタブを展開しまくりがちなんで、そこは気をつけたいっすね。

 

  • 運動、瞑想、自然の中で過ごす:これらの活動は、既存の神経接続を強化したり再編成したりする脳の能力を刺激することで、認知力や注意力を高める可能性がある。

 

  • FPSゲーム:「メダル・オブ・オナー」のような一人称視点シューティングを1日1時間プレイしたところ、認知機能が向上し、注意力や記憶力のテスト結果が良くなったそうな。集中力を高めるのに適したゲームは、テンポが速く、インタラクティブで、報酬やゲームの構造が複雑なものがいい……かもしれないとのこと。ちなみに博士は、「ニューロレーサー」っていう集中力改善ゲームも開発してまして、これからもうちょい検証していくんだそうな。

 

ってことで運動や自然、整理整頓は基本中の基本として、アクションゲームについてはもうちょい個人的にも取り組んでいきたいとこです。ただ個人的に乗り物酔いが激しすぎて、FPSは5分やっただけでも死ぬのですが……。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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