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カリフォルニア大学の専門家「現代って独身のほうが実は幸福に暮らしてない?」



所用でベラ・デパウロ先生の本(R)をいろいろ読んでおりました。先生はカリフォルニア大学サンタバーバラ校の社会科学者で、20年にわたって独身について研究してきた有名な先生です。世の中では「独身は孤独!」「配偶者を探すべき!」といった風潮もありますが、それって本当なの?って問題をずっと調べてるわけですね。

 

 

で、先生の結論をひとことで申し上げますと、

 

  • 現代では独身のほうが幸福じゃない?

 

みたいになります。もちろん、すべての独身が幸せだとは言わないものの、少なくとも「独身=孤独でさびしい」みたいな図式は、現代ではまったく当てはまらないのではないかってのが、先生の主な主張です。日本でも生涯未婚率は年ごとに増えていて、2020年の時点で男性28.3%、女性17.8%だと言いますから、これはなかなか貴重な知見じゃないでしょうか。

 

ということで、ここでは、先生のリサーチのポイントを、ざっくりまとめてみます。

 

 

 

ポイント1 現代では独身のほうが人づきあいが豊か

  • 先進国の多くでは、昔ながらの地域社会がうまく機能せず、孤独感が広まっている。1974年から続いている全国調査によると、現代のアメリカ人は最も隣人とのつながりが弱く、その傾向は郊外エリアで最も低くなっている。

 

  • ところが研究では、独身者ほど、現代における「つながりの低下」に強いことも明らかになっている。例えば、独身者は既婚者よりも、友人や隣人を励まし、助け、交際する傾向が強い。また、兄弟や両親を訪問し、支援し、助言し、連絡を取り合う回数も多い。

 

  • また、一人暮らしの人ほど、地域コミュニティの中心的な存在であることが多い。独身者ほど市民団体や公共行事に多く参加し、美術や音楽の教室に多く通い、夕食に出かける回数も多い。独身者は、一人暮らしか同棲かにかかわらず、ボランティア団体、教育団体、病院、芸術団体などの活動に、既婚者より参加することが多い(R)。対照的に、同棲や結婚をしたカップルは、たとえ子供がいないとしても、より狭い範囲でしか交友しない傾向がある(R)。

 

  • また、現代では、独身者の多くが、伝統的なコミュニティ(家族や隣人関係など)を改革し、より新たなライフスタイルを広げつつある。独身者は、伝統的な家族を大事にするだけではなく、友人、元パートナー、恩師なども含んだ、より包括的な人間関係をファミリーのように扱う傾向が見られる。

    他方で、既婚者は配偶者や子供を生活の中心に置くことが多い。これが不幸をもたらすわけではないが、どうしても人間関係の多様性の低下につながりやすい。

 

 

ポイント2 現代では独身のほうが心も体も健康

  • そのため、近年では、独身者のほうが精神的に健康になるケースも多い。これは、独身のほうが多様な人間関係を持っていることが多いからで、そのおかげで自分の人生に満足しやすいのが原因だと思われる。これとは対照的に、同棲や結婚をしたカップルは人間関係がせまいことが多く、精神的な健康を損ないやすい。

 

  • さらには、独身でいる人の方が、結婚する人よりも自分の意見に自信を持ち、個人的な成長と発達を遂げるという研究結果もある。このような現象が起きる理由は謎だが、独身者ほど孤独を楽しむ機会が増えるためかもしれない。

 

  • 一部には、独身者は孤独なため、健康を壊しやすいと言われている。しかし、一人暮らしの人たちを調査したところ、ほとんどの人は健康体であり、独身者ほど早期死亡率が高いという傾向は見られなかった。また、結婚によって独身者が健康になるという傾向も確認できなかった。

 

 

ポイント3 新たなコミュニティスタイルの模索が、独身を幸福にしている

  • 新たな人間関係を模索するために、現代の独身者は、プライバシーと独立性を保ちながら社会的交流もできる環境を作ろうとしている。例えば、友人や他の家族と同居する人もいるし、特定のパートナーと恋愛関係を築きながらも、相手とは別の場所で暮らすという 別居のライフスタイルを選ぶ人もいる。

    また、友人や家族がすでに住んでいる建物や地域に移り住んだり、親しい友人と二世帯住宅を購入したり、中庭や庭などの共有スペースがある物件に住んだりと、独立と社交のニーズを同時に満たそうと模索するケースが多い。

 

  • また、近年はシングルマザーのライフスタイルにも革新が起きており、例えばCoAbodeというサービスを使えば、家庭と生活を共にできる他のシングルマザーを見つけることができる。さらに、Family by DesignModamilyといったサイトでは、恋愛や結婚とは無関係に、子育てのパートナーを探すことができる。

 

 

というわけで、「もはや独身こそが先端のライフスタイル! 新たなコミュニティ意識を持った集団なのだ!」ってのがベラ・デパウロ先生の主な主張だったりします。もちろん、世の中には、こんな充実した独身ばかりがいるわけじゃないでしょうけど、自ら積極的に「私は独身で行くのだ!」と選んだライフスタイルであれば、実は既婚者より心身とも健康に暮らせる可能性は高いと言えましょう。その意味では、うまく使えば良い時代なんでしょうな。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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