「1セットで8回できる重さで筋トレしよう!」ってアドバイスはどこまで正しいのか問題
筋トレといえば、だいたい「1RMの80~90パーセントの重量を持ち上げよう!」ってアドバイスが定番でしょう。「1RM」ってのは1回だけ持ち上げられる最大重量のことで、具体的には「タンパ大学式筋肉トレーニング」を参照してくださいませ。
まことに定番の手法ですが、実際はこのやり方は、伝統的な経験則で導き出されたもので、「まぁこれがベストと決まったわけじゃないけど、そんな間違いでもないでしょう」ぐらいからスタートして、「とりあえず実験でも使ってみるか」って感じで採用されるようになったんですよ。ただし、これまでの試験は若い男性ばかりを対象にしていたんで、「1RMの80~90パーセント」って方法が唯一の正解かはよくわからんのですよね。
そこで、新しい研究(R)では、中高年の男女を対象に「重いウェイト」と「軽いウェイト」という2パターンの筋トレの効果を調べる実験をしてくれてます。調査にあたっては、まずは全員の筋力、筋量、持久力を評価した後、
- 半数のグループには、1セットで8~12回しか持ち上げられないレベルの筋トレを指示。
- 残り半数のグループには、1セットで20回から24回持ち上げることができる、はるかに軽いウェイトを使うように指示。
って感じでグループを作り、どちらのグループも「自発的疲労」(もうウェイトの上げ下げがもうできないと感じる状態)までトレーニングを続けてもらったとのこと。そのうえで、前者は12回、後者は24回以上持ち上げられるようになったら重量を増やしたらしい。
トレーニングの種類は、レッグプレス、レッグエクステンション、レッグカール、チェストプレス、ショルダープレス、シーテッドロー、アームカール、上腕三頭筋プッシュダウンの8種目。いずれも筋トレの基本ですね。
以上のエクササイズを週に2回ずつ10週間にわたって続け、そこから全員の筋肉を再チェックしたら、結果はこんな感じになりました。
- みんな筋肉は同じくらい強く、大きくなり、持久力がアップした。
- 2つのグループの間に「意味のある違いはなかった」が、あえて言えば高重量グループの脚力はやや強く、軽重量グループの全身筋持久力はやや強かった。
ってことで、やはりウェイトが軽かろうが重かろうが結果は同じだったらしい。研究チームいわく、
あくまで小規模な試験だが、この研究からわかるのは、筋トレにはいくつもの選択肢があるということだ。必要であれば、伝統的なアプローチで重い重量を挙げてもいいし、軽い重量を使ってもいい。関節に問題があるような人は、軽い重量を使ってもまったく問題はないだろう。
とのこと。要は、伝統的なトレーニングにこだわらずに好きな方法を選ぼうぜ!ってことでして、肩を痛めたせいで高重量が扱えなくなってる私には、非常にありがたい話でした。この研究では、軽いダンベルやレジスタンスバンドぐらい低負荷なウェイトを使った人もいまして、それぐらいの負荷でもなんの問題もないらしい。こちらも良いニュースですね。
似たような結論は、ちょっと前に出た大規模なレビュー(R)でも出ていて、ここでは複数の筋トレを比較した192の過去の研究を分析し、「ベストな筋トレ方法はなんだろう?」ってのを調べたんですよ。しかし、その結果がどうだったかと言いますと、
- 唯一のベストな筋トレ法などない! どのような種類の、どのような量のトレーニングでも、筋力と筋肉量を増やせる!
- 重いウェイトを持ち上げようが、軽いウェイトを持ち上げようが、週に数回であろうが1回だけであろうが、エクササイズのセットを1回か2回か3回繰り返そうが、男性だろうが女性だろうが、18歳だろうが80歳だろうが、どんな筋トレでも問題はない!
って感じです。研究チームいわく、
この調査から得られる結論は、筋トレの量や頻度については、あなたにとって魅力的なものであれば何でも良いという点だ。
とのこと。こちらもまた「いろいろ考えてもしょうがないから、とにかく筋トレをしなさい!」って結論でして、「最適なセット数は……」とか「ベストな重量は……」とか悩むのがアホらしくなってきますね。
ということで、これらの調査から教訓を引き出すならば、
- 筋トレをしたことがない人は、週に一度でもいいからとりあえずやる。その際は、いくつかの基本的な筋トレメニューを試して、筋力と持久力の基礎ををつけるのが第一。
- もちろん、 自重トレーニングでも筋力と筋肉量は増えるので、自分の部屋でやってもなんの問題もない。
- 軽い重量を使っているときは、約25回以上のエクササイズを簡単にこなせるようになったら負荷を上げていくとよさげ。
みたいになりましょう。こうしてみると、筋トレって、実はあんま考えるべきポイントが少ないっすね。