【質問】ウゴービが魔法のダイエット薬だって本当ですか?
こんなご質問をいただきました。
ウゴービってどうでしょうか?肥満症の新薬みたいで、食欲を減らしてくれるらしいんですが、副作用とかも怖そうです。
ウゴービってのは、2024年2月に発売される肥満の治療薬で、保険適用なところがポイント。最新の減量薬でして、脳の満腹中枢に作用して食欲を抑えてくれるので、結果として体重が減るよーってお薬ですね。イーロン・マスクも使っているそうで、革命的な肥満薬などとも言われてたりします。
新薬として認められた以上は、もちろんちゃんと効果を確かめる試験がいくつも行われてまして、まず最も大きなポイントとしては、
- ウゴービは体内でGLP-1ってホルモンと同じような働きをする。GLP-1は食後に腸内で作られるホルモンで、脳に満腹を感じさせ、食べるのをやめさせるように働く。似たような薬は他にもあるんだけど、ウゴービは脳のバリアを突破することができるので、他の薬よりも満腹感をアップさせやすい。
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68週間わたって行われた2021年の試験(R)だと、ウゴービとプラセボの効果を比べたところ、ウゴービを使った人の83%が少なくとも5%体重が減ったのに対しプラセボは31%だった。さらに、ウェゴビー服用者の48%は、体重が15%減っていた。これまの減量薬は、体重の3~8%しか減少させることができなかったので、やっぱり効果は大きいなーって印象。もっとも、試験の後で服用を中止した患者は、1年以内に体重がほとんど戻ってしまったので注意は必要ですが。
ってあたりは押さえておきたいところです。過去にも類似の薬はあったものの、ウゴービの効果が高そうなのは間違いないっすね。ただし、上述のとおりウゴービは長期的に使うことを前提にしているんで、支払いに余裕がない方にはつらいかもしれません。
で、続いて気になるのが「ウゴービは安全なのか?」ってポイントですが、こちらもざっくりまとめると、
- 医師によって適切に処方されれば、一般的に安全だと考えることができる(R)。ただし、ウゴービを使うには、
①BMIが35以上の肥満に悩んでいる人②BMIが27以上で、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のいずれかを健康問題を2つ以上抱えている人。
って基準に当てはまってないと処方されないので注意。BMIが35以上ってのはかなりの肥満だし、健康問題の要件もあるんで、現実的には手軽に使えるようなもんじゃないっすね。
- 一般に安全とはいえ、他の薬と同じように副作用の可能性もありまして、ウゴービで嘔吐、下痢、吐き気などの消化器関連の問題が起きちゃう人はわりと多め。ただし、これらの問題は約20週間で消失する。また、心血管イベントや腎障害のリスク増加は認められていない。また、急性または慢性膵炎、特定の癌の家族歴、腎機能障害などを持つ人は、ウゴービを使うのは危険。いずれにしても、医師の厳重な監視はマストっすね。
といった感じになります。ちゃんとお医者さんの指導を守って使う限りは、良いお薬じゃないでしょうか。
まー、くり返しになりますが、たんに太っているだけの「肥満」では投与の対象にならないし、週に1回の使用で良いとはいえ自分でお腹に注射しなきゃいけないしで、このブログを読んでいるほとんどの方には関係がないでしょうね。肥満症にお悩みの方には重要な管理ツールになるでしょうが、重度の肥満ってのはメンタル面でのサポートのほうが必要だったりするケースもありますんで、そこはくれぐれも念頭に置いておきたいところです。
肥満を抱えている人の中には、ストレスに対処するためにドカ食いを続けちゃうようなケースが多いんで、脳のホルモンにアタックしただけじゃどうにもならないこともあるんですよね。なので、減量治療は、心理的サポートや身体活動のサポートなどをしつつ、ウゴービと組みあわせる作業が必須になるでしょう根。事実、肥満手術を受けた人のほぼ5人に1人が、後で体重のリバウンドや人生の質の変化によってうつ病を経験するって研究(R)もあったりしますし。
そもそも近年は、肥満ってのは単に「食べ過ぎで太っちゃったー」みたいなシンプルな現象じゃなくて、より複雑で生涯にわたって続く慢性的な病気なんだよーって考え方がメジャーになりつつありますからね。なんせ肥満の要因は多過ぎでして、健康格差、貧困、メンタルヘルスの問題、トラウマの影響などのあらゆる問題が体重の増加につながったりしますし、 それらにまとめて対処できるような具体的な治療ステップもまだ見つかっていないので、ひとつの新薬でどうこうできるとは思わないほうが良いでしょうなーってことで。