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結局、ランニングシューズは「履いて気持ちいいやつ」が最強かもしれない説


  

ランニングをする人に共通する願いと言えば、「ケガをしたくない!」でしょう。もちろん中にはタイム短縮だけしか視界に入らないって人もいるんでしょうが、私のような一般ランナーが気になるのは、結局のところ「できるだけケガしたくないなぁ」だったりします。そもそもケガしたら走れないんで。

 

というわけで、「結局どのランニングシューズが一番ケガを防げるのか?」というテーマについてはよく考えるわけですが、ルクセンブルク健康研究所のローラン・マリスー博士が発表した研究(R)が良い感じなので、ここでどんな結論が出ているのかをチェックしてみましょう。

 

で、まず前提として、一般的には「良いランニングシューズほどケガ予防に効く」みたいなイメージがありますが、実はこいつはそう単純な話でもなかったりします。というのも、クッション性やかかとの高さ、プロネーションコントロール(足の傾きの補正)などの機能を備えた「高いランニングシューズ」が登場したのは1970〜80年代ぐらいなんですけど、それからランナーのケガは消えてないどころか、

 

  • 昔のランナーより今のランナーの方がケガしやすい
  • なのでシューズがケガを招いてる説すら出てきている

 

ってのが現状なんですよ。シューズの高機能化とともに、実はランナーのケガは増えてるようでして、なんとも不思議なもんです。

 

この問題にマリスー先生は長年にわたって取り組んでまして、彼はスポーツ用品の大手企業と組んで「いろんなシューズのケガ発生率をチェックする」って作業を地道に繰り返して来たんだそうな。その結果、いまのとこわかってきたポイントとしては、

 

  • かかとの高さは全体ではケガに影響がなかったが、経験者は低ドロップの靴ほどケガが増える傾向があった

  • プロネーション補正機能は全体的にややケガを減らすっぽく、特に足が内側に倒れやすい人に効果大

  • クッション性の効果はランナーの体重に依存するため、クッション性があれば一概よいとも言えない

 

みたいな感じになってまして、つまり「万人に効く魔法のシューズ」なんて存在せず、「人によって最適な靴は違う」としか言えない、ってのが現時点での結論なわけですね。

 

では、我々が最適なシューズを選ぶ際には、いろいろ試し履きするしかないのか?とか思っちゃいますが、ここでマリスー先生が検証したのが「コンフォート・フィルター仮説」って考え方であります。これはカルガリー大学のベンノ・ニッグ博士が提唱した考え方で、

 

  • 履いてみて一番気持ちいいと感じた靴こそ、自分に合っていて、ケガをしにくいのでは?

 

という、めっちゃシンプルなアイデアです。なんだか怪しい考え方のようですけども、人間はそれぞれ特有の動き方を持っているから、それを邪魔されると違和感が出るし負荷もかかるはずですからね。だから「快適に感じるかどうか」が、実は体からの重要なフィードバック信号になってるかも?ってのは、あながち間違いとも言えないわけです。

 

では、この仮説はどのくらい信頼できるの?ということで、マリスー博士はこんな実験をしてます。

 

  1. 800人超のランナーに、クッション性が違う2タイプのシューズをランダムに配布する

  2. 「どのくらいクッション性を感じたか(1〜9)」と「理想のクッション性(1〜9)」を記録する

  3. その「感じた数値 − 理想の数値」のズレと、ケガ発生率を比較する

 

ということで、ざっくり言えば、実際にランナーが感じたクッション性と、理想とするクッション性のギャップが小さいほどケガをしにくくなるのかをチェックすることで、「快適なシューズほどケガ予防になるのか?」を確かめたわけっすね。

 

で、その結論がどうだったかと言いますと、

 

  • 「感じたクッション性」と「理想のクッション性」が一致していたランナーほど、ケガの発生率が少なかった!

 

という感じになっております。もうちょい具体的に言いますと、

 

  • 「理想通りに近い靴(ズレが0以上)」を履いていた人は、そうでない人よりケガのリスクが67%低かった
  • 「まぁまぁ合ってる(ズレが-2〜0)」でもケガのリスクは56%減少した

 

みたいになります。なので、一番理想とのズレが大きかった人が、最もケガしやすいという傾向がハッキリ出たってことですな。

 

まぁ、だからといって「自分にとって快適なシューズが最高だ!」と言い切れるわけではなくて、この研究にもいくつかの注意点があるわけです。たとえば、

 

  • 本当に「快適さ」そのものがケガ予防に効いたのか?
  • それとも「クッション性が高い=快適と感じる人が多い」だけなのか?
  • クッション性以外(幅、フィット感、つま先の余裕など)も関係あるんじゃないか?

 

みたいな疑問は山ほど残ってますんで、まだまだ安易な判断は禁物でしょう。

 

しかし、いまのところ「全ランナーに共通する最適な靴の選び方」なんて存在せず、むしろ「身体が発するフィードバック=快適さを信じろ!」って方向性は割と正しい気もしております。現時点の知見をまとめておくと、ランニングシューズ選びにおいては、

 

  • 複数の靴を試し履きし、「履いてて一番気持ちいい」と感じたものを選ぶ
  • 「クッションが足りない」「幅がキツい」などの違和感を感じる靴は避ける
  • 見た目や口コミよりも「自分の感覚」を優先する

 

といったあたりを参考にするといいかもしれません。私も最近はALTRA (アルトラ)を履いて快適感を得ているので、しばらくはこいつで行こうかと。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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