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今週の小ネタ:コーヒーと紅茶で脳が整う?塩の取りすぎで脳が死ぬ?香りで頭が良くなる?

 


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

 

コーヒーと紅茶は認知症リスクをどこまで下げる? 

認知症やアルツハイマー病は世界的に増え続けていて、現状では症状が出てからの治療は効果があんまないのが現状であります。なので、認知症に大事なのは「予防」ってことになるわけですが、そこで「コーヒーとお茶が認知症リスクの低下に役立つぞ!」って研究(R)が役立ちそうなんで、中身をチェックしておきましょう。

 

これはハーバード公衆衛生大学院の研究で、13万人以上の男女へ2〜4年ごとに食事アンケートを行い、最長43年間も追跡した上で、

 

  • 認知症になるかどうか

  • 主観的な物忘れは多いかどうか

  • 認知テストの成績はどうか

 

ってのを調べて、コーヒーや紅茶と認知機能の関係を調べたんだそうな。すると、データはきれいなカーブを描きまして、以下の傾向が見られたらしい。

 

  • コーヒー:1日2〜3杯が最も認知症のリスクが低下した。それ以上飲んでも上乗せは少なく、害も特に確認されなかった。

  • 紅茶:1日1〜2杯でコーヒーと同じような保護効果が見られた。
  • デカフェ:統計的に有意な関連なし。

 

ということで、これを見ると、コーヒーや紅茶の健康効果は、カフェインがメインなのかもしれないと思うわけですね。実際、細かいデータを見てみると、カフェインをたくさん摂取したグループのほうが、言語記憶・注意力・実行機能で高スコアを出してまして、その差は「数か月分若い脳」に相当するぐらいだったそうな。劇的ではないものの、積み重なると大きいかもなーって感じですね。なぜこのような効果があるのかは謎ですが、カフェインは疲労物質をブロックする働きがあるので、これによって神経の炎症が減っているのかもしれませんね。

 

もちろん、観察研究なので因果は確定できないんで、あとは臨床試験待ちってところですけども、とりあえず現時点では「コーヒーを1日2〜3杯まで」ぐらいに考えておくと、じわじわと脳機能に効いてくるかもしれませんねぇ。

 

 

 

塩の摂りすぎが腸を壊し、脳を削る? 

「塩で脳がやられるかも?」という恐ろしい研究(R)が出ておりました。これは中国の西安交通大学の実験で、研究チームは、「慢性的に大量の塩分を摂取していると腸内細菌のバランスが崩れ、それが脳の炎症を引き起こすのでは?」と仮説を立て、これを動物実験で確かめたんですね。

 

対象は6か月齢のオスのマウスで、全体を以下の2グループに分け、180日間(6か月)の経過をチェックしたんだそうな。

 

  • 通常食グループ:塩分0.4%の食事をする
  • 高塩分グループ:塩分8%の食事をする

 

当然、高塩分グループは血圧(収縮期・拡張期)が上昇しまして、身体レベルでは明確に影響が出ていたわけですが、さらにここで研究チームはいろんなテストでマウスたちの脳がどう変わったかをチェックしております。その結果がどうだったかと言うと、

 

  • 高塩分グループは……
    • 不安を感じているとおぼしき行動が増えた(壁に張り付いて、動かなくなったりとか)。同時に強迫的な行動も増えた(ビー玉をひたすら土に埋めたりとか)
    • 新しい物体を区別できなくなり、記憶障害だと思われる行動も増えた。

 

って感じだったんだそうな。つまり塩分を摂りすぎたマウスたちは「不安増大+記憶力低下」が起きたわけですね。これは怖いですねぇ。

 

その後、研究チームが塩分取りすぎマウスの脳を調べたところ、海馬(記憶の中枢)の神経細胞密度が減少していたこともわかったとのこと。つまり「気のせい」ではなく、構造的ダメージが確認されたってことですな。

 

これらの結果をもとに、研究チームは「塩分が腸内環境を乱し、それによって脳の機能低下が起きた」と考えておられます。あくまでマウス実験だし、サンプル数も多くないので注意は必要ながら、ヒトでも似たような結果が出るんじゃないかなぁと個人的には思いますね。

 

なので、今日からできることはシンプルで、とりあえずナトリウムの最大供給源である加工食品を減らし、その代わりに出汁やスパイスを使って食事の満足度を高めるのがよかろうと思う次第です。塩は悪じゃないものの、「慢性的な過剰摂取」は腸を経由して脳をじわじわ削る可能性があるかなーって感じですんで。

 

 

 

香りで頭が良くなる?

「香りで頭が良くなるかも?」という面白いデータ(R)が出ておりました。こちらはノーサンブリア大学に所属するマーク・モス博士らによる実験で、この先生は20年以上もエッセンシャルオイルが認知機能に与える影響を研究してきた有名人であります。

 

まず前提として、これまでの研究では、ローズマリーやセージなど、単体のオイルが記憶力や覚醒度をわずかに高める可能性が示されてきたんですけども、この研究では「複数のオイルをブレンドしたらどうなるか?」をチェックします。アロマセラピーの現場では「ブレンド」が主流なんで、こちらの方が現実に沿った結果を確認できるのではないかという考え方ですね。

 

そこで今回の研究では、「Genius」というブレンド精油の効果を90名の健康な成人で確認してまして、まずは参加者を3つのグループに分けてます。

 

  1. Geniusブレンドグループ:パチョリ、ネロリ、グレープフルーツ、カルダモン、フランキンセンス、スパイクナード、ローズマリー、レモングラスをミックスしたアロマオイルを使う。
  2. セージ単体グループ:セージだけのアロマオイルを使う。
  3. 無香料群:何も使わない。

 

これに加えて、ちゃんと参加者も実験者もどの香りを使っているか知らない状態で、実験を行ってまして、これはなかなかの評価ポイントですね。その上で、みんなの脳機能をテストで調べたところ、

 

  • Geniusブレンドグループは、単語記憶・数字ワーキングメモリ・実行機能系タスクで、無香料グループより有意に高い成績を出した。
  • セージ単体と比べた場合でも、いくつかの項目はブレンドグループのほうが高かった。

  • 主観的にも、ブレンドグループは覚醒度が上昇し、精神的疲労が低下していた。

 

って結果が確認されたんだそうな。つまり、「アロマオイルをブレンドして使うことで相乗効果を得られるのではないか?」という仮説は、一応データ上は支持された形になりますな。

 

そのメカニズムはまだよくわからんのですが、研究者は2つの可能性を挙げておられます。

 

  • 薬理作用説:香り成分が肺から吸収され、血流に乗って脳へ届く

  • 嗅球刺激説:匂いが直接嗅球を刺激し、記憶や感情に関わる脳領域を活性化する

 

こうして考えると、どちらのメカニズムも「いかにもありそうだなぁ」って感じですが、今回のデータで決着をつけるのは無理なので、今後の研究に期待というところですね。

 

でもって、この結果をもとに、アロマオイルのブレンドを使ってみたいと思った方もいるでしょうが、正直なところデータで確認された効果量は結構「小さい」のでそこは注意してください。研究チームも「アロマは万能薬ではなく、あくまで補助的ツール」と明言してますんで。あと、アロマオイルの効果にはかなりの個人差も見られているし、ここでは単回セッションのみの結果しか得られてないので、長期使用の効果も不明ですからね。

 

なので、実践的にどう考えるべきかと言うと、睡眠や運動といった生活習慣の土台を整えた上であれば、アロマオイルを使ってみるのもありかなぁぐらいの感想になります。生活習慣が乱れているのに、アロマオイルだけ使っても、おそらくあまり効果は見込めないんじゃないでしょうか。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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