「低GI食品ほどお腹が空きにくい!」はどこまで本当か?
https://yuchrszk.blogspot.com/2015/04/gi_29.html?m=0
ちょい前に「もっとも満腹になりやすい食品」について書いたところ、こんなご質問をいただきました。
もっとも満腹になりやすい食品はどれだの記事で、少し混乱しています。記事ではじゃがいもの満腹度が高いとのお話でしたが、じゃがいもは血糖値を急激に上げるのでお腹が空きやすいのではないのでしょうか?お手すきのときにご回答いただけると嬉しいです。
とのこと。確かに「血糖値がゆっくり上がる食品なら空腹になりにくい!」ってのは、ダイエット業界じゃよく聞くアドバイス。いわゆる「GI値が低い食品を食べましょう」って話ですね。
この説が正しければ、食後の血糖値を上げまくりなジャガイモなどは典型的な悪玉になっちゃうわけですが、実際のデータはどんなもんでしょうか?
GI値と空腹感に関するデータは食い違いが大きい
この問題についてはいろいろと研究がありまして、- 子どもたちの朝食を低GI食品にしたところ、その後の摂取カロリーが下がった(1993年,1)
- 成人男性を対象に低GIと高GIな炭水化物の影響をくらべたら、低GI食品のほうが空腹感は減った(2003年,2)
- 子どもの食事を高GI食から低GI食に切り替えたところ、低GI食のほうが満足度が高くなった(2003年,3)
などなど。これだけ見ると「やはり低GIのほうがお腹は空きにくいんだ!」と思ってしまいますけども、一方では真逆の結果が出たデータも多いんですよね。たとえば、
- 成人男性を対象に低GI食と高GI食をくらべたら、高GI食のほうが食欲をおさえる効果は高かった(2014年,4)
- フライドポテト(GI値77)と茹でジャガイモ(GI値131)の影響をくらべたら、GI値が高い茹でジャガイモのほうが満足度は高かった(2008年,5)
- 健康な成人を対象にした実験では、GI値の差によって食欲への影響は見られなかった(1997年,6)
などなど。おもしろいですねぇ。
ここまでデータが食い違っちゃう原因はいろいろ考えられますが、おそらくは、
- 食品ごとの食物繊維や水分量、カロリー密度といった要素が無視されてる
- 一般的な高GI食は加工食品が多いので、自然と脳のバランスがくずれて満足度が低くなる
ってあたりが大きそう。GI値もそれなりに大事ではあるものの、1番の原因ではないって話ですね。実際、水分と食物繊維が多い茹でジャガイモのほうが、加工度の高いフライドポテトよりも満足度は大幅に高いわけですし。そもそも、高GI食がそこまで悪いなら、イモ類ばっか食べてるのに肥満とは無縁に暮らす狩猟採集民が多いことの説明がつきませんしねぇ。
まとめ
そんなわけで、どうもGI値が空腹感を左右するって説は、いまいち信じがたい感じ。個人的には、「もっとも満腹になりやすい食品はどれだ!選手権」で紹介した、おおまかに言って、食物繊維・タンパク質・水分が多いほど食品の満足度は高くなる。フルーツ、ジャガイモ、牛肉、魚といった「未加工」の食品は、もっとも満足度が高い。
といった要素のほうが満腹感には重要なのかなーと思います。糖質制限ダイエットの世界では「血糖値の急上昇こそ空腹の原因!」なんて主張も見かけますが、どうも都合のいいデータだけを見すぎなんちゃうか、と。