狩猟採集民が西洋人よりも幸福な2つの大きな理由
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「豊かさのない豊富さ(Affluence Without Abundance)」って本を読みました。著者はジェームズ・スズマンっていうケンブリッジ大学の人類学者さんで、25年ぐらいカラハリ砂漠のブッシュマンを調べてきた先生。
本書はその知見をまとめた楽しい内容になっていて、タイトルどおり「狩猟採集民にくらべて現代人は精神的に豊かじゃないんじゃないの?」って問題を取り扱っております。パレオダイエットの問題意識と似たようなところですねー。
そもそも狩猟採集民には「幸福」の概念すらない
というわけで、いろいろと面白いポイントが多い一冊なんですが、ここでは「西洋との幸福の差」ってとこで気になったところなどを。
- ブッシュマンの労働時間は平均で週に15〜20時間。ここでいう労働は、食料の調達や料理などをふくむ。残りの時間はリラックスタイムか、家族、友人、趣味のために使う。
- ブッシュマンの暮らしには、「○○をやれば○○が起こり、人生は良くなるだろう」といった西洋的な思考法がない。これは、いま身の回りにあるものだけで満たされるため、そもそも欲望が少ないから。つまり「小欲知足」が基本。これに比べて、西洋では欲望が無限にふくれあがる仕組みなので、欲と現実のギャップを埋めるために超過労働が必要になる。
- そもそも、ブッシュマンには「幸福」という言葉がない。「喜び」や「悲しみ」といった言葉はあるが、「幸せになる」ような考え方がないため、「幸福」という単語が必要にならない。
- ブッシュマンは、西洋人とは時間の感覚も違う。西洋人は、時間はまっすぐ未来に進むため将来のことは予想できないと考えるが、ブッシュマンは時間は円環しているため、変化は予想ができると考えている。そのため、ブッシュマンは西洋人よりつねに自信を持って行動することができる。
- 時間が円環的なので、ブッシュマンは、たとえば西洋人のように「自分のルーツ」にこだわったり、「歴史のなかの自分の位置」のようなものにこだわる必要もない。ゆえに、そこには歴史的な認識の違いによる争いは生まれない。
- ブッシュマンは歴史にこだわらないため、祖父の名前すら知らない者も少なくない。ブッシュマンはつねに意識が現在にフォーカスされており、天然でマインドフルネスだとも言える。
- ブッシュマンと西洋人のギャップを埋めるには、スポーツのようにマインドフルネス性が高い行動に打ち込むか、長時間のハイキングに出かけるのがいいかも。体を動かす活動でなくとも、ライティングやペインティングのように時間の感覚が消えるようなアクティビティならなんでもいいよ!
- ただ、もちろんブッシュマン社会も理想郷ではない。酒を飲んだあとのケンカで死者が出たり、浮気問題で殺し合いに発展することもあるし、人減らしのために嬰児を殺すこともある。そこらへんの人権的な意識の違いはいかんともしがたい。
ってことで、狩猟採集社会は「小欲知足」と「マインドフルネス」が根底にあるので、週に20時間の労働で幸せだし、そもそも「幸福」って概念すら必要がないんだ、と。ほとんどナチュラルボーンで仏教徒みたいになっとるわけですな(酒を飲んで殺し合いするのはアレですが)。
まー、だからといって近代の人間が、いまの環境ですぐに「小欲知足」の境地にいたれるとも思いませんので、行動経済学っぽく、あえて自分を縛っていくような仕組みが必要になるんでしょうなぁ。