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自粛中で人に会えなくても十分に人間は孤独をいやすことができるんだぞ!というニューヨーク州立大学の話


 
自粛続きで孤独感を募らせていらっしゃる方も多いかと存じます。外交的な人ほど現在の状況はツラいかもしんないっすね(私はド内向なのであんま問題を感じてないのですが)。



そんな折に、ニューヨーク州立大学から「孤独をいやしたいなら"非伝統的なつながり"を使え!」って内容のデータ(R)が出てておもしろかったです。


「非伝統的なつながり」と言われるとなんか難しそうですけど、実際の話は簡単でして、

  • 大好きな映画やアニメを見る
  • おもしろい小説にのめり込む
  • 好きなミュージシャンの曲を聴く
  • ゲームで遊びまくる

みたいな行為全般を意味してます。実際の人間とコミュニケーションをとるんじゃなくて、メディアを通じて架空のキャラたちと接するだけでも、人間の孤独感は十分にいやされるのではないか?ってのが、この論文のメインのポイントになってます。


結論から引用すると、

社会的なつながりの感覚は、人間社会において基本的な要素だ。これは食料の必要性と変わりない。社会とのつながりを絶たれた期間が長くなるほど、私たちのエネルギータンクは枯渇し始め、不安になったり、神経質になったり、落ち込んだりといったネガティブな状態になる。



しかし、ここでエネルギータンクを満たす手法の差異は重要ではない。どんな方法でも、タンクが満たされてさえいればいいのだ。

みたいな感じ。孤独感をいやすのが重要なのは間違いないものの、別に実際の人間と会わなくったってその欲求は十分に満たせるのではないか、と。なかなか心強い話ですなぁ。


というわけでチームは173人の参加者を集めまして、まずは各自の健康状態や「社会的つながり」の感覚、幸福感などをアンケートでチェック。みんなが普段の生活でどのような行動で「社会的つながり」を高め、それがどれぐらい日々の幸せにつながっているのかを調べたんだそうな。


そこで何がわかったかと言いますと、

  • みんな社会的つながりの感覚を満たすために、平均で17の異なる方法(中央値7)を使っていた
  • 大多数は伝統的な手法と非伝統的な手法の両方を使っており、非伝統的な手法は伝統的手法と同じぐらいの効果があった

だったそうです。研究チームいわく、

人々はあらゆる手段を通じてつながりを感じることができる。友人と直接会うといった伝統的な方法が、好きなミュージシャンの音楽を聴くといった非伝統的な方法よりも良い結果をもたらすとは限らない。

とのことで、ぱっと見の印象だと、映画やドラマを見るよりも現実に人と会ったほうが孤独は解消しそうなイメージがありますが、実際にはそんなこともないらしい。


ちなみに、今回の調査でリストに上がった「非伝統的な手法」のなかには、

  • ペットの世話をする
  • 家族や友人との思い出にひたる
  • うまそうな食事を準備して楽しむ

みたいなものもあったそうな。こうして考えると、非伝統的な手法ってのは「適切なセルフケアテクニックの集合体」みたいに捉えるとわかりやすいかもですな。


といっても「人と会わずに映画やアニメを見る」みたいな行動が、世間的にはなんとなくイメージがよくないのも事実ではありましょう。このようなイメージの問題については、チームは以下のようにコメントしております・

現代の社会では、他人から「恋人はいないの?」や「子どもは作らないの?」「パーティーに行かないの?」などと尋ねられることが多い。これらのメッセージは、暗黙のうちに「リアルで他人と交わらないのは人間として間違っている」といったふくみを持ってしまう。これは有害な結果をもたらす可能性があるだろう。

今回の研究で示唆するのは、こういった考え方が真実ではないということだ。

現代社会では外向性が重んじられやすいので、他人と交わらない行為はすべて異常だとみなされやすいんだって話ですね。わかるなぁ……。

そのため、多くの人々は「非伝統的なつながりの手法」には価値がないと考え、このような方法を「代替社会 」などとも呼んできた。あくまで本当の「社会的なつながり」の代替物にしかならないと考えてきたわけだ。

しかし、(先行研究をふくめて考えても)このような非伝統的なつながりに価値がないという証拠は見つからなかった。非伝統的な戦略を使っている人たちが、より孤独だったり、幸せでなかったり、社会的スキルが低かったり、満足感が低かったりといった現象は確認されていない

というわけで、自粛中はガンガン音楽を聴いたり、ネットフリックスに耽溺したり、猫と遊んだり、ゲームをしたりすればいいわけですが、ちょっとした注意点も述べられております。

このような非伝統的なつながりが実際におおいに有益であることに、人々は気づいていないだろう。非伝統的だからといって悩むことはない。これらの戦略は、あなたが積極的に使っている限りは、なんの問題もない。

要するに、「他人とのコミュニケーションが嫌いだから……」みたいな逃げの気持ちでフィクションやペットに逃げるのではなく、「俺はこの作品が好きなのだ!」や「自分で自分をケアするために料理をするのだ!」みたいな積極性があるマインドが必要なんだってことですね。そりゃそうですね。


では、最後にシメのお言葉です。

ソーシャル・ディスタンスの重要性が叫ばれる現在において、今回の知見はとても重要だ。非伝統的な戦略を活用すればソーシャル・ディスタンスを保つことができるし、自分が社会とつながっているような感覚も得られ、人生にもっと意味を見出すことができるだろう。

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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。