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「マッチングアプリで成功したいならここに気をつけよ!」みたいな報告書の話


 

マッチングアプリを使うときはここに気をつけよ!」みたいな報告書(R)が出てておもしろかったです。利用者の方にはなにがしかの参考になりましょう。

 

 

これはオンラインデートに関する400以上の先行研究や調査をレビューしたもので、eHarmony、PerfectMatch、Chemistryといった海外の大手マッチングサイトが採用しているシステムがどこまで有用なのかを、ロチェスター大学などの先生方がまとめてくれたものです。内容は64ページもありまして、この手の論文としてはかなりの大作っすね。

 

その根本的なところざっくりまとめてみると、以下のような感じになります。

 

 

  • 全体的に見てみると、インターネット上での出会いは、出会いの機会が少ない独身者にとっては良いと言える。オンラインでパートナーと出会ったと答えた人の数は右肩上がりで成長しており、このシステムを使うことで出会いが広がるのは間違いない。

 

 

  • ただし、オンライン上での出会いには、リアルと比べて不利な特性があるため、その点について注意しておいたほうがよい。

 

 

  • マッチングサイトの欠点の1つは、「プロフィール」である。現実の世界における出会いは、お互いの好き嫌いを知り、共通の話題を見つけるために、長時間をかけて相手を掘り下げていく。これは面倒なプロセスではあるが、いっぽうでは恋愛の楽しさを生み出す基盤にもなっている(簡単なRPGがつまらないのと似た考え方ですな)。

    ところがオンラインでは、互いを知り合うプロセスが短縮化され、プロフィールを見ただけで相性の悪そうな相手を素早く排除できてしまう。これはメリットも大きいが、深い人間関係を構築するプロセスをぶっ飛ばすことにもつながる。

 

 

  • もうひとつの欠点は、オンラインでの出会いは、良い候補も見送ってしまう確率を高めてしまうところである。人間の脳は、画面上で見ている相手のプロフィールを、実際に生きている人間としてうまく変換するのが苦手であり、オフラインでしか見えない有機的な魅力を見抜くのは難しい

    実際の研究では、多くの人が「デートの相手にはルックスが良い人が良い」と答えるが、現実に会った後の反応を確認すると、事前に「ルックスが大事」と答えた人とそうでないと答えた人のあいだに、マッチング率の差は見られなかった。要するに、現実に会ってみると、たいていは思いもしなかった他の特徴がパートナー選びの条件に採用されてしまうことのほうが多い。

 

 

  • 3つの目の欠点は、多くのサイトで使われている「あなたと似た特徴や性格の相手とマッチングします!」ってアルゴリズムがうまく働いているという証拠がないところである。趣味や好きなものをベースに相手を選ばせるサービスは多いが、社会科学的な研究によると、このような予測はあまり正確ではなく、結局はリアルに対面して会話や行動を積み重ねていかないと、そのカップルが幸せになれるかどうかは予見できない。

    研究チームいわく、「コミュニケーションは豊かで複雑なプロセスであり、相手は独自のニーズや希望、優先順位を持った別の人間だ。他者との交流は非常に複雑なプロセスなので、特徴のリストを見ても役に立たない」とのこと。

     

 

  • 4つの目の欠点は、マッチングサイトを使うと、一気に数十人から数百人という膨大な数のパートナー候補から相手を探さねばならなくなるため、ユーザーのなかに「買い物しているかのような心理」を生み出すところである。あまりにも選択肢が多いと人間の脳は「正確な判断をしよう」という気持ちが薄れ、どんどん表面的な指標をもとに相手を判断し始めるし、最終的な幸福に結びつかない基準にもとづいて人間関係を決定しだすようになる。

 

 

  • 5つの目の欠点は、そもそもマッチングサイトは、短期的には「ユーザが失敗するほうが望ましい」仕組みになっている点である。ひとりのユーザーが成約すればサイトは2人の有料顧客を失うことになってしまうからである。これがどこまでユーザーの幸福を損なっているかは不明だが、このようなインセンティブの問題は念頭に置いておく必要がある。

 

 

ということで、全体的に「なるほど!」ってポイントが挙げられておりました。最後のインセンティブ問題とかは「言われてみりゃそうだよなー」という感じっすね。

 

 

ただ、もちろん著者たちは「ネットで出会うな!」と言ってるわけではなく、「オンラインのサイトを使う独身者は意欲が高いので、やっぱり有用ではあるよね」とも指摘しておられます。現時点で上記のデメリットをサイト側が解決するのは難しそうなんで、ユーザー側でオンラインとオフラインの長所を意識してミックスしてくしかないでしょうな。

 

 

ちなみに、著者たちが提案する対策のひとつとしては、

 

  • 実際にリアルで出会う前に、数週間にわたってメッセージや写真を交換しておく行為は、最終的に会ったときにお互いの魅力を高めるのに役立つ。ただし、そのやりとりの期間が6週間を超えると、お互いの期待が変な方向にゆがんでしまい、実際に会ったときの魅力が下がってしまうリスクがあるので気をつけてね!

 

ってのが挙げられておりました。とりあえず6週間以内をメドにたっぷりとやり取りをしといて、あとはオフラインに切り替えちゃうのがいいんでしょうね。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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