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【質問】体脂肪が同じでも体がより引き締まって見える人はなにが違うんですか?

 

こんなご質問をいただきました。

 

このあいだ友人とDXAスキャンで体脂肪を測ってきました。そこで質問なのですが、友人は私よりも体脂肪率が低いわけでもないのに、どう見ても私よりも体がひきしまって見えます。

 

ってことで、体脂肪の量が同じなのに、他人よりも体がバキバキに見える人ってのは何が違うのか、と。

 

 

ちなみに、DXAってのはX線を使って体脂肪や筋肉量を測るやり方で、市販の体組成計で使われてる生体インピーダンス法よりも精度が高いと考えられてます。昔はかなり高価だったんですけど、近ごろは1万円を切る価格で検査ができるようになりまして、良い時代になったものです。

 

 

で、「他人よりも体がバキバキに見えるのはなぜ?」って問題ですが、その理由はいろいろ考えられるんですよね。思いつくところをざっと見てみましょう。

 

 

  • 脂肪のつき方が生まれつき違うから:体脂肪のつき方は人によって大きく異なりまして、下半身につきやすい人がいれば、上半身につきやすい人もいますし(R)、皮膚の下につきやすい人がいれば、腹の臓器のまわりにつきやすい人もいたりします(R)。この違いが、体の引き締まった印象に影響をあたえるんですよ。

    特に、たいていの人は、他人の下半身よりも上半身の筋肉に意識が向く傾向がありまして、前腕、上腕、胸筋、腹筋などが成長している人ほど「筋肉がある!」と思われがち。いっぽうで、大腿四頭筋や大臀筋はもっと大きな筋肉なわりに、服を着ているときはあんま注目されないとこがありますね。

 

  • 体内の水分量が違うから:基本、体内の水分が少なければ少ないほど体はバキバキに見えたりします。ボディビルダーがステージ上でバキバキに見えるのは、体脂肪率がめちゃくちゃ低いのはもちろん、危険なほどの脱水状態に追い込んで肌を薄くしているからなんすよ。なので、大会の前に利尿剤を飲んで水分摂取を控えるボディビルダーは多いし、フィットネスモデルなんかも写真撮影の直前には水分を飲まないようにしますね。

 

  • 目の錯覚を利用している:肌の色を黒くしておくと体型がよりシャープに見えるのは有名な話(R)。ボディビルダーの肌が黒々しているのは、この効果を狙ってのことであります。

 

  • 撮影時テクニックの違い:これは今回のご質問には当てはまらないでしょうが、体毛を抜いたり剃ったりすることで筋肉のラインを際立たせたり、カメラマンがアングル、ライト、影を操作して、筋肉膨らみを強調したり、カッティングを深くしたりするケースもかなり多め。SNSなんかでバキバキの肉体を披露している方は、このような方法を使っていることも多いでしょう(もちろん画像を加工しているケースも多いですが)。

 

  • 体組成の測定に誤差が出ている:最後は、シンプルにDXAスキャンの測定値に誤差が出てるパターンです。DXAは優秀な技術なんだけど、やはりいろんな理由で誤差が出る傾向はありまして、たとえば筋肉の水分量が5%違うだけでも体脂肪の測定値は2〜3%は変わると考えられております。

    なので、ケトジェニックダイエットなどをやってグリコーゲンの多くを使い切った場合は、数値に大きな狂いが出ちゃう可能性が大。逆に、高炭水化物食はグリコーゲンの貯蔵量が増えるので、こちらも水分が多くなって誤差の原因となる可能性があります。

    こういった水分量の変化による誤りを防ぐには、体が新しい食事に適応するのを1~2週間待って、その後で測定した数値を基準に使うのがいいでしょう。低炭水化物食から高炭水化物食に切り替えたりした場合は、高炭水化物食を2週間食べてから、新たに基準値を測定するわけですな。

    また、グリコーゲンと同様に、クレアチンも水分量の増加を引き起こすため、測定値を混乱させる可能性があります。そのため、一定した測定値を出したい場合は、クレアチンを同じペースで使い続けるか、まったく使用しないようにしましょう。

 

 

ってことで、いろいろ書いてきましたが、これらの要因が組み合わさって「あの人はバキバキに見える!」って現象が起きているように思います。特に影響が大きそうなのは「体組成計の誤差」で、この問題については、みんなで条件をそろえて計測しないと、友人との比較は難しいでしょうね。

 

 

体組成の計測値を一定にするためには、

 

  • つねに同じ時間帯にテストする(「体脂肪は必ず午前7時に測る!」と決めておく)

  • つねに同じ食事タイミングで測定する(「体脂肪は必ず朝食前に測る!」と決めておく)
  • 水分摂取の状態をつねに同じにして測定する(膀胱が空っぽの状態で測定する)
  • テストの3日前から大きな食事の変更はしない(特に炭水化物とクレアチン)
  • テストの24時間前から運動はしない
  • テストの24時間前から保湿ローションは塗らない(これも計測に影響する)
  • テストの日は、いつも同じ服装をする
  • テストの日は、いつも同じ機器、同じソフト、同じ技術者、同じ体勢をキープする

 

ってあたりを考えないと、参考になる数値を出すのは難しいんですよね。まー、こうして見るとかなりめんどうではあるので、個人的にはあくまで参考レベルでゆるく考えたほうがよいと思いますが。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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