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最強の発毛アイテム? 「ミノキシジル・タブレット」は使う意味があるのか?

 



1日数十円で変える古い薬で新しい髪が生える!」って記事がニューヨーク・タイムズに出たらしく、育毛界隈でちょっと話題になっておりました。

 

 

有料記事なんで細かいとこはふせますが、この記事、要は「ミノキシジル・タブレット」の話でした(通称ミノタブ)。ご存じ、ミノキシジルは国内で唯一「発毛剤」と呼ぶことを許された成分で、日本では「リアップX5プラスネオ」が有名っすね。その他、もっと安価でおすすめできる商品については、「本当に使う価値がある『発毛&育毛剤』トップ5」にまとめてますんで、ご参照ください。

 

 

が、あくまでこれらは頭皮に塗るタイプの商品でして、ここでニューヨーク・タイムズが取り上げたのは口から飲む錠剤の話です。昔から「ミノタブは育毛に良い」って話はあったんですが、記事によると、近年では多くの皮膚科医(特に脱毛専門医)が、低用量のミノタブを薄毛に処方し始めているんだそうな。これは日本でも同じ傾向ですね。

 

 

ミノタブにはハゲ克服の効果があるのか?

では、このミノタブの効果やいかに?って話になりますが、日本語で読める最強の育毛ソースである「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン. 2017年版」では、残念ながら「推奨度D判定」になってたりします。要するに、ここではミノタブはおすすめできないよーって判定ですね。

 

 

その理由は「利益と危険性が十分に検証されていない」からってことで、検証データの不足を問題にしておられます。これはまさにそのとおりで、個人的にもハゲ予防の第一候補としてはおすすめしないってのは、まず強調しておきたいところです。

 

 

ただし、ミノタブについては、上記のガイドラインが出たあとでいくつか進展が見られまして、それなりに希望が持てる報告が増えたのも事実なんですよね。一例をあげると、

 

  • 2020年の研究(R)では、男性型脱毛症の男性30人にミノタブを飲んでもらったところ、全員が発毛の改善を実感し、43%が「これは良い!」と評価した。ただし、この研究では、対照群を設けていないので、データの質は低い。

 

  • 52人の参加者を対象とした2019年の研究(R)では、1日1mgのミノタブを飲んだ女性は、女性型脱毛にも改善が見られた。

 

  • 2021年の報告(R)では、ミノタブ0.25mgとスピロノラクトン25mgを併用することで、顔の多毛症を抑えて育毛が見込めると提案されている。

 

  • 女性型脱毛の女性100名(平均年齢48歳)を対象とした研究(R)では、ミノタブ0.25mgとスピロノラクトン25mgの組み合わせを12ヶ月間服用することで、毛量の増加や抜け毛の減少が有意に認められた。ただし、ミノタブのせいで収縮期血圧が平均4.52mmHg、拡張期血圧が平均6.48mmHg低下し、2名の患者に姿勢低血圧(起立時の低血圧)が認められている。

 

  • ミノタブと塗りミノを比べた唯一の研究(R)では、26人の女性がミノタブを飲み、26人の女性がミノキシジルの塗り薬(5%溶液,1ml)を24週間ほど使ったところ、ミノタブを使った女性の髪の密度は12%増加し、塗り薬を使った女性の増加は7.2%だった。ちなみに、ミノタブグループは、抜け毛の量も減った(統計的に有意ではない)。

 

みたいな感じです。いずれも規模は小さい研究なので判断は難しいものの、複数のデータは、ミノタブが女性型脱毛(1日0.25~2.5mg)および男性型脱毛症(1日2.5~5mg)に対する有益かも?と考えてる感じですね。希望が出てきたなーってとこじゃないでしょうか。

 

 

 

ミノタブって副作用が怖くないの?

ちなみに、日本語でミノタブについて検索すると、ミノタブの副作用を激しく強調したページがヒットしまして、怖くなる方もいるのではないかと思います。確かに、ミノキシジルは血圧を下げる作用が大きいので、心臓に問題がある方だと、怖いことになる可能性はあるんですよ。

 

 

では、具体的にミノタブにどこまでビビればよいかと言いますと、2021年に副作用を調べた研究(R)が発表されてたりします。これは1404 人の男女(女性943人、男性461人)に低用量ミノタブを試したもので、副作用を調べた研究としては現時点で最大クラスですね。

 

 

その結果をざっくりまとめると、こんな感じです。

 

  • 女性の2.5%、男性の0.5%が副作用のために治療を中断した

 

  • 最も一般的な副作用は多毛症で、男女ともに頭部以外の場所に過剰な毛が生える現象が見られた(女性の20%および男性の6%)

 

  • 1.3%に足首の腫れがみられ、その 25%が治療を中止した。また、0.3%に目の周りの腫れがみられたが、治療を中止のは 0%だった。

 

  • 2%は低用量のミノタブで姿勢低血圧になり、8%はふらつきの一般的な症状が出る可能性がある。実験では1.7%がふらつきを経験し、そのうちの11%が治療を中止した。

 

  • 0.9%が心拍数の増加を体験し、そのうちの33%は治療を中止した。

 

  • 0.4%の人が頭痛の副作用を経験し、そのうちの44%の人は治療を中止した。

 

  • その他、まれな副作用として、不眠、皮膚の発疹、吐き気なども確認された。

 

ということで、このデータだけを見てると割と安全な気もしますけど、まだまだ研究例が足りない感じではあります。そこまで極度にビビる必要はないものの、個人輸入とかで使うのはアレかなーと。

 

 

 

まとめ

いろいろ書いてきましたが、以上の話をまとめると、

 

  • ミノタブは希望があるデータが増えてきたが、とりあえず現時点では「塗りミノ」のほうが断然に推奨できる(手に入りやすし、塗りミノより効果が高いって話もないので)

 

  • 塗りミノを6ヶ月使っても効果が出ない人や、塗りミノで髪がゴワゴワになる人であれば、ミノタブを検討してもいいかも

 

  • ただし、いまんとこ副作用がそこまで確立してるわけでもないので、使用の前は医師との相談がマスト

 

みたいになります。近ごろは、日本でもミノタブを売るクリニックが増えてきたので、気になる方はご相談あれ。いちおう個人輸入でもミノキシジルタブレットを買えたりはしますが、低用量にするためにはピルカッターで切断する手間があるし、そのぶんだけ用量の調整もしづらくて危険だろうとは申しておきます。ま、現状では「本当に使う価値がある『発毛&育毛剤』トップ5」を使うほうがいいでしょうね。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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