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今週半ばの小ネタ:寝なきゃいけないけどダラダラ起きちゃう問題、鼻をほじると脳に悪い、学校時代のいじめはどんな影響を及ぼすか


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

   

 

 

寝なきゃいけないけどダラダラ起きちゃう……問題の原因とは?

「寝なきゃいけないんだけど、ついダラダラと起きてしまう……」って問題は、近ごろよく聞く話であります。このような現象が起こる理由かについては複数の説がありまして、たとえば過去には「セルフコントロールが苦手なのだ」とか「スマホの魅力が高いからだ」なんてアイデアが出てたりするんですよね。

 

 

ちなみに、2年前には、このブログでも「寝なきゃいけない!とわかっていても、ついテレビやスマホを見てしまう!問題はなぜ起きるのか?」って話を書いていて、この時は、「意志力への態度が夜すぐに眠れるかどうかを左右している」という結論になっておりました。なんだかよく分からない結論ですが、これもひとつの考え方っすね。

 

 

で、新しい研究(R)も「ダラダラと寝ない問題」に関する調査で、まずは結論から申し上げますと、

 

  • 不安な人ほど就寝を先延ばしにする傾向が強い!

 

みたいになってました。これは確かにありそうな理由ですね。

 

 

こちらはアーカンソー大学などの調査で、2つのクリニックから308人の男女を募集。まずは全員に「過去2週間のあいだに緊張やイライラや心配事をどれぐらい感じましたか?」と尋ね、さらに「過去1週間、何時に寝たいと思いましたか?」や「過去1週間、何時に寝ましたか?」といった質問も行ったんだそうな。

 

 

すると、睡眠の先延ばしとメンタルの状態には、はっきりとした関係が認められまして、

 

  • 不安が強い患者は、不安が弱い患者と比較して、就寝時間の先延ばし傾向が強く、睡眠時間も短い傾向があった
  • また、不安の症状が強い人ほど、睡眠に関する問題が多かった

 

だったそうな。つまり、不安が大きい人は就寝を先延ばしにすることが多く、そのせいで睡眠の問題をより多く経験し、そのせいでさらにメンタルを病むという悪循環があるのではないか、ってことですね。嫌な話ですなぁ。

 

 

不安が就寝の先延ばしと関連する理由はまだ不明なんですけど、不安になっちゃうと脳も覚醒しやすいですし、そのぶんダラダラと眠れなくなるのはわかる気がしますね。あくまで相関を示しただけの研究ですけど、ダラダラして眠れないような人は、このポイントを押さえておくとよろしいかと存じます。

 

 

 

 

鼻をほじったり、鼻毛を抜いたりすると、アルツハイマー病のリスクが高まる説

鼻ほじりや鼻毛抜きが脳に悪いかも!」って説(R)が出ておりました。まぁこれはまだマウス実験の話なので、あくまで話半分にお読みいただければと思いますが、こちらも結論から言ってしまうと、

 

  • クラミジア菌の一種は鼻から脳に感染し、そのせいで脳にプラークが溜まる可能性がある!

 

みたいになります。クラミジアというとシモの感染症のイメージが強いですが、実はいろんな場所に感染する菌でして、鼻などの気道に感染してから脳に入り込む種類もあるんだそうな。そのせいでアミロイドβというプラークの蓄積が起き、最終的にアルツハイマー病になるかもしれないらしい。怖いっすね。

 

 

で、これはグリフィス大学などの研究で、チームは、マウスにクラミジア菌を感染させ、そこから脳がどうなるかをチェックしたとのこと。その結果について研究チームいわく、

 

クラミジアが鼻から直に脳に入り、アルツハイマー病のような病態を引き起こすことが初めて明らかになった。あくまでマウスモデルで確認したものだが、その証拠は、人間にとっても恐るべきものである可能性がある。

 

ってことで非常に怖いことになってますね。この細菌がアルツハイマー病と関連していることは前から知られてたんですが、どのように侵入するかまではよくわかってなかったんですよね(遅発性認知症患者の90%の死後脳からC.pneumoniaeのDNAが検出されている)。

 


果たして、同じ結果をヒトで再現できるかどうかは謎ですけど、マウスのデータを見てると、細菌は72時間以内に鼻から嗅神経、脳へと広がっているそうなんで、これは気をつけるに越したことはなさそう。ヒトの鼻もマウスの鼻と同じで、細菌が脳に広がるのを防ぐために鼻の内側にある内膜を使ってますからねぇ。

 

 

さらに研究チームいわく、

 

鼻の中を傷つけたくなければ、鼻をほじったり、鼻毛を抜いたりするのは良くないことだ。

 

とのことで、鼻ほじりと鼻毛抜きの癖がある方は、くれぐれもご注意ください。

 

 

 

 

学校のいじめっ子とその被害者は、大人になってから暴力に手を染めやすい説

以前、イェール大学などのチームが「いじめ対策のベストはなんなの?」ってとこを調べてくれてましたが、新たな研究(R)は「子供時代にいじめられた人は、成人してからどうなるの?」という問題に焦点を当ててくれておりました。いじめが人間の心に深い傷を残すのは常識ですが、果たしてその傷は、大人になってからどのような影響をおよぼすのかってポイントですね。

 

 

これがどのような調査だったかといいますと、

 

  1. 5,405人の参加者を集め、1989年の時点でみんながいじめの被害にあっているかどうかを調べ、両親と教師からも同様の情報を求める。

  2. 2012年にフィンランド国家警察からデータを集め、参加者が暴力犯罪に手を染めた割合を調べる。

 

みたいになります。要するに、この研究チームは、「いじめの被害にあった人は、成人後に暴力犯罪を起こしやすいのでは?」と考えたわけです。

 

 

すると、結果は研究チームの仮説どおりでして、

 

  • 男性の場合、いじめの加害者といじめの被害者たちは、どちらも暴力犯罪の頻度が高かった(いじめをしなかった男性の暴力犯罪率が10%程度だったのに対し、いじめの被害者は24%だった)

 

  • 女性の場合は、そもそも重大な暴力犯罪を起こした者がほとんどいないので、いじめとの関係性を把握するのは不可能だった

 

だったそうです。もちろん、いじめに関わった人が必ずしも暴力犯罪を起こしやすいって話じゃないものの、やっぱ幼少期の傷ってのは影響がデカそうだなぁ……って結論ですね。

 

 

ちなみに、英語圏には「傷ついた人が人を傷つける(hurt people hurt people)」って言い回しがありますけど、まさにこの表現を地で行くような結果と申しますか。なんか辛い話ですなぁ。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。