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今週半ばの小ネタ:太陽の光で頭が良くなる、コミュ障の改善トレーニング、陰謀論を恋愛で改善


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

  

 

 

太陽の光で頭が良くなる

太陽の光を浴びると、いろいろ良いことがあるよねー」って話を書いたのは、もう5年も前のこと。その後も似たような研究が進んでまして、今度は「太陽の光を浴びると頭が良くなる!」って報告(R)が出ておりました。

 

これは、フィンランドで行われた健康調査のデータを使ったもので、1,838人の中年男女を調べて、みんなの1日平均日射量と認知テストの結果を比べたんだそうな。すると、1年にわたって日光を浴びている時間が長い人ほど、

 

  • 全体的な脳の働きがよい!(もちろん、個人の教育レベルや裕福さは調整している)
  • 視覚記憶と連想学習、視覚処理と持続的注意の成績も良い!
  • 日光にさらされる量が最も多い人と少ない人を比べると、だいたい認知年齢の2~4歳の差があった。

 

って結果だったらしい。とにかく、太陽をよく浴びる人は、頭の働きが良い傾向があったわけですね。その理由は不明ながら、太陽光を浴びると睡眠や気分が改善するのは確実なので、頭が良くなっても不思議じゃない気はしますね。

 

ちなみに、この傾向は、短期間の調査では確認されなかったので、太陽によるメリットは時間の経過とともに蓄積するのかもしれんですな。

 

 

 

コミュ障を改善するトレーニング

コミュニケーションが苦手な人の中には、「ネガティブな情報に意識が向きすぎてしまう!」って問題を抱えた人がいたりします。これがどういう人かと言うと、

 

  1. いろんな人がいる状況では、ちょっと不機嫌そうな人や、ちょっと怒っている人などにばかり意識が向かってしまう。

  2. そのせいで、不安な気分が激増してしまう。

  3. 不安が激増したせいで、コミュニケーションできなくなる!

 

みたいな感じです。100人のなかに混ざっている不機嫌な人が1人だけだったとしても、そこにばかり注意が向いちゃうせいで、必要以上に不安が激増してしまうわけですな。

 

また、このような問題は、不機嫌そうな人がいた場合だけでなく、「詮索されるんじゃないか……」「恥をかいてしまうんじゃないか……」といったネガティブな可能性への注意が原因で起きることがあったりします。こういうのは長年の暮らしで染み付くものなので、なかなか難しいんですよね。

 

ってことで、イランで行われた研究(R)では、「ネガティブな情報に意識が向きすぎる問題はトレーニングで改善する!」って結論になってて良い感じでした。

 

これは、60人の学生を対象にした試験で、そのうち30人は上記の問題を抱えており、残り30人は同じ問題を抱えていない人たちだったとのこと。実験では、みんなの社会不安症状、抑うつ、ネガティブな情報への注意の偏りを評価し、全体の半分にだけ「注意制御訓練プログラム」ってのを受けてもらったらしい。

 

このプログラムは、コミュニケーションの不安を改善するために開発されたもので、以下のような画像が表示され、そのなかから「普通の顔」をできるだけ早く選ぶ作業をくり返します。これによって、「怒りの顔」にまどわされずに、それ意外の情報へ意識を向けるのがうまくなるわけです。

 

 

トレーニングは1回45分で、これを週に2回ずつ合計4回行ったとのこと。でもって、トレーニングの後、みんなのメンタルをチェックしたら、

 

  • トレーニングを受けたグループは、社会不安の症状が軽減し、ネガティブな情報への注意の偏りが大きく減少した。

 

って結果だったらしい。4回ぐらいのトレーニングでも、ネガティブな刺激に意識が向かう問題が減り、コミュニケーションの悪循環を断ち切ることができたみたいっすね。社交不安にお悩みの方には、なかなか有望な結果じゃないでしょうか。

 

ちなみに、この研究で使われたようなトレーニングは、「Mood Mint 」ってアプリで似たようなことが実践できますんで、興味がある方はどうぞ。前は200円ぐらいだったのに、今は600円もするんですねぇ…。

 

 

 

陰謀論を恋愛で改善

陰謀論は恋愛で中和される!」というおもしろいデータ(R)が出ておりました。陰謀論を信じやすい人も、充実した恋愛関係を過ごせていたら、フェイクニュースに引っかかりにくくなるというんですな。

 

この研究は555人の男女を対象にしたもので、平均年齢は43歳。3週間にわたってみんなにアンケートを行い、

 

  • 陰謀論をどれぐらい信じやすい傾向があるか?
  • COVID-19の誤情報をどれぐらい信じているか?
  • どれぐらい充実した恋愛を送っているか?

 

といったポイントをチェックしたとのこと。そのうえで、すべての答えを分析したところ、結果は以下のようになりました。

 

  • 陰謀論を信じる傾向が強い参加者ほど、「コミュニティの仲間に対する信頼が高い」と回答した。つまり、陰謀論というのは、同じ考え方を持つ人たちとの社会的なつながりをもたらし、それによってますます陰謀論にハマるのだと思われる。

 

  • 陰謀論にハマりやすい人でも、充実した恋愛を送っている人ほど、新型コロナの陰謀論にはハマりづらい傾向があった。

 

ということで、良い恋愛は陰謀論へのワクチンのように働くらしい。このような現象が起きる理由は明快で、「良い恋愛をしている人は安心感を得られるので、フェイクニュースを盲信する必要がなくなるから」です。

 

もうちょいくわしく説明すると、

 

  1. 社会から十分に受け入れられていない、あるいは完全に拒絶されていると感じている人ほど、「同じ考えを支持する人と信念を共有したい!」というモチベーションが高いので、そのぶんだけ陰謀論にハマりやすくなる。

  2. しかし、恋愛のパートナーがいると、それだけで「誰かとつながりたい!」という欲求を満たすことができる。

  3. つながりの欲求が満足したおかげで、陰謀論にハマらなくてもすむ。

 

みたいなメカニズムです。恋愛によって社会とのつながりに対する不安が軽減され、陰謀論が不要になるわけっすね。

 

研究チームいわく、

 

陰謀論的な思考が強い人も弱い人も、友人や家族だけでなく、より広範な集団コミュニティと、良好なコミュニケーションをしたいという強い欲求を持っている。

 

とのことで、「陰謀論=社会的なつながりの手段」って視点が強調されておりました。うーん、納得。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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