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筋肉を育てるには「タンパク質のクオリティ」にこだわったほうがいいのか問題


 

ひとくちにタンパク質といっても、その質にはバラつきがあるわけです。例えば、肉のタンパク質と植物のタンパク質では、体内での消化されやすさなどが違っていて、それによって筋肉への影響も変わると考えられるんですよ。

 

 

その点で最もよく使われるのはPDCAAS(たんぱく質消化性補正アミノ酸スコア)で、各タンパク質がどれぐらい消化されやすく、体内で利用されやすいかを総合的に判断した指標になります。

 

これによると、一般的な傾向としては、動物性プロテインのスコアはかなり高く、植物性プロテインのスコアは低いケースが多め。そのため、ガチの筋トレ好きは、卵や牛乳を好み、豆類などは好まないこともあったりします。

 

 

実際、過去には「質が良いタンパク質ほど筋肉が育つ!」って報告も存在するんですが、逆に「タンパク質の質は関係ない!」ってデータもあったりして、判断が難しいところだったんですよ。栄養の世界ではよくあることですけど。

 

 

といったところで、新しいデータ(R)では、「タンパク質のクオリティは筋肉の成長に意味があるのか?」を調べてくれていて有用でした。

 

 

といっても、これは新たな実験ではなく、いま入手可能なデータを定性的に評価したレビュー論文になります。過去のいろんな実験をまとめて、「まぁこれぐらいの結論が出せるんじゃないかなー」ってとこを調べてくれたわけです。

 

 

で、私たちに役立つ知見を本論から引き出すと、以下のようになります。

 

  • 低~中程度のタンパク質量(1日に体重1kgあたり0.8~1.2g)では、筋肉のタンパク質合成スピードを速めるために、よりよい必須アミノ酸が必要となり、高品質なタンパク質を飲んだほうが良い

 

  • 一方で、1日のタンパク質摂取量が多い場合(1日に体重1kgあたり1.6g)は、タンパク質の質が高かろうが低かろうが、筋肉の発達にはあんまり関係がない

 

ということで、タンパク質の重要性は、1日にどれぐらいのタンパク質を摂取するかで変わってくるのでは?って結論ですね。

 

 

このレビューには、以上の重要なポイントをわかりやすくまとめた図が載ってまして、ざっくり以下のようになります。

 


ちなみに、この図を見ると、1.6g以上のエリアに「最大(maximal)」と書いてありまして、「これ以上はタンパク質を摂っちゃいけないのかな?」って気分になるかもですが、過去のデータを見る限り、このレベルを超えてタンパク質を摂取しても本質的な問題はないとされれているのでご心配なく(基礎疾患がない限りですが)。

 

 

で、この図が示すとおり、タンパク質のクオリティは、タンパク質の摂取量に大きく依存してまして、もしあなたが1日に体重1kgあたり0.8gのタンパク質しか摂っていないけど、それでも筋肉の成長を最適化したいときは、卵やミルク系のタンパク質を中心に摂ったほうがいいでしょうね。

 

 

しかし、普通に考えれば、いま筋肉を育てたい人であれば、おそらく1日に体重1kgあたり1.6gのタンパク質を摂取しているでしょうから、このブログを読んでいるような方は、別にホエイだろうがソイだろうが、好きなものを使えばいいってことになりますな。

 


実際、過去のデータでも、しっかりと大量に摂取していれば、植物性の食事(低品質のタンパク質の割合が高い)と動物性の食事(高品質のタンパク質の割合が高い)を比べても、筋肉の成長は変わらないって結論だったりしますからね。結局のところ最も大事なのはタンパク質の摂取量で、クオリティの重要性はそこまでじゃないってことなんでしょうな。

 

 

ちなみに、このデータは2つの方向からアドバイスに使えまして、

 

  • 植物性のクオリティが低いタンパク質でも、ちゃんと摂取してれば問題はないから、ベジタリアンの人も大丈夫!

 

  • クオリティが高いタンパク源を中心に摂取していれば、あんまりタンパク質を摂らなくても筋肉は成長するよ!

 

って感じになります。これはどっちが正解ってことはないので、自分のライフスタイルに適したタンパク質量とクオリティを選んで、お使いいただければ幸いです。

 

 

個人的には、過去のブログでもさんざん言ってきたとおり、1日に体重1kgあたり最低でも1.2g、理想としては1.6〜2.0gを目指しているので、特にタンパク質のクオリティにはこだわらなくてもいい感じですね。めんどうがひとつ減ってよかったです。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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