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【質問】ベルベリンが天然のダイエット薬だって本当ですか?


  

こんなご質問をいただきました。

 

ベルベリンというサプリが「天然の原料薬」と呼ばれているようなのですが、鈴木さんはどう思われますか?

 

ということで、ベルベリンでダイエットできるのかというご質問です。ベルベリンについては過去に何度か取り上げていて、ヨーロッパオオバコなどにも入っている成分で、単体のサプリのほかにも、漢方薬などにも使われてたりします。

 

一般的に、このサプリが、どんなことに効くと言われているかと申しますと、

 

  • 抗菌作用が強いから細菌性の下痢とかにいいよ!
  • 血糖値のコントロールにいいから、糖質の摂取量が多い人にもいいよ!

 

みたいなかんじです。ほかにも、コレステロールや血圧を下げるとも言われてますけど、基本的にはまだ研究例が少ないので、「使うべきかと言われれば判断が難しいなー」ってところです。

 

ほとんどの研究はサンプル数が少ないし、研究期間が短いか、ベルベリンと他のサプリを組み合わせて使ってたりするんで、「データが不足しててよくわからん」としか言いようがないもんで(R)。

 

で、近ごろ、主に海外でベルベリンがダイエットに使われるようになったのは、2020年に「減量に効くかも!」と報告するメタ分析(R)が出たからです。

 

これは過去のベルベリン研究から12件をピックアップしたもので、これによりますと、

 

  • ベルベリンは平均して約4.5キロの減量に役立つ!
  • ウエストサイズも1.27 cm減る!

 

みたいな結論だったんですよ。このレビューに含まれる臨床試験では、だいたい1ヶ月〜3ヶ月間の変化を調べてまして、これだけ見ると、「えー?約4.5キロならいいんじゃないの!?」みたいな気になるわけです。

 

ベルベリンがインスリン感受性の改善に役立つ可能性は高いので、このメタ分析が事実なのであれば、もしかしたら体内のブドウ糖の量が減ったおかげで体脂肪に影響したのか?ぐらいの仮説は立てられましょう。

 

ただし、ここで超大事な点として、実はこのメタ分析には問題がありまして、

 

  • 対象となった研究は、どれもめっちゃ質が低いので、統計で調整したところで、本当に正しい結果が出ているのかが謎

 

  • このメタ分析に関わっているアセミ先生は、専門家から「データの扱い方に不適切なところが多くないか?」と指摘されまくっている(R)

 

って感じで、データの妥当性について懸念がありまくりなんですよ。なので、いかにメタ分析による結果だとて、無闇に信じるわけにもいかんなーってのが正直なところです。

 

なので、個人的にはベルベリンが減量に効くとは思ってないんですが、もし上記のメタ分析を参考に、「サプリを飲んでみようかな……」と思うのであれば、以下の点にご注意いただければと思います。

 

  • いまのベルベリン研究では、ベルベリンの長期的な効果はまったくわかっていない。もしベルベリンで体重が減ったとしても、止めたとたんに体重がもどっちゃうかもしれない。

 

 

  • ベルベリンは、下痢、便秘、ガスなどの消化器系の不調を引き起こすケースがよく報告されている。なので、お腹の具合が悪い人は、サプリを飲まないほうがベターじゃないかと考えられる。

    もしサプリを飲んで、消化器系の異常が2週間以上続いた場合は、ベルベリンの摂取は中止すべき。さらに深刻なケースでは、吐き気や嘔吐が出ちゃうこともありますんで。

 

 

  • 当然ながら、妊娠中や授乳中の人も摂取すべきではない。これはどのサプリにも共通することだけど、ベルベリンは、特に胎盤と母乳をそれぞれ通過する可能性があるんで注意したい。

 

これらをふまえて使うなら、まぁそこまで危険なもんでもないし、試してみてもいいのかな……ってところでしょう(私はまったく使う気がありませんが)。

 

また、以上の話はあくまで「減量効果」に対する話でして、その他のメリットについてはまた別の話ではあります。いまのところ、ベルベリンで得られるかもしれないメリットとしては、

 

  • 2型糖尿病の患者さんを対象に行われたテストからすれば、ベルベリンのグルコース低下作用が、いくつかの抗糖尿病薬または標準治療と同等である可能性がある(R,R)

 

  • メタボリックシンドロームに悩む人がベルベリンを使うと、血中脂質および肝酵素が改善される可能性も、限られた研究で示唆されている(R)

 

  • ベルベリンがホルモンの結果を改善する可能性があることを示すデータもある(R)。

 

  • ベルベリンは、大腸ポリープの再発率を低下させる可能性もある(R)。

 

といった報告も出てたりしまして、「なんの意味もないサプリってわけでもないよなー」と、個人的には思っております。もうちょい様子見しつつ、良いデータが出てきたら、私も使用を考えるかもしれません。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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