「ネットいじめ」をする人たちってどんな人なの?
「ネットいじめが過去最多に」なんてニュースもありましたが、オンラインで知り合いを攻撃にしたり、恥をかかせたりする行為ってのは世界的に広がりつつあるわけです。これは10代に限った話しではなく、普通に中高年でもよく確認されている現象ですね。
では、なぜネットいじめが起きるのか?ということで、アレクサンドル・イオン・クーザ大学の先生方が良い研究(R)を行ってくれてました。主筆のマフテイ先生は、ネットいじめを「他人を傷つけるためにデジタル技術を意図的かつ反復的に使用すること」と定義してまして、なんでもこの実験が行われたルーマニアでは、世界でも特にネットいじめの量が多いと考えられているんだそうな。
ということで、研究チームは、ネットいじめの原因を調べるために、「オンライン脱抑制効果」に焦点を絞った研究を行っております。これは「ソーシャルメディアなどでコミュニケーションをとる際に自制心が薄くなっちゃう傾向」を意味してまして、ネット上だと急にキャラが怖くなったり、他人に攻撃的になったりするような人に起きていると考えられる心理なわけです。
調査の対象はルーマニアに住む男女(平均28歳)で、まずはみんなに「ネットいじめ質問票」を実施。この質問の項目には、
- 誰かの写真や画像を共有して、その人をからかったことがある。
- 自分がメンバーであるオンライングループから誰かが排除されたときに、自分もそうなるのではないかとしか思わなかったた。
などの文章が並んでおります。つまり、この研究では、誰かを直接的にいじめるだけではなく、他者の苦境を傍観する姿勢も「いじめの一種」としてカウントしているわけです。現実のいじめでも、傍観者の対応が被害を拡大することは良くあるので、これは正しい考え方かもしれませんね。
続いて、参加者の「オンライン脱抑制効果レベル」を調べるために、チームは以下のような文章に同意するかでチェックしてます。
- オンライン上では匿名なので、他人を侮辱するようなことを書いても気にならない。
- ネット上では、相手との関係を続けたくないと思ったら、いつでも終わりにすることができる。
- ネット上では、たとえ良くないことをしたと思っても、それほど大きな罪悪感を抱かない。
確かに、このような考え方を持っていたら、他人を傷つける行為は増えるでしょうなぁ……。
で、上記のデータと実際にネットいじめを行ったことがある人たちの心理を調べたら、結果はこんな感じになりました。
- 予想どおり「オンライン脱抑制効果」の数値が高い人ほどネットいじめに手を染める傾向があった。ただし、傍観者がそのまま自らネットいじめに手を染めるケースは少なかった。
- ただし、傍観者は「感覚的な刺激を求める」性向が強く、これはネットいじめの放置につながっているっぽい。つまり、ネットゴシップの傍観者は、「いじめっ子が作り出す刺激を観察したい!」という強い欲求を抱いている。
- ネットいじめをする人たちは、自分がネガティブな感情を抱いた際に抑制が効かなくなり、オンライン上で他人に有害な行為を行いはじめるケースが多い。つまり、ネットいじめをする人々は、自分のみじめさから目をそらすために、他人を自分と同じようにみじめにしようとしている。
ってことで、深い不幸を抱えた人が「他人も同じように不幸になって欲しい!」という衝動で動いた結果が、ネットいじめなのだという結論であります。まぁダークトライアドによるネットいじめもあるとは思いますが、「不幸の連鎖こそがネットいじめの強力な予測因子だ!」ってのは、うなずける結果じゃないでしょうか。
というわけで、このデータから教訓を引き出すならば、
- 自分がネットいじめの被害者である場合は、「あぁ、この人は不幸な人で、運悪く自分が発散のターゲットになったんだな……」ぐらいに考えて、自分に問題があるのではないかとは考えない。その上で、事態が悪化する前に前向きなサポートをしてくれる人に相談するか、その相手を完全にシャットするか、もしくはその相手の不幸を癒してやる(めっちゃ聖人対応ですけど)。
- 自分がネットいじめの加害者である場合(いじめの自己認識がなくても、特定の相手をネットで攻撃している場合)は、いったん立ち止まって「自分は不幸な人間なのではないか?」「自分はいま傷ついているのではないか?」と考えてみる(まぁ誰も自分の傷なんて見たくないから、めっちゃ難しい作業になりますけど)。
- 自分がネットいじめの傍観者であるなら、「自分は感覚的な刺激を求めているだけなのだ!ギャンブルにハマる人と同じだ!」と自分に言い聞かせ、被害者の尊厳と幸福を守るサポートを積極的に行う。
って感じになりますかね。研究チームいわく、
ネットいじめを防止する最善の方法は、加害者の中に存在する、いじめを助長するような苦痛の感情に対処することだ。
ってことで、加害者の傷をどうにかする対策が必要だと訴えておりました。ここらへんの問題は、有害な男性性の問題などともつながるところですねぇ。