50代のオッサン、実は人生が最高なんじゃないか説
「中年の危機」って本当にあるの?って議論が昔からあるんですよ。
「中年の危機」ってのは、だいたい40歳から60歳くらいで発生する(とされる)メンタルの悪化で、この年代になると、多くの人が心理的な不安やストレス、混乱を感じはじめると言われてるんですな。確かに、周囲を見ても、50代から急にうつ病になったオッサンは多いのかなーみたいな印象があったりします。あと、50になって急に転職したり、家族を捨てて新しい独身生活を始めることにしたオジサンとか。
ただし、この説については議論がめっちゃありまして、
- 「中年期の哲学的ガイド」では、人生の幸福度は真ん中が一番低い傾向がある!って見解を示している。
みたいになります。どっちもデータをもとにした議論を進めていて、なんとも困ってしまうところです。まぁ個人的な見解としては、
- 中年の危機が起きる人もいるけど、支持派が言うほど多く起きる問題ではなさそうだよなー
- その人が人生にどんな態度を持っているかで、中年の危機が起きるかどうかが決まるんだろうなー。
ぐらいに思ってたりしますが。複数のデータを見てると、そこまでメジャーな現象でもない印象なんですよね。
でもって、新しいデータ(R)も「中年の危機」に関する内容で、結論から申し上げますと、
- 感情や気分については、中年を過ぎたら人生は良くなる一方だ!
みたいになります。中年期に幸福度が下がるって考え方は支持されず、逆に人は晩年になるにつれて着実に感情的な満足度が高まるというんですな。この結論は、私の実感とも適合するところです。
これはウルム大学のチームが行った研究で、PANAS(ポジティブ・ネガティブ感情尺度)ってテストを使って、18歳から99歳までの3,300人以上の成人を対象に調査を実施。成人期における幸福感の変化をチェックしてみたんだそうな。
PANASってのは、8個のポジティブなワードと8個のネガティブなワードで構成されてまして(海外版は10個)、それぞれのワードに、いまの自分がどれだけ当てはまるかを6点満点で評価します(全くないなら1点で、非常に当てはまるなら6点)。セルフチェックしたい方は、以下のワードで自己採点してみてください。
- ポジティブ系
- 「活気のある」
- 「誇らしい」
- 「強気な」
- 「きっぱりとした」
- 「気合いの入った」
- 「わくわくした」
- 「機敏な」
- 「熱狂した」
- ネガティブ系
- 「びくびくした」
- 「おびえた」
- 「うろたえた」
- 「心配した」
- 「ぴりぴりした」
- 「苦悩した」
- 「恥じた」
- 「いらだった」
このテストをやってみると、ポジティブ系ワードの1項目あたりの平均は3.5(ほとんどの人が2.5~4.5)で、ネガティブ系ワードの平均は約2.0(ほとんどの人が1.3~2.8)におさまることが多め。これを参考に、いまの自分がどんな気分で過ごしているのかをチェックしてみるのも良いでしょう。
で、研究の結果はこんな感じになりました。
- ポジティブな感情は、中年になるほど着実に上昇していた。
- ネガティブな感情は、70歳くらいまで下降を続けた。 ただし、70歳を過ぎると、人によって健康の悪化が顕著になるため、自分の体調に問題を抱えた人は幸福感が悪化する傾向があった。
- 全体的には、歳を取れば取るほど、ポジティブな感情もネガティブな感情も“強度”が低くなった。つまり、高齢になるほど、気分が激しく上がることはなくなるが、同時に気分が激しく落ち込むこともなくなる。
ご覧のとおり、年齢を経るほどポジティブな感情の総量は増え、一方でネガティブな感情は減る傾向が見られたらしい。もちろん、メンタルが悪化した人ほど寿命が短くて調査に参加できなかった可能性はあるので、結果の解釈には注意が必要ではありますが、中年期の幸福度の低下を示す証拠は何もなかったという事実は同じであります。
ってことで「中年の危機」の問題について、研究チームは、だいたいこんな結論を出してます。
- 中年期は別にメンタルが低下する時期ではなく、むしろ成長の機会が増える時期である。
- 問題になるのは主観的な健康の状態なので、フィジカルな健康を目指すのがベストでしょう。
「中年はポジティブな感情がガンガンに増える良い時期なので、健康にだけは注意しようぜ!」というまことに良い話であります。研究チームの言葉を引用すると、「中年期は多くの場合、個人がより成熟し、統合され、仕事や家庭の成功から成長できる時期であり、充実感やより良い精神衛生につながる」とのこと。中年の時期ってのは、人生の目標に優先順位をつけられ、ネガティブな感情を調整するスキルも上がり、それによってポジティブな感情が増えるってことでして、これはオッサンには勇気が出る結果ですねー。