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筋肉が落ちやすい高齢者はどのサプリをとって筋トレすればいいのか?を調べたメタ分析の話

 

「歳をとると筋肉は落ちるもの!」って考え方がありまして、それは実際に正しくはあるんですが、だからと言って加齢のまま流されていたらQOLが下がっちゃうのも間違いないところではあります。そこで最新のネットワークメタ解析(R)では、高齢者が筋トレの効果を最大化するサプリを検証してくれていて、なかなか勉強になりました。

 

 

筋トレ × 栄養介入の効果を比べてみたらどうなるか?

今回の研究は、997人の60歳以上の高齢者を対象にした19件のランダム化比較試験(RCT)を統合したもの。これに加えて、従来のメタ解析より高度なネットワークメタ解析って手法を使い、複数の栄養サプリを直接比べております。対象となったサプリは以下の3つでして、

 

  • プロテイン11本
  • クレアチン5本
  • HMB3本

 

みたいな感じで、いま筋トレでよく使われる3つのサプリを厳選し、それぞれの効果をチェックしたわけですね。

 

なぜ、研究チームがこのような調査をしたのかと言うと、世の中には「筋トレしてれば食事は適当でOKっしょ」みたいな考え方もあるからです。とにかくトレーニング量さえ増やしておけば筋肉は勝手に育つ、栄養は二の次でも大丈夫だろう、という発想を持つ人は意外と多いんだそうな。まあ、このブログを読むような人なら大丈夫でしょうが。

 

が、このブログをお読みの方ならおわかりのとおり、筋肉ってのは食事の影響がかなり大きめ。過去の研究では、栄養不足のまま筋トレをやると、筋肉が増える効果が42%も低下するとも報告されてまして、栄養を甘く見ると大変なことになっちゃうんですよね。言ってみれば、

 

  1. 筋トレ = 機械的刺激(スイッチを押す)
  2. 栄養 = 材料供給(筋肉を作る)

 

みたいな位置づけでして、この2つがそろってはじめて筋肉は育つってのが基本になるわけっすな。

 

 

SUCRAランキングで見えた事実:勝者はプロテインとクレアチン

で、この研究では、3つのサプリの効果をチェックするにあたり、SUCRAスコアってのを使ってます。これは「それぞれのサプリがどれだけ上位に来る可能性があるか」を確率的に評価する統計指標で、複数のサプリの相対的な強さを一望できるようにしたものになります。簡単にいえば、サプリの信頼度つきランキングみたいなものを作るのに適した手法になります。

 

では、SUCRAスコアによる“効果ランキング”を見てみましょうー。

 

筋力アップ効果(SUCRAによる順位)

  • 1位:プロテイン(SUCRA 98.7%)

  • 2位:クレアチン(SUCRA 48.9%)

  • 3位:プラセボ(SUCRA 43.8%)

  • 4位:HMB(SUCRA 8.7%)

 

筋肉量アップ効果(SUCRAによる順位)

  • 1位:クレアチン(SUCRA 99.9%)

  • 2位:プロテイン(SUCRA 62.5%)

  • 3位:HMB(SUCRA 23.9%)

  • 4位:プラセボ(SUCRA 13.7%)

 

ということで、全体的な結果を見てみると、結局はプロテインとクレアチンしかないのかーという、いつもながらの結果に落ち着いてますね。一方でHMBの立場はかなり厳しくて、実質的な効果量をチェックしてみても、

 

  • プロテイン → 筋力アップ(SMD = 0.45)

  • クレアチン → 握力+2.18kg向上(MD = 2.18)

  • HMB → 有意差なし

 

みたいになってたりします。やっぱHMBは買わないでいいか……。

 

 

では、高齢者の筋トレは結局どうすればいいの?

ということで、高齢者の筋トレにおいてもSame ol', same ol’な結論ではありますが、この研究を参考にすると、高齢者の方々が筋肉を減らさないための実用的なロードマップを作ることもできますんで、そちらもチェックしときましょう。

 

高齢者の筋トレ栄養チェックポイント

1. アミノ酸で土台を作る:

筋肉は十分な材料(アミノ酸)がないと増えないし、高齢になるほどアミノ酸が大事になるので、たんぱく質の確保が最優先。目標たんぱく質量は、「体重 × 1.2〜1.6g/日」が最低ラインなので、体重60kgなら1日72〜96gが目安になる。たんぱく質の配分は、1食あたり20〜40gを3食に分けて摂るといいかも。高齢で食が細くなるとたんぱく質を補うのは難しいので、食事から不足する分はプロテインで補うのが吉。

 

2. サプリも使っておく

サプリはマストではないものの、必須栄養素を食事だけでまかなうのはしんどいので、以下を参考にしてください。

 

優先度A

  • プロテイン:筋力アップと筋トレのダメージ回復用に、1回20〜30gを使う。タイミングは好きなときでOK。
  • クレアチン:筋肉の量を増やすために、1日3〜5gを。摂取のタイミングはいつでもOK(毎日継続するのが大事)

 

 

優先度B:条件付きで推奨

  • ビタミンD:血中25(OH)Dが低い人や屋内で過ごす時間が長い人は、1日1000〜3000IUをどうぞ。
  • オメガ3:魚を食べる回数が週2以下の人は、DHA/EPA 500〜1000mgをどうぞ。ただし、オメガ3系サプリは品質が悪いものが多いので、そこはめっちゃ注意が必要。

 

優先度C:状況次第

  • ホエイ以外のプロテイン(カゼイン/ソイ):ホエイでお腹を壊す人用。
  • 必須アミノ酸(EAA):食が細すぎる人用。

 

ってことで、こうしてみると高齢者といっても、やることは割とシンプルですね。おそらく、高齢者については食欲減退が最大の敵になるはずなので、たんぱく質が1日60gを下回らないように気をつけ、どうしても食べるのが辛いときは「プロテイン+牛乳+はちみつ」の高カロリーシェイクみたいなものを代用すると良いのではないかと。どうぞよしなにー。

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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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