今週の小ネタ:「呼吸」でアルツハイマーのリスクが下がる?精製食はわずか3日で記憶力を下げる?「なんのために生きてるのか分からない……」は、年齢によって理由が違うかも

ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
「呼吸」でアルツハイマーのリスクが下がる?
「マインドフルネス中の“呼吸の仕方”によって、アルツハイマー病のマーカーが変わる」っていう、なんとも気になるデータ(R)が出ておりました。
アルツハイマー病のマーカーってのは「アミロイドβ」のことで、これが脳内に蓄積されると、神経細胞が傷ついて認知症を引き起こすとされてるんですな。通常、アミロイドβは体内で適切に処理されるものなんですが、何らかの理由で処理がうまくいかないと、どんどん溜まっちゃうんですよ。これが、瞑想中の呼吸によって改善するんじゃないか、と。
この研究は18〜35歳の健康な若者89名を対象にしたもので、参加者を以下の3グループに分けたんだそうな。
- ゆっくりした呼吸でも瞑想 →「5秒吸って5秒吐く」ペースで、1分あたり約6呼吸。副交感神経を活性化させるような呼吸法を行う。
- 通常呼吸のマインドフルネスグループ → 呼吸のリズム指定なし。お腹の動きに意識を向けるだけ。
- 何もしないコントロールグループ
その上で、これを1日40分(20分×2回)、1週間続けてもらい、前後の血中アミロイドβの変化を比較したわけですね。
で、結果がどうなったかというと、
- スローブリージング瞑想グループ → アミロイドβ40と42の血中濃度が減少(しかもわずか1週間で)
- 通常呼吸グループ → アミロイドβが増加
- コントロールグループ → 変化なし
みたいな感じだったそうな。つまり「ゆっくりした呼吸でマインドフルネス瞑想」をすると、体によい影響があるのではないかってことですね。
なんだか不思議な現象のようですが、研究チームは、この現象の背景に「副交感神経の活性化」を想定しておられます。簡単に言うと、ゆっくりした呼吸を行うと副交感神経が優位になり、脳と体が「今は安全だ」と判断し、ストレスホルモンや炎症性物質の分泌が抑制された結果、アミロイドβの生成も抑えられるんだそうな。面白いですねぇ。
ということで、もし皆さんが「将来の認知症予防が気になる……」と思ってるなら、1回10〜20分ほど呼吸瞑想を1日2回ずつやってみるといいかもしれません。そのやり方は簡単で、背筋を伸ばして座ったら、「5秒かけて鼻から吸い、5秒かけて口から吐く」ってのをひたすら続けるだけ。呼吸に集中し、雑念が浮かんだらやさしく呼吸に戻すようにしましょう。
もちろん、血中のアミロイドβが減ったからといって、それだけでアルツハイマー病のリスクが劇的に下がるわけではないので注意してください。脳内の変化と血中の変化は完全に一致するわけじゃないし、若者のデータがそのまま高齢者に当てはまるかもまだ未確定であります。
とはいえ、「1日40分のスローブリージングで、血中アミロイドβが減るかも」ってのは、なかなか良い話ですんで、試してみてもいいんじゃないかと。今後は、脳脊髄液(CSF)レベルでの変化も検証予定とのことなんで、研究の進展に期待したいところです。
精製食はわずか3日で記憶力を下げる?
「精製された食事で記憶力が下がるかもだ!」って研究(R)が出ておりました。ラットを使った実験なので、人間にどこまで当てはまるかは謎ですけど、なかなか示唆的な内容なんじゃないかと。
これはオハイオ州立大学のチームによる研究で、「精製食を食べさせると、どれぐらい早く記憶力に変化が出るか?」を調べたもの。「精製食」ってのは、いわゆる超加工食品に近い内容で、簡単に言うと、
- 食物繊維ゼロ
- 高脂肪、またま高糖質
- 単純な組成の人工的な食事
みたいな感じになります。いかにも体に悪そうな食事っすね。
実験では、若いラット(3ヶ月)と高齢ラット(24ヶ月)に、3日間それぞれ異なる食事を与え、その後に「恐怖条件づけテスト」を行って記憶の定着度をチェックしたそうな。すると、その結果はというと、
- 若いラット:どの食事でも記憶力はキープされた
- 高齢ラット:精製食を食べたグループだけ、記憶力がガタ落ちした
だったそうで、年を取るほど質の悪い食事は脳に悪影響なんじゃないかって結果ですね。特に高脂肪・低糖質の精製食は海馬依存の記憶(場所・文脈)に障害を起こし、すべての精製食は扁桃体依存の記憶(恐怖や感情)に障害を起こす傾向があったらしい。つまり、「高齢になると、どんなタイプの精製食でも、わずか3日で脳の感情記憶がやられてしまうかも?」って話ですな。
となると、なんで精製食がここまで良くないのかが気になりますけども、この研究によりますと、おそらくは「食物繊維の欠如」が大きいんだろうなーって結論になってます。研究チームが注目してるのは酪酸で、こいつは腸内細菌が繊維を分解して作り出す物質なんですが、
- ミトコンドリアの機能サポート
- 脳の炎症抑制
- エネルギー代謝の正常化
みたいに、脳にとってかなり重要な役割を果たしていることがわかってるんですよ。実際に、高齢ラットを調べたら体内の酪酸レベルが急激に低下しており、それが記憶障害と相関していたらしく、「やっぱり食物繊維は大事!」と思わせる結果になってますね。
繰り返しになりますが、あくまでラット実験なので注意は必要ながら、人間の高齢者でも同じ現象は起き得るような気がしております。研究者も「精製食が高齢者の認知ミス(事故や金銭トラブル)のリスクを高めるかも」と警告してまして、年を取るほど「超加工食品は減らしたほうがいいだろうなぁ」と思わせてくれますね。とりあえず、年を取ったら食物繊維にはさらに注意ってことで。
「なんのために生きてるのか分からない……」は、年齢によって理由が違うかも
「うつで人生の意味が感じられなくなる現象は年齢によって異なる」ってデータ(R)が出ておりました。これまでの研究では「うつ病は人生の意味を感じづらくさせる」という知見が何度も明らかにされてきたんですが、そのプロセスは年齢によって異なるのでは?って話ですな。
この研究は中国の11歳から76歳までの1,255人を対象にしたもので、以下の4つの世代に分けて調査を行っております。
- 中学生(11〜15歳)
- 高校生(15〜18歳)
- 大学生(18〜24歳)
- 中年(35〜76歳)
研究では、すべての参加者に「うつの重さ」「孤独感」「自己評価」「人生の意味」を尋ね、それぞれの相関関係をモデル化。そこでどんなパターンが浮かび上がるのかを調べてみたところ、こんな結果が見られたんですよ。
- 高校生:まず最も影響が大きかったのが高校生で、この世代では、うつ症状が強まると、まずは孤独感が増し、それが自己評価の低下や人生の意味喪失へとつながっていくことが多かったそうな。この世代は「仲間とのつながり」がアイデンティティ形成の土台になっているので、そこらへんが関係しているんでしょうな。
- 大学生:いっぽうで、大学生になると、「人生の意味」を支えているのは自己評価の高さだったとのこと。つまり、「自分に能力があると思えるか?」「社会に貢献できると思えるか?」「自分の将来に希望を持てているか?」といった「自己効力感」が、人生の意味感に直結していたんだそうな。この時期は、自立・就職・キャリア形成といった「自分で道を切り拓く力」が求められるフェーズなので、「自分には価値がある」という感覚が欠けると、途端に人生の目的も見えなくなるんでしょうな。
- 中年:最後に中年層は、「孤独」や「自己評価の低下」とは関係なく、うつによって直接的に人生の意味が下がったそうな。この世代になると、「もうこの年齢まで来てしまった……」「あのとき別の選択をしていれば」「この先、自分は何を成し遂げられるのか?」みたいな気持ちにとらわれるため、うつ状態になると、これが即座に「意味の空白」に直面しやすいんでしょうな。
ってことで、こうして見ると、人生の意味を見失うプロセスは年齢ごとに異なるってのがよくわかりますね。すでにアラフィフな私としては、中年は「今まで自分がやってきたことに意味があるのか?」という問いが前面に出てくるため、精神的なダメージがダイレクトに響きやすいって結論には、ぐっと来るものがありましたねぇ。
ってことで、この研究をもとに、それぞれの段階で有効そうな対策をまとめてみると、
- 高校生は「つながりの再構築」が大事なので、グループ活動や共同作業で孤独感を減らしたり、SNSの利用状況を見直すとよさげ(特に比較による自己否定を防ぐのが大事かも)。
- 大学生は「自己効力感の強化」が大事なので、小さな成功体験を積ませたり、得意分野でのスキルアップを目指したり、将来のビジョン形成ワークなどで自信を高めるのがよさげ。
- 中年層は「過去の意味づけ」と「再選択」が大事なので、ライフレビューで過去の経験を意味づけ直したり、自分の価値観に沿った活動を見つけたりするのがよさげ。
って感じになるんでしょうな。どうやら「人生の意味」は年代によって揺らぎ方が異なるので、それに沿ったケアが大事ってことなんでしょうねぇ。

