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なぜ子ども時代を思い出すと、メンタルが安定するのか?

 
 

みなさまは、「子どものころの記憶」をどれくらい鮮明に思い出せますでしょうか? 私はそもそも記憶力に自信がないほうなんで、「小学生のときの夏休みの思い出」などと聞かれても、「人の家でスーマリやってたなー」ぐらいの曖昧なイメージしか出てこなかったりします。

 

というと、「子どものころの記憶なんか思い出しても意味ないでしょ」と思うかもですが、実際には、いくつかのメリットが提示されてたりするんですよ。どんなメリットがあるのかをざっくり申し上げますと、

 

  1. 自己理解が深まる(=アイデンティティの再構築):自分の子ども時代の体験を思い出すことは、「自分はどこから来て、どんな価値観を持って育ってきたのか?」という問いに答える作業なので、自分の癖や反応パターンのルーツを探る作業になるんですよ。これが、アイデンティティ形成につながったりするわけですね。


  2. 感情の処理と癒し(=心理的レジリエンスの強化):過去の記憶(とくにネガティブな体験)に向き合うことは、感情的な統合につながったりします。昔の傷ついた記憶を「当時の子どもとして」ではなく、「今の大人として」見返すことで、感情の再解釈が可能になるんですな。


  3. 創造性の向上(=自由な発想が戻る):子どものころの記憶には、大人になって忘れてしまったような遊び心や好奇心が詰まっていることが多め。たとえば、意味もなく石を集めたり、空想の友達と会話したりみたいなことでして、そういった体験を思い出すことで、創造的なスイッチが入ることもあったりします。

 

みたいな感じです。なので、過去の自分を思い出してみるってのは、意外とメンタルの安定や想像力の活性化につながったりするんですよね。

 

といったところで今日の本題。近ごろ、「とある方法を使うと、子どもの頃の記憶がめちゃくちゃクリアになる!」という面白い研究(R)が出ましたんで、その内容をチェックしときましょう。

 

これはアングリア・ラスキン大学のチームが行った実験で、健康な成人50名を対象にしたもの。そのうち一部の参加者には「自分の顔が子どもの顔に変わるフィルター」を使ってもらい、他の参加者にはただ現在の自分の顔を見るように指示したんだそうな。

 

その後、参加者全員に『「11歳までの記憶」と「直近1年の記憶」を語ってください』と指示し、出てきた答えにどのような違いが出たのかを分析したんだそうな。その結果がどうだったかというと、

 

  • 自分の子どものころの顔を見たグループは、子ども時代のエピソード記憶が明らかに豊かだった!

 

って感じだったんだそうな。エピソード記憶ってのは自分がいつ・どこで・何を体験したかといった、個人的な出来事を具体的な情景や感情とセットで思い出す記憶のことでして、つまり「子どもの顔の自分」を見たグループでは、細かな部分まで過去の記憶を呼び起こすことができたわけですね。

 

なんとも不思議な現象のようですが、その原因について、研究チームはこんな仮説を立てておられます。

 

私たちの記憶は、“出来事”だけでなく“そのときの身体”と一緒に保存されているのではないか?

 

つまり、私たちの記憶ってのは、単なる“脳内にため込まれた写真”のようなものではなく、「どんな体でその体験をしたか」もセットで保存されているって話です。

 

たとえば、ランドセルを背負って走ってたときの空気感とか、背が低かったころに見ていた景色とか、そういった身体感覚ごと私たちは過去を記憶してるってことですな。それゆえに、「そのときの身体」を脳に再現させると、その時代の記憶も呼び出されやすくなるのではないか、と。

 

なので、この知見を実際に試してみるのであれば、

 

  • 昔の写真や動画を見るだけでも、身体記憶が刺激される可能性はあるかも

  • そのときの服や持ち物、音楽などを再現すると、より記憶がよみがえりやすいかも

  • 子どものころに使っていた香水やシャンプーの匂いも、意外と強力かも(嗅覚記憶はとても強い)

  • 自分の写真をAIに若返らせてもらうのも良いかも

 

ってあたりは有効かもですね。これらの技法を使うと、過去の身体的な文脈が再構成されてより深い記憶を引き出せる可能性はありましょう。

 

にしても、こういう研究を読むと、私たちの記憶ってのは、意外と「いまの自分の身体」から影響を受けているってのを実感しますね。記憶ってのは、あくまで“現在の自己”のフィルターを通して再生される物語みたいなものなんで、これは逆に言えば、今の自己をちょっと変えるだけで、昔の記憶も変わる(=よみがえる)ってことでもあるんでしょうな。

 

というわけで、「昔のことなんか思い出せないな……」と思ったら、ちょっと子どものころの身体感覚を再現してみると、意外な記憶がよみがえるかもしれません。その結果として、自己理解が深まったり、心の傷が癒されたり、新しい発想が生まれたりするかもしれないんで、ちょっとした遊びとして試してみてもいいんじゃないかと。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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