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「疑うほど人は嘘をつく?」信頼が嘘を減らすかもしれないという研究

 

人にウソをつかれて嫌な思いをした経験は誰にでもあるはず。約束を破られたり、事実を隠されていたり、気づいたら騙されていたり……みたいなやつっすね。

 

というわけで、多くの人は「どうやってウソつきを見抜けばいいのか?」って問題意識を抱きがちなわけです。このブログでも、過去に「4つのステップを使って他人の嘘は見抜けるか?」みたいな話をしてまして、嘘を見抜く方法を探ってきたわけです。

 

が、もちろん「嘘を見抜く」って視点も重要ながら、過去の研究を見るかぎり、もっと重要なのは「どうやってウソを減らす環境を作るか」だったりします。ここらへんは「相手の嘘を見抜くのはムリだけど、相手の嘘を減らすことはできるかも!という話」にも書きましたんで、興味がある方は参照していただきたいところですが、簡単に言うと「私たちが嘘をつくかどうかは、周囲の環境によるところが多い」ってのがわかってるんですよね。

 

ということで、新たに浙江師範大学の研究チームが、「他人の嘘を減らすにはどうすればいいのか?」って視点から調査(R)を掘り下げてくれてて面白かったです。

 

 

 

ウソは「社会関係」の中で生まれる

この研究は「人は信頼されるほど正直になるのか?」というテーマを扱ったもので、この研究チームまず「嘘ってのは完全に個人の性格だけで決まるわけではないんだよー」ってところを強調しておられます。研究チームいわく、人が嘘をつくかどうかには、以下のような社会的要因がかなり影響するんだそうな。

 

  • 相手をどれだけ信頼しているか
  • 相手から信頼されていると感じるか
  • 相手との関係性

 

たとえば、「この人は誠実だなー」と感じる相手には「よし!自分も正直に話そう!」と思ったり、「この人は疑い深そうだな」と思ってしまう相手には「とりあえず本音を隠しておくか」と感じたりといったことは誰にでもあるじゃないですか。こんな感じで、嘘ってのは「人間関係の中で発生する行動」だと考えられるわけですね。

 

これは、研究の世界では「社会的交換理論」として知られるもので、簡単に言うと「相手が正直なら自分も正直でいようと考える!」みたいな心理のことです。これは誰にでも心当たりがあるでしょうな。

 

では、本当に信頼はウソを減らすのかってことで、研究チームはこれを確かめるために、大学生を対象にこんな実験を行っております。

 

  1. 参加者にオンラインのサイコロゲームをやってもらう。この時、参加者には「サイコロの結果は自己申告でいいですよー」と伝え、簡単に嘘がつける設計にしておく。

  2. そのうえで、研究者は以下の2つの条件を作る。

    1. 高信頼条件:研究者が参加者に「うちの参加者は正直な人が多いんですよね」と伝える。

    2. 低信頼条件:研究者が参加者に「参加者が正直に報告するか、ちょっと怪しいんですよね」と伝え、「信頼されている雰囲気」と「疑われている雰囲気」を作る。

 

というわけで、「信頼されていると、本当に人はウソをつきにくくなるのか?」を確かめたわけです。面白いですなぁ。

 

 

で、「信頼されるとウソが半分に」なった

ってことで、結果を簡単に見てみますと、

 

  • 信頼されている条件では、ウソの割合が約50%減少した。

 

みたいになります。つまり、人は「信頼されている」と感じると正直になりやすいって結果が出たわけですね。これはなかなか示唆的な結果でして、逆に言えば「こちらが疑うほど、相手のウソが増える可能性がある」とも言えますからね。やはり「正直さってのは、相手との関係性の中で引き出されるもの」だってことですな。

 

さらに面白いもので、この研究ではもうひとつ、こんな結果も出ております。

 

  • NFCCが低い人ほど「信頼の影響」を受けやすい!

 

NFCCってのは、日本語では「認知的完結欲求」と訳される概念で、簡単に言うと「曖昧な状態がどれくらい嫌いか」って性格を表しております。なので、

 

  • NFCCが高い人=白黒つけたい、すぐ結論を出したい、曖昧さが嫌い

  • NFCCが低い人=情報を集めてから判断する、判断を保留できる、曖昧でも平気

 

みたいになるんですな。これは『答えをすぐに求めがちな現代ですけど「答えを待てる人間は強いよ!」』でも、現代人における大事なポイントとして説明してますんで、興味のある方はこちらもご覧ください。

 

ということで、今回の研究によりますと、NFCCが低い人ってのは、すぐに答えを求めようとはしない性質を持っているため、「相手の態度」や「言葉」「表情」などをじっくり観察した上で「この人は自分を信頼しているな」ってのを見極めるので、そのぶん「相手が信じられる人ならこちらも信頼する」って態度を取りやすかったわけですな。

 

こうして考えると、たとえば「相手が嘘をついていた!」って状態になったとしても、「相手が「言えない雰囲気」を感じていたのかも?」と考える余裕もできるんじゃないでしょうか。事実、この研究でも、「多くの人は批判的な相手、疑い深い相手、厳しい相手などには自分の欠点を隠したくなる傾向がある」と指摘されてますしね。もちろんこれで嘘が正当化できるってわけじゃないものの、信頼がない環境では、正直さも育ちにくいってのは覚えといてもいいんじゃないでしょうか。

 

 

 

嘘を減らすための3つのポイント

ということで、この研究から実生活で使えそうなポイントをまとめると、だいたい次の3つになりましょう。

 

  • ポイント1. 最初から疑いすぎない疑いの態度は、防御、隠蔽、嘘を誘発しやすいので、もちろん盲目的に信じる必要はないんだけど、最初から「疑う前提」だと関係は悪化しやすいと申せましょう。
  • ポイント2. 正直さを期待するメッセージを出す:この研究では、「参加者は正直な人が多い」という一言だけで嘘が減ってるんで、日常でも「あなたなら正直に言ってくれると思う!」とか「正直に話してくれれば大丈夫」といったメッセージを送っておくと、意外と効果があるかもしれませんな。

  • ポイント3. 告白できる余白を作る:人は誰でも、失敗や黒歴史、後ろめたい過去などを持っているので、それを話せる空気があるかどうかはかなり重要。なので、すぐ断罪したり、すぐに答えを迫ったりといった態度は、嘘を増やす可能性があると言えましょう。

 

ということで、上記をふまえて「嘘は人間関係の中で生まれる!」「信頼されていると人は正直になりやすい!」って2点を押さえておくのが良さそうであります。もちろん、世の中には本当に嘘ばかりつく人もいるんですが、「こちらが疑うほど嘘が増える」ってのもまた事実なんで、「信頼は正直さを引き出す装置でもある!」ぐらいに思っておくのがいいんじゃないでしょうか。どうぞよしなに。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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