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答えをすぐに求めがちな現代ですけど「答えを待てる人間は強いよ!」っていうシンシナティ大学の話を見てみましょう。

 
 

答えを待てる人間は強い!」って考え方があるんですよ。専門的には「不確かさへの不耐性(Intolerance of uncertainty)」などと呼ばれるポイントで、IUなどと略されて表現されることが多め。

 

 

IUが高い人は、答えを待つことができず、答えが出ない間はネガティブな気分に襲われまくるのが特徴。具体的な例を挙げると、

 

  • Googleで検索して答えが出なかったら、その疑問を脇に置いて別のことに集中できなくなる!
  • 本や映画のエンディングが待てなくて、先にラストを見てしまう!(または読み飛ばす)
  • インターネットでの注文が遅れていると、配送状況を確認しまくってしまう!

 

といった問題に悩まされがちなんすよ。しかし、実際にはこれといった答えがすぐに見つかることは少ないのが人生ですから、あまりにIUが高すぎるとメンタルを病む一因になりかねないわけっすね。

 

事実、近頃シンシナティ大学などが発表したデータ(R)でも、過去の文献をまとめた上で「IUが高いと暮らしがハードモードになるから、不安や抑うつなどの問題が起きやすいよー」と指摘しておられます。以前に紹介した「認知的完結欲求」とも重なるポイントですね。

 

 

この研究は、IUを診断するための方法について調べたもので、「PACTアナグラム課題(PAT)」って手法を221人の学生に試してます。まぁその具体的な方法は煩雑になるので申し上げませんが、ここで個人的におもしろいと思ったポイントは、研究チームが

 

PATの完了直後の主観的な苦痛は、IUの苦痛成分の指標と考えられる

 

と結論づけてることっすね。つまり、「不確かさに耐えられない!」でメンタルを病んでしまうの、「答えにたどり着けなかったときに心が動揺しまくるからだ」ぐらいの意味です。待ち時間でリラックスできずに主観的な不幸が増大しちゃう傾向が、せっかちな人の生活を難かしくしているんだ、と。まぁそうだろうなーって結果ですけど、IUと抑うつ症状の相関は高めなんで、心当たりのある方は意識しておくといいんじゃないでしょうか。

 

 

ちなみに、IUな人が苦痛をコントロールするための技法としては、以下のようなものがあったりします。

 

  • 結果を待っている時の自分の考えや感情に注意を払う:答えが得られずにイライラを感じたら、そのイライラする感情や、「なんですぐに配送しないんだ!」という自分の内面にわきあがる思考に意識を向ける手法。毎度おなじみ認知行動療法の考え方ですね。私たちの思考は感情を生み出すのに大きな役割を果たしているんで、それだけでも効果は出やすかったりするんですよ

 

  • 待つ練習をする:答えが出ない状況に置かれたら、「答えはやがて明らかになる!というか、もし答えを知らなくても生きていける!」と自分に言い聞かせるトレーニング。映画や小説の結末を急いで知りたくなったら、いったん読書や鑑賞のペースを落として、その場の状況に集中してみるといい感じです。コンテンツ鑑賞のペースを落とすことで、今まで気づかなかった脚本や演出の良さに気づくのはよくある話でして、これは私も意識的によくやってます(でないと、ラテンアメリカ文学とか読めない)

 

  • 待てたら自分にご褒美:こちらは行動学的アプローチで、待つことに成功できたら、心の中で自分を褒めるだけでなく、好きなお菓子を食べたり、好きなことをして数分過ごすなど、具体的な報酬をあたえてみるのが吉。あえてゆったりした小説などを読んでみつつ、先を急がない読書ができたら自分にご褒美をあげるといいかもっすね。

 

ってことで、いくつか紹介してみましたが、そもそも「待つこと」は苦痛の状態ではなく、「待つこと」自体にメリットがありますんで、不確実性と戦うのではなく、時間の流れに身を任せる楽しさを養っていただくといいんじゃないでしょうか。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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