今週末の小ネタ:仕事の燃え尽きを食事で改善? 5日間のガチマインドフルネスの効果は? ダマスクローズがメンタルに効く?
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
健康的な食事で「燃え尽き症候群」は改善されるか?
健康な食事はメンタルにも良い!って報告は多いわけですが、新たなデータ(R)は「良い食事はバーンアウトを防ぐ!」と報告されておりました。低脂肪の乳製品、野菜、果物やベリー類、鶏肉や魚などはが、燃え尽き症候群の症状を減らしてくれるかも?というんですな。
燃え尽き症候群ってのは、ご存じのとおり仕事のストレスなどでメンタルが変調を起こした状態で、
- 仕事に対してとにかく疲れまくる
- 仕事の意味を感じられなくなる
- 自分は仕事に向いてない!って感覚に襲われる
などの症状に悩まされるのが特徴であります。当然ながらキャリアに多大な悪影響を及ぼすので、どうにかしときたいわけっすね。
ってことで、この研究では、フィンランドの女性630名を対象に横断的な調査を行いまして、
- 普段からどんな食事をしているかをチェック
- 燃え尽き症候群のレベルをチェック(Bergen Burnout Indicatorを使用)
ってふたつのポイントを調べた上で、両者の関係性を調べてみたんだそうな。食事の健康レベルは「北欧の栄養ガイドライン」をベースににしていて、
- 健康的な食品=野菜、ナッツ・種子類、豆類、低脂肪乳製品など
- 不健康な食品=砂糖入り飲料、赤身肉や加工肉、アルコールなど
みたいに分類しつつ、さらには参加者の体型、血液サンプル、身体活動レベル、自己申告によるストレスと不安などもチェックしたとのこと。その結果がどうだったかと言いますと、
- 燃え尽き症候群のレベルが高い参加者は、普段の身体活動が少なく、睡眠の質が低く、不安のレベルが高く、抑うつ症状が強かった(そりゃそうですな)
- 燃え尽き症候群のスコアが低かった参加者ほど、健康的な食品(特に低脂肪乳製品、野菜、果物、ベリー類、鶏肉)を多く食べていた
- 1日に1〜4種類の不健康な食品を摂取している参加者には燃え尽き症候群のスコア上昇が見られた
だったそうです。予想どおり野菜や果物をたくさん食べている人は、仕事での燃え尽きに強い傾向があったらしい。まー、あくまで小規模なうえに横断研究なので、そこまでうのみにはできないものの、健康食が燃え尽きに効く可能性はあるよなーとは思いました。
5日間のガチガチなマインドフルネス・プログラムでメンタルは改善するか?
「無(最高の状態)」でもマインドフルネスを推奨しておりますが、デンマークで行われた新しい実験(R)でも、
- 5日間のマインドフルネスのリトリートがめちゃいいかも!
みたいな結論になってました。リトリートってのは「自宅以外のところに引きこもって、朝から晩まで徹底的にマインドフルネスのトレーニングをする」というスパルタンな手法のことです。これを5日間やったらどうなるのか、と
これは中程度のストレスに悩む大学生を対象にした試験で、55名(平均年齢31歳)の男女を、以下の治療法のいずれかに無作為に割り付けたんだそうな。
- マインドフルネス・リトリート(屋内)
- 屋外でのマインドフルネス・リトリート(屋外の自然環境で実施)
- 介入なし(コントロール)
ここで使われたのは「マインドフルネスストレス低減法」にもとづいたトレーニングで、本来は8週間のプログラムなんですけど、本研究では5日間での効果を見たわけですね。
すると、全体にどんな違いが出たかと言いますと、
- 主観的なストレスについては、グループ間の差はなかった
- セルフコンパッションについては、トレーニングの後のグループ差は見られなかったが、3カ月後の追跡調査ではマインドフルネス・リトリートを行ったグループは、セルフコンパッションのレベルが中程度に高かった
- なにもしなかったグループと比べて、リトリートを行ったグループはマインドフルネスのレベルが高かった(まぁ当然ですね)
みたいになります。マインドフルネスのリトトレーニングは5日間ぐらいじゃダメで、もっと長期にやるべきなんですかねぇ。
まぁこれは小規模なパイロット試験につき予備的な結果でしかないですが、「もしかしたらセルフコンパッションの長期改善には効くかも?」ぐらいにお考えください。
ダマスクローズが不安・抑うつ・ストレスの改善に役立つ?
ダマスクローズって知ってます? 私は知らなかったんですけど、バラ科のアロマ系植物で、昔から「不安に効く!」「ストレスに効く!」とされてきたんだそうな。
で、このたび「ダマスクローズは実際に意味があるのか?」を調べたメタ分析が出まして(R)、32のRCTをまとめてくれておりました。すでに、こんなに効果の検証が行われてるアロマだったとは知らなんだ。
この分析は、中程度の鬱病、不安、ストレスを抱える18~65歳の成人を対象に、「ダマスクローズの投与(アロマセラピーまたは経口摂取)をしたらどうなるか?」を調べたもので、
- 不安(21試験)
- 鬱病(7試験)
- ストレス(4試験)
って内訳になっております。そこでどんな結果が出たかと言いますと、
- ダマスクローズを使うことで状態不安(特定の場面やイベントに不安が起きること)が改善される可能性がある(効果量は大だがエビデンスの質は非常に低い)
- ダマスクローズを使っても、特性不安(ストレスがかかると不安になる傾向)は改善されない(エビデンスの質は非常に低い)
- 経口摂取ではなくアロマセラピーを使った試験のほうが統計的に有意な効果が認められている(効果量大)
- ダマスクローズを使うことで、鬱病(効果量大、中程度のエビデンス)およびストレス(効果量は大だがエビデンスの質は低い)が改善されるかも
みたいになります。全体的に見ると、まだまだ証拠としての質は低いながらも効果の見どころはありそうだなーってとこじゃないでしょうか。んー、これなら自分の体で実験してみる価値はあるかなぁ……。