ブランドや企業の評価の高さはアレで決まるのではないか?という話
「ヒューマン・ブランド」って本を読みました。コンサルタントのクリス・マローンと社会心理学者のスーザン・T・フィスクの共著で、フィスクさんは「社会的認知研究」で有名な先生ですね。
本書は「評価が高いブランドや企業、商品はなにが違うの?」ってところを調べたもので、すごーく大きく言うと、
- ブランドや商品の成功は「温かさ」と「有能さ」の2つの軸で決まる!
みたいになります。「温かさ」と「有能さ」は社会心理学で使われる定番の概念で、私たちが他人を評価する際は、おもに「温かさ」と「能力」を参考にすると考えるんですよ。
で、著者チームは「『温かさ』と『有能さ』の両方を兼ね備えた企業がほど成功を収めている!」と主張してまして、上記2つの概念を以下のように説明してます。
- 温かさ:社会的にうまくやっていけそうかどうかを示す尺度。「幸せそう」「親しみやすい」「好感が持てる」「信頼できる」「正直である」「誠実である」などが挙げられる
- 有能さ:目的や計画を実行する能力の高さを示す尺度。「スキルがありそう」「知的っぽい」「熟練している」「決断力ありそう」などが挙げられる
これらの2つがどっちも高いブランドや商品ほど「すばらしい」と判断されやすく、その結果として業績もよくなるのではないか?ってのが本書のキモですね。
では、「温かさ」と「有能さ」の濃淡によってどのように印象が変わるのかと言いますと、
- 温かさ + 有能さ = 感嘆や誇りの感情を生み、「ひきつけられる」「接触する」「同盟を組む」などの行動を引き起こす
- 冷たさ + 有能さ = 羨望や嫉妬の感情を生み、「義務感をともなう接触」「妨害行為」などの行動を引き起こす
- 温かさ + 無能さ = 同情や哀れみの感情を生み、「強引な手助け」「社会的な放置」などの行動を引き起こす
- 冷たさ + 無能さ = 軽蔑や嫌悪の感情を生み、「拒絶」「忌避」などの行動を引き起こす
みたいになります。これらの認識は個人だけでなくブランドや企業にも適用されており、私たちがその商品に金を払うかどうかを左右しているのだ!ってことですね。いやー、この分類はメチャクチャ使えますなー。
ちなみに本書では、現代ではテクノロジーと情報のアクセス増加がすさまじいので、「顧客はブランドや企業の『温かさ』と『有能さ』を瞬時に判断する力を備えた」し、その力は「今後数十年にわたって増大し続ける」と主張しておられます。
つまり、商売を成功させるためには、「温かさ」と「有能さ」をどのように認識されているかを考えねばならないのだ!ってことですね。事実、本書では「人々は温かみがあり有能だと認識したブランドやビジネスによりロイヤリティを持つ!」って研究も紹介されてまして、確かにそうかもなーとか思いました。
では、このフレームワークをどう活かすかってことで、著者チームはこんなガイドラインを示してくれてます。
- ステップ1. 率直なフィードバックを求める:自分のビジネスに対して人々がどのように感じているかを顧客やそれ以外の人へダイレクトに尋ねる。この点については、たいていの人は包み隠さずに印象を伝えてくれることが多い。
- ステップ2. 変化を受け入れる:みんなに正直な印象を尋ねると、わりとみんな厳しいことを言ってきがちなんだけど、その意見を受け入れて改善するフェーズ。耳を傾けてもらえたと感じれば、厳しい批評家が最も忠実なファンになることも少なくない。
- ステップ3. 根本的な優先順位を変える:永続的な変化をもたらすために、道を踏み外した目標や優先順位を検証して調整する。たとえば、「短期的な株主価値に過度に焦点を当てていた」ことに気づいたら、「株主、顧客、従業員など、複数のステークホルダーの価値に応じた、長期的でバランスの取れたアプローチ」へシフトする。
ってことで、雑にまとめると「ブランドや企業はより誠実な印象を育んで維持したほうがいいよ!」ってことで、当たり前っちゃ当たり前の話ではあるんですが、ちゃんと社会心理学をベースにしたフレームワークとして提示してくれてるのがありがたいっすねぇ。これはなかなか実用性が高いのではないかと。