「肉を食べないとメンタルが悪化するのでは?」って説をガッツリ調べたメタ分析の話
昔から「肉を食べないとメンタルが悪化するのでは?」って考え方があるんですよ。これはいくつかの観察研究で報告されてきた話で、当ブログでも過去に「ベジタリアンで鬱の発症リスクがあがる……かも」みたいなデータを取り上げております。
ただ、この説についてはわからないことも多く、他方では「ベジタリアンでもメンタルには問題ない!」みたいな報告もチラホラ出てたりするんですよ。「肉断ち=メンタルに悪い」説がどこまで正しいかは、まだ謎があるわけっすね。
が、そこで新たに行われたメタ分析(R)は、「肉の摂取ってメンタルに良いの?悪いの?」をガッツリ調べた内容になっていて、過去に出た類似の報告よりも信頼がおけそうでありました。
このメタ分析は、「肉を食べる人と食べない人のメンタル」について調べた先行研究から20件をピックアップしたもので、肉を食べる人157,778人と、肉を食べない人13,259人を対象にしてます。そのうち8件の研究は米国または北米の人で、11件は米国以外の国( ヨーロッパ、アジア、オセアニア)だったとのこと。参加者の年齢は11~105歳までに広がっております。
また、データの質は全体的にそこそこで、質が高いと判断されたものが3つ、中程度の品質と判断されたのが6つだったそうな。従来の研究よりも全体の質は高いし、分析の方法も厳密になっててよろしいのではないでしょうか。
では、分析の結果をだだーっとまとめると、以下のようになります。
- 肉を食べる人よりも、肉を食べない人の方が鬱病のレベルが高った(g = 0.216)
- 肉を食べる人は、肉を食べない場合と比べて、鬱病( g = 0.216)および不安(g = 0.17)に苦しむ率が下がる傾向があった
- ベジタリアンと比べて、肉を食べる人は、憂鬱感(g = 0.26)と不安感(g = 0.158)の両方が低かった
- 上述の傾向は、性別には関係がなかった
- 「肉を食べるとメンタルが改善する」って傾向は、研究の質が高ければ高いほど大きくなり、一貫性があることが示された
だったそうです。まぁ数値を見ていただければわかるとおり、全体的な違いは「ごくわずか」なので、「肉を食べてメンタル改善だ!」みたいな話じゃないんですけど、なんらかの差はありそうだと言えますね。
こうなると、「なんで過去の研究とは食い違いがあるの?」ってのが気になりますけど、この問題について研究チームは、
研究の厳密さと質が、一貫性のない知見の最大の原因だと思われる。
とのこと。要するに、ベジタリアンとメンタルの関係を調べた研究ってのは、以下の問題があったらしい。
- 参加者の自己報告でメンタルを調べたデータが多く、医師が診断したデータが意外と少ない
- 食事のパターンも自己申告だったりして、本当に肉を食べていないのかもよくわからない
そのせいで分析の結果がブレブレになりまして、「肉を食べなくても問題ない」って結論が出るケースも増えたらしい。ただし、上述のとおり質が高いデータほど「肉は食べたほうがいいかな……」って方向性にはなってるんで、個人的には今後も肉と魚は摂取していこうと思いました。
ちなみに、このメタ分析では、「なんでベジタリアンでメンタルが悪化するの?」ってとこまでは掘り下げてないのですが、過去に出てきた仮説をまとめておくと、
- 植物性エストロゲンの過剰摂取につながるからでは?
- 十分なオメガ3脂肪酸を摂取できないからでは?
- 肉にふくまれるビタミンB12が摂取できないからでは?
といったあたりが有力なのかなーと言われております。まぁ現時点では因果関係もわからないレベルなんですけど、肉や魚の摂取量が少ない方は頭の隅に置いといてくださいませー。