なぜ大きな目標を設定すると、逆に成功から遠ざかるのか?
「成功したけりゃ大きな目標を設定しよう!」などとよく言われます。定番の方法としては、
- 大きな目標を書き出す
- それぞれのゴールを明確に決める
- ゴールに期限をもうける
- 目標までの道のりを計測する
みたいな感じ。自己啓発書なんかではスタンダードな主張で、わたしもいろいろと試していた時代がありました。
業績が低い企業ほどデカい目標を立てたがる
が、心理学者オーブリー・ダニエルズの「金と時間をムダにする13の仕事術」(http://amzn.to/2uwPqV2)で紹介されている実験によれば、チャレンジ目標を設定しても10%も達成できないので、どんどんやる気がなくなって逆効果だったそうな。このあたりは、「なぜポジティブシンキングには効果がないのか?」で紹介した、大きな目標を思い描くことで逆にやる気が減っちゃうってメカニズムも働いている感じ。
本書には、ほかにもいろいろと「目標設定はムダだ!」って研究が取り上げられてまして、たとえばデューク大学の2011年論文(1)。いろんな企業における目標と成功率の関係を調べた研究で、これによると業績の低い企業ほど大きな目標を掲げているケースが多かったらしい。逆に業績がいい企業ほど大きな目標は立てず、生産性の悪化につながるリスクをできるだけ避けて、現状維持を恐れない傾向が強かったとか。
研究者いわく、
皮肉なことに、変革のリスクに耐える力がない企業ほど、大きな目標を立てる誘惑にかられがちだ。
とのこと。まぁ、業績が悪い企業が一発逆転をねらって、身の丈にあわない目標を立てちゃう気持ちはわかる気がします。
正しく目標を設定するための5つの条件
また、本書には以前に「本当は怖い!『目標設定』における6つの落とし穴」で紹介したハーバードビジネススクールのワーキングペーパー(2)も取り上げられてまして、
- 大きな目標は失敗の素!
- 大きな目標は利益を損なう!
- 大きな目標はモチベーションを破壊する!
- 大きな目標は人間を悪の道に走らせる!
などなど、かなり徹底的にバッサリやっております。
とはいえ、著者も「すべての目標には意味がない!」と言ってるわけではなく、個人の目標と仕事の効率を調べた2003年の論文(3)を引き合いに、正しく目標設定を使うには条件を限定する必要があると主張しております。その条件というのは、
- 目標と自分の間に少しだけしか関係がない
- 自分にとってさほど重要ではない
- あまり具体的すぎず抽象的である
- それぞれの目標が矛盾しない
- 最終的に目指すところが「お金」ではない
といった感じ。「大事な目標を明確に決めろ!」と言いつのる多くの自己啓発書とは真逆の結論ですね。このあたりは2011年のダイエット研究でも似た結論が出てまして、どうにも大きな目標派には分が悪い感じ。ここでのポイントは、あくまでも達成しやすい小さな目標を地味に解消していくってとこで、トヨタ生産方式みたいなイメージですかねー。
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