人類とお肉の長い付き合い「結局、お肉は体にいいのか悪いのか? #1」
パレオダイエットでは「ちゃんとお肉を食べましょう!」と主張してるんですが、しばしば「肉には発がん性が!」や「タンパク質は腎臓にダメージが!」みたいなニュースが流れたりして、とまどってしまうところです。
というわけで、ここでは「結局、お肉は体にいいのか悪いのか?」について、現在のデータの範囲でわかることを見ていこうかと思います。
「人類の主食は肉だった!」わけでないが…
まずは、そもそも人類はどれだけ肉を食べてきたの?という話から。一部のパレオダイエットや糖質制限ダイエット支持者のあいだでは、「人類の主食は肉だった!」みたいな主張も見られるんですが、正直これは暴論だと思われます。
「私たちは今でも進化しているのか?」にもあったように、人類学のデータによれば200万年前のヒト属が肉を食べていたのは間違いないんですが、なにせ野菜やフルーツは痕跡が残りづらいもんで、どの食品が主食だったかは現時点じゃ決められないはずなんですよ(1)。
また、人類の骨を調べた考古学研究(2)によれば、初期のヒト属は小腸よりも大腸のほうが長かったのが、だんだんと小腸が優勢になっていったんだとか。ようするに、ヒトは食物繊維よりも三大栄養素(タンパク質・糖質・脂肪)を消化吸収しやすい方向に進化してきたわけで、かつては葉菜類やフルーツがメインの食料だったのが、少しずつ肉と根菜類に置き換わっていったみたい。
つまり、現時点で人類学のデータから言えることは、
- 基本的に人類はつねに雑食だった
- 少なくともヒトは100万年は肉を食べてきた
- ただし、肉が総カロリーに対して占めていた割合はわからない
ぐらい。人と肉の付き合いが長いのは間違いないものの、細かいところはサッパリわからないわけですね。
狩猟採集民や長寿者にベジタリアンはほとんどいない
というわけで、こんなときは狩猟採集民のデータに頼るのが吉。当ブログでも何度か書いたとおり、狩猟採集民には現代病がほとんど見られないので、健康なライフスタイルのお手本にピッタリなんですな。
で、この問題に関しては、2000年にコロラド大のローレン・コーダイン博士が大規模なリサーチ(3)を行ってまして、229種類の狩猟採集民たちの食事を調べあげております。その結果は、
- とりあえずベジタリアンの部族はない
- 肉の消費量は部族によって大幅に変わる
- ざっくりと平均を出すと、肉のカロリーは総摂取カロリーの半分ぐらい
といったところ。分量に関しては大きなバラつきがありつつも、肉が重要な食材なのは間違いなさそう。
ちなみに、ブルーゾーン(100才を超えても元気なご老人が多く集まる特異な地域)について調べた研究(4)でも似たような結果が出てまして、
- 長寿者の地域にベジタリアンはほとんどいない(カリフォルニア州のロマリンダだけが唯一の例外)
- 全体的には少量から中程度の量の肉を食べる(典型的な西洋食よりは少ない)
といった傾向がある模様。これらのデータを見ると、やっぱり「肉は良くない!」って説には無理が出てきそうな気もします。
まとめ
そんなわけで、前提となる話は以上です。とりあえずは、
- 人類は少なくとも100万年以上は肉を食べてきた。そのため、遺伝子は肉食に適応しているはず。
- 現代病がない狩猟採集民や100才以上の長寿者たちは、みなある程度の肉を食べている。
- といっても肉が主食といえるほど食ってるわけではない。基本は雑食。
の3点をおさえておけばOKかと。まぁ野菜やフルーツだけだと必要な栄養素が不足しがちなのは有名な話で、ヒトの遺伝子が肉を食うように進化してきたのは間違いないように思われます。
では次回からは、なぜメディアではたびたび「肉は体に悪い!」ってニュースが流れるのかについて、実際の病気の発症率などを見つつ見て行きましょうー。
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