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速筋 or 遅筋?筋繊維のタイプごとにトレーニング法を分ける必要はあるの?と問題



マニアックな話で恐縮ですけど、「筋繊維の違いによってトレーニング法を変えたほうがいいんじゃない?」って考え方があるんですよ。人間の筋肉の繊維にはいくつかの種類がありまして、

  1. タイプ1(遅筋)=疲労に強いが力は小さい
  2. タイプ2ab(速筋)=パワーが大きいがすぐ疲れる

みたいに大きく分かれております。ここでよく言われるのは、2つの筋肉を効率よく鍛えるためには、

  • 遅筋=低負荷でたくさんトレーニングをするとよい
  • 速筋=高負荷で短めのトレーニングをするとよい

みたいな話です(R)。つまり、長距離走のパフォーマンスを上げたいなら低負荷のトレーニングをして、短距離走なら高負荷のほうがいいのでは?みたいな推測が成り立つわけっすね。


ただ、この考え方が正しいのかどうかはイマイチよくわかってなかったんですけど、近ごろビクトリア大学などの研究チームが良いレビュー(R)を出してくれて勉強になりました。


これは過去の筋トレ系論文から優良なものを選んでまとめたもので、以下のような基準で11個の文献が選ばれております。

  1. 高負荷トレーニング(1RMの60%より上)と低負荷トレーニング(1RMの60%以下)の違いをくらべている
  2. 速筋と遅筋の変化の違いをちゃんと比較している

でもって、レビューの結果わかったポイントについて、まず研究チームの結論を引用してみましょうー。

いくつかの研究では、低負荷トレーニングのほうが遅筋が発達するという結果が出ている。同じように、高負荷トレーニングのほうが速筋が増えるとのデータもある。

しかし、全体的に文献をチェックしてみると、大半のデータは結果があいまいだ。結論を言えば、現時点ではトレーニング法の種類によって異なる筋繊維が育つことを示すだけの十分な証拠はない。

ってことで、どうもハッキリしたことが言えないみたい。過去のデータを見てみると、ちゃんと2パターンのトレーニングを比べたトレーニングがとても少ないので(たとえば1RM15%以下ぐらいの軽すぎる負荷を使ってたりする)、どうにも判断が難しいんですよねぇ。


というか近年の研究を見ていると、そもそも「筋繊維ごとにトレーニング法を変えるのがいいの?」って問題設定にそこまで意味があるのか?って気すらするわけです。というのも、

  • 2017年のメタ分析(R)によれば、高負荷だろうが低負荷だろうが全体的な筋肉は同じぐらい育つ(なので、見た目を重視してトレーニングしてる人には意味がない)

  • 2011年のデータ(R)では、CSA1ユニットごとのパワーは筋繊維であんま変わらないって結果も出ている(つまり、パワーリフターみたいな人も、筋繊維ごとの負荷にこだわってもあんま意味がない)

って結果が出てまして、どうも筋繊維ごとに負荷を変えても、ハッキリしたメリットが得られる人って実は少ないのではないか、と。まぁハンマー投げ選手やウェイトリフターのような人であれば、意味があるのかもですが……。




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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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