今週半ばの小ネタ:早食いどこまで体に悪い?ビタミンDでがんは防げる?オメガ3サプリで心臓病は防げる?
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
早食いは血糖値に悪影響が出る?
かつて「早食いは太りやすい」みたいな話がありましたけど、新たに「早食いって血糖値にも悪影響なんじゃない?」って研究(R)が行われておりました。確かに、早食いは2型糖尿病とメタボとの相関があるとは昔から言われてきたんで、こういうった疑問が出るのも当然と申しますか。
これは無作為化のクロスオーバー試験で(つまり実験としてはゆるい)、19名の健康な女性を対象にしたもの。みんなに血糖値のモニタリングシステムを着けてもらいつつ、
- 早食い=1食あたり10分
- 遅食い=1食あたり20分
の2パターンで、朝昼晩の食事をそれぞれ食べてもらったそうな。主要アウトカムは食後の血糖値反応で、血糖変動と食後血糖増分曲線下面積(IAUC)も見てます。
でもって結果は想像どおり早食いの負けでして、朝昼晩の3食すべてにおいて血糖値が高くなり、夕食時のみIAUCが高くなり、血糖変動性も高かったんだとか。んー、やはり早食いは糖の代謝によくないんですかねぇと、めちゃくちゃ早食いで有名な私はおののいたのでした。
まー、そうは言っても基本的にそんなに質が高くないテストだし、参加者は食事中に監視されてたわけでもないみたいなんで、「こういう結果も出てるんだなー」ぐらいに受け止めていただけると幸甚です。早食いが肥満につながる可能性はかなり高いので、個人的には今回の結果にも納得ですが。
ビタミンDでがんの発症率や死亡率は下がる?
このブログでは死ぬほどビタミンDについて取り上げてますけど、新たなメタ分析(R)では「ビタミンD補給ががんの発生率および死亡率に及ぼす影響」を調べてくれてます。過去の観察研究なんかでは、ビタミンDの血中濃度が大きい人ほどがんにかかりにくい傾向が出てたりして、それなりに有望なんじゃないかと言われたんですよ。
で、このメタ分析には、4年〜9年をかけた10件のランダム化比較試験がふくまれていて、すべての試験(81,362人)でがんの発生率が調べられ、7つの試験(77,653人)でがん死亡率が調べられております。
すると、結果はわりと残念な感じでして、
- 全体的な解析では、がんの発生率はビタミンDとプラセボで同じぐらいだった(9.16% vs. 9.29%)
- がん死亡率もビタミンDとプラセボでほとんど変わりはなかった(2.11% vs. 2.43%)
- サブグループ解析では、がん既往歴なし、ビタミンDの追加使用、カルシウムサプリの使用といった要素を満たすグループでは、ビタミンDのサプリによるがん死亡リスクの低下と相関していた
- すべての研究でバイアスのリスクは低かった
という感じになってます。サブグループ解析で良い結果が出てるような感じですけど、これは1つの試験のみのデータにもとづいてるんで、あんまうのみにしないほうが良さげ。また、がんの種類によっても当然反応は違うでしょうから、そこらへんもご注意ください。
とはいえ現時点では、がんについてはビタミンDは見込みがなさそうだなーって感じが濃厚ですかねぇ。
オメガ3サプリで心臓や血管の病気は防げるのか?
オメガ3脂肪酸(魚によく入ってるやつね)といえば「血液がサラサラに!」ってイメージがありまして、いかにも心臓病のリスクを減らしてくれそうな気がするわけですけど、果たして実際のところはどうなのよ?ってのを調べたメタ分析(R)が出ておりました。
これは、86の無作為化比較試験(162,796人)のメタ分析で、魚や植物由来のオメガ3の摂取量を増やすと、死亡率や心血管系の病気に影響が出るのかを検討したものです。試験期間は12ヵ月から88ヵ月で、大多数はサプリメントとプラセボを比較しております(一部には通常の食生活と食事療法を比較したものもあり)。
1日のオメガ3の投与量は0.5グラムから5グラム以上(19の試験で少なくとも3グラムを使用)で、どんな結果が出たのかと言いますと、
- オメガ3のサプリを飲んでも、全死亡率、心血管死亡率、心血管イベント、脳卒中、または不整脈にほとんど影響を及ぼさなかった
- 冠動脈性心疾患死亡率、冠動脈性心疾患イベント、中性脂肪の数字はわずかに減少したが、それを目的にサプリを飲むべきかと言われれば微妙な感じ
- 植物由来のオメガ3サプリを飲むと、心血管疾患イベントや不整脈のリスクがわずかに減少したが、死亡率や冠動脈性心疾患イベントのいずれの指標も減少させなかった
という残念な結論になってます。なかにはちょっとだけ数値が変化したのもあるんだけど、全体的に見れば「心臓や血管の病気予防でサプリを飲む意味はあんまないかなーってとこですね。やっぱ普通に魚を食べ続けるか……。