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もっと集中したい? 気が散っちゃうのを治したい? それなら歳を取るといいかもよ?みたいな話


 

歳をとると脳が衰える!みたいな考え方はよくありまして、私もめっきり記憶力と情報処理スピードの低下を感じております。

 

 

が、近ごろジョージタウン大学などが発表した研究(R)は、「私のようなオッサンでもまだまだ年齢とともに改善する能力があるのだ!」って話になってて希望がわきました。

 

これは58~98歳の成人702人を対象にした観察研究で、

 

  1. 注意の喚起
  2. 注意の定位
  3. 実行抑制

 

という3つの脳機能に関する加齢の影響について調べております。この年齢に焦点を当てたのは、加齢にともなって認知機能が最も変化しやすい時期だからなんだそうな。いずれも耳慣れない脳機能かもしれませんが、ざっくり説明すると以下のような感じです。

 

  • 注意の喚起=ものごとへの注意を高め、入ってきた情報に素早く対応する能力


  • 注意の定位=脳の別のエリアに働きかけて、認知のリソースを切り替える能力


  • 実行抑制=気が散る情報や矛盾する情報を無視し、重要なことにだけ集中する能力

 

いずれも日常的に欠かせない能力ばっかりでして、新しいことの学習や練習にも必要っすね。研究チームいわく、

 

私たちは、この3つの能力を常に使っている。例えば、車を運転しているとき、交差点に近づくと「注意の喚起」が発生する。歩行者などの予期せぬ動きに注意を移すときには「注意の定位」が起き、鳥や看板などの気が散るものから意識を逸らして運転に集中できるのは「抑制機能」のおかげだ。

 

とのことで、これは確かにめちゃくちゃ大事な能力ですなー。

 

 

で、この実験では注意ネットワークテスト(ANT)を使って参加者の脳機能をテスト。コンピュータに表示されたターゲットに対し、参加者がどれだけ反応できるかをチェックしたんだそうな。

 

 

すると、結果は意外なものでして、

 

  • 注意の喚起については、歳を取るごとに低下していく

  • しかし、70代半ば以降でも「注意の定位」と「実行抑制」の効率は改善する(可能性がある)

 

だったそうです。いままでは上記3つの機能も年齢とともに低下すると言われてたんで、これは興味深い結果ですねー。

 

 

研究チームいわく、

 

これまで、注意力や実行機能は加齢とともに低下すると広く考えられてきたが、小規模な研究ではそのような考えに疑問を投げかけるような結果が得られていた。

 

今回の大規模な研究の結果は、これらの能力の重要な要素が加齢に伴って実際に向上することを示している。これは、私たちが生涯を通じてこれらのスキルを単純に練習しているからだと思われる。

 

とのこと。要するに、「注意の定位」と「実行抑制」ってのは、生涯にわたって日々の暮らしで定期的に使い続ける能力なので、そのおかげで向上し続けるんじゃないの?って考え方ですね。

 

 

まー、まだデータが少ない話なので、もうちょい様子を見ないとなんとも言えないものの、

 

  • 重要なことに選択的に集中する

  • 気を散らさず大事なことに注意を向ける

 

っていう2つの能力については、日々の意識的に使い続ければ、加齢による神経の衰えを上回ることができるかもしれないってのはうれしい結果じゃないでしょうか。

 

 

その他にも、近年は加齢について希望のあるデータも増えてまして、

 

 

 

 

みたいな報告もありますからね。とりあえず私も、日常的に脳に適切な負荷をかけたまま歳を取りたいもんだと思った次第です。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。