マギル大学の神経科学者が語る「いつまでも若々しくいる方法」#3「もの忘れと幸福編」
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「いつまでも若々しくいる方法」の続きでーす。このエントリでは、マギル大学の神経学者ダニエル・レヴィティン博士の「サクセスフル・エイジング」の概要をチェックしていて、前回は「働き方」と「社会性」ってポイントを見てみまして、今回は最終回として「働き方」や「社会性」の話を見ていきましょうー。
加齢による「もの忘れ」に立ち向かうには?
まずは、加齢に関する問題の定番である「もの忘れ」について。歳をとると細かいことを忘れちゃうケースが増えるのは周知の事実ですが、果たしてこの問題はどうすべきなのか?ってところですね。
- 歳をとって忘れっぽくなった!はどういう現象か?:歳をとると忘れっぽくなるが、これはちょっとした記憶のずれが原因であり、必ずしも不吉な病気兆候ではない。というか、40歳を過ぎたあたりから、人間の脳は、外部から情報を取り入れるよりも自分自身の考えを深めることに時間を割くようになる。そのため、「用があって冷蔵庫を開けたのに、何をしたいのか忘れた」みたいな状態が起きやすくなる。
これは、加齢にともなう正常な変化の一部であり、何か不吉なことが起こる前兆ではない。実際、80代、90代の成人でも全く記憶に問題がない人も少なくない。
- 人の名前が覚えられなくなったらどうする?:歳をとって人の名前を覚えられなくなった場合は、「情報を積極的に活用する」というポイントさえ覚えておけば問題ない。具体的には、「こんにちは、田中さん」「田中さん、最近おもしろい本はありました?」といったように、ことあるごとに名前を挟みこんでいくだけでも記憶量が50%アップする。
- マインドフルネスも記憶増強に役立つ:歳をとって細かいものごとを覚えられなくなった場合は、いま起きていることにより集中することで、重要なことをより正確に記憶できる。具体的には、「マインドフルネスを実践する」「マルチタスクをやめて常にモノタスクにする」などがある。
基本的に、人間は「最も注意を払ったものを最もよく覚えている」傾向があるため、マインドフルに注意を向けたものごとほど記憶に刻み込まれることになる。
- ルーティンの力を使え!:家の鍵は必ず同じポケットに入れ、財布は別のポケットに入れるように決める。「家を出るときにいつも持っている5つのもの」をチェックリストにしておく。このように、細かいことは徹底的にルーチン化しておくのが吉。
加齢による変化に関して知っておくべきこと
続いて、加齢によって人間にはどんな変化が起き、その変化にどう対処するかってポイントです。歳をとったら幸福度は下がるのか?みたいな問題ですね。
- 遺伝はどこまで加齢に影響するか?:遺伝は年の取り方を左右するが、その影響はわずか7〜50%にすぎない(重い遺伝性疾患にかかっているケースを除く)。つまり、私たちがコントロールできることはたくさんある。
- 歳をとると痛みは増加するか?:歳をとると体の痛みが悪化すると思われがちだが、実際にはそんなこともなく、おおよその慢性痛は50代〜60代でピークを迎えた後は、70代以上から減少していく。
- 歳をとったら脱水に注意!:歳をとると脳の「渇きセンサー」機能が下がり、脱水症状のリスクが高まる。そのため、酒を飲む時はアルコール飲料1本につきグラス1杯の水を飲むのが吉。また、脱水状態にあるときはパンやドライフルーツを避けること(パンやドライフルーツは脱水状態をさらに悪化させてしまう可能性がある)。
- 高齢になったら重要な決断は午前に!: その結果、60歳を過ぎた成人は、記憶力、問題解決力、空間的知性、推論、微細な運動調整、運動能力など、さまざまな神経心理学的テストでパフォーマンスの差が現れ始めます。午前中のテストでは正常ですが、午後の半ばから後半にかけてのテストでは、40歳や50歳の人と比べてパフォーマンスが低下します。70歳を過ぎると、その差はさらに顕著になります。
このことから、次のようなことが言えます。経済的なこと、健康的なことなど、重要な決断は正午前にしましょう。思考力が高まります。また、転倒する可能性のある運動をするなら、頭が冴えている日中にしましょう。会社には朝早く出勤し、午後は休む。少なくとも重要な仕事は午後や夜にはしない。
- 幸せのピークは82歳:一般に歳をとると肉体が衰えて不幸になるというイメージがあるが、このような考え方はエイジズム(高齢差別)につながってしまう。しかし、多くの研究データを見てみると、多くの高齢者は年齢を重ねるごとにどんどん幸せになっていき、幸せのピークは82歳と言われている。そのため、もし社会全体でエイジズムに立ち向かうことができれば、この数字をさらに10年、20年先に進められる可能性がある。