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今週半ばの小ネタ:長寿に効く運動? 光はニキビを治療に効く? 強い光で睡眠改善?

Summary


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

  

 

 

テロメアが伸びる運動、伸びない運動

運動のメリットと実践法は「不老長寿メソッド」にさんざん書いてまして、ブログでもHIITをやろうぜ!と何度も言っております。でもって、新しい研究(R)では「どんな運動をすればテロメアが長くなるのか?」って床を調べてくれてました。

 

 

テロメアってのは、こちらも「不老長寿メソッド」に書いたとおり「遺伝子の保護キャップ」みたいなもので、加齢とともに減少し始めることがわかってたりします。でもって、テロメアが長い高齢者は、テロメアが短い人に比べて血管が老化しづらいって報告も多く、心臓病や脳卒中などのリスクが少ないと考えられてるんですよ。

 


さて、この研究では、124人の男女を集めて以下のような調査をしたんだそうな。

 

  1. 参加者を、有酸素運動、HIIT(4×4のインターバルプログラム)、筋トレ(8台のマシンエクササイズ)、コントロール群(運動しない)の4グループに分ける

  2. 運動をするグループには、全員に1回45分間の運動を週3回ずつ、26週間にわたってやってもらう

  3.  みんなのテロメアの長さを調べる

 

すると、最終的な結果はこんなふうになりました。

 

  • コントロールグループと筋トレグループは、テロメアの長さに変化はなかった

  • 有酸素運動グループとHIITグループの人たちは、テロメアの長さが「2倍」も増加していた(テロメラーゼの活性も高かった)

 

というわけで、ランニングと高負荷運動をしている人たちのみ、テロメアが伸びる効果が見られたらしい。筋トレに違いが見られなかったのが残念ですが、やっぱ心肺機能への負荷が必要なのかな……。

 

 

まぁ、老化の原因はテロメアの長さだけではないので、有酸素運動やHIITだけでOKって話じゃないし、ぜひ筋トレも合わせてやっていただければとは思いますが、とりあえずテロメアについてはこんな感じで。

 

 

 

ニキビにレッドライトの治療は効くのか?

ニキビは対策が難しい症状で、一般的には抗生物質を使って治療するのが定番でしょう。ただし、抗生物質は耐性を引き起こす可能性もありますんで、その他の治療法も押さえておくほうがよいわけです。

 

 

そのなかで「これは見どころがあるのでは?」と言われるのが「レッドライト治療」で、いわゆる光治療と呼ばれるジャンルでして、17~72Joules/cm2mの光を当ててニキビを治療しようとするんですよ。

 

 

そこで新たに出たメタ分析(R)は、13のRCTをもとに「レッドライトがニキビに良いか?」を調べてくれてまして、非常に参考になりました治療期間は3~12週間のあいだで、サリチル酸、ドキシサイクリン、過酸化ベンゾイル、他の波長の光治療などとレッドライトの違いを比べたうえで、皮膚の面ぽう、膿疱、丘疹、紅斑の量で効果を測定したんだそうな。

 

 

その結果を端的にまとめると、こんな感じです。

 

  • レッドライト治療は、ニキビ全般またはニキビに近い皮膚の炎症のいずれにおいても、他の治療と比べて優れているわけでも、劣っているわけでもない

  • レッドライトにはこれといった副作用も報告されなかった
  • 研究間のバイアスのリスクは主に低かったものの、レッドライトの個人差はわりと大きいと考えられる

 

ってことで、レッドライトは従来の定評ある治療法と同じレベルの効果を持つようで、お悩みの方は試す価値があるのではないか?って印象ですね(個人差が気になりますが)。

 

 

 

眠れない起きれない!を強い光が解決する?

さて、こちらも光治療のお話(R)ですが、ニキビではなく睡眠のトラブルに使われるほうの光治療を調べたデータになります。

 

 

ここで調べたのは「睡眠覚醒相後退障害(DSWPD)」の問題で、簡単に言えば「すぐに眠れない!」や「朝に起きられない!」といった問題を意味しております。一般的な時間に寝起きできない状態のことっすね。思春期や青年期に最も多いトラブルで、これは体内リズムのズレがもっとも起こりやすい世代だからでは?とか考えられております。

 

 

で、この問題については、「10,000ルクスぐらいの強い光を浴びると『眠れない起きれない!』を解決できるのでは?」と昔から言われてきたんですが、その有効性や標準的な実施方法についてはコンセンサスがなかったんですよ。そこで今回の系統的レビューでは、以下のような分析をしてくれてます。

 

  • 午前中にのみ光療法を使い、不眠症またはDSWPDの参加者140名(21~65歳)への効果を調べた5つの研究を評価
  • 研究のサンプルサイズは20人から39人で、介入期間は15日から84日、光の強度は225から10,000ルクス(日没・日の出は約400ルクスで、曇りの日は約1,000ルクス)、照射時間は20分から60分だった

 

近ごろはAmazonでも光治療マシンを取り扱ってますが、果たしてこれぐらい強い光は睡眠の改善に効くのかを調べてくれたわけですね。

 

 

すると、結果は以下のようになりました。

 

  • すべての研究において、光治療で睡眠時間が進む傾向を示したが、光治療をしてない人と比べて有意ではなかった(ほとんどの研究でバイアスのリスクは低い)

 

  • 光の強さや照射時間、介入期間、評価方法が全然違うし、サンプル数も少ないので、光治療の真の効果や最適な方法を決めるのは無理

 

ということで、光治療については、「うーん、なんとなく効果はあるんだろうけど、ちゃんとした使い方が難しいんだなぁ……」といった印象でしょうか。「眠れない!」とか「起きれない!」って問題にお悩みの方であれば、ダメ元で試してみてもいいとは思いますが。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。