今週末の小ネタ:IQが高い人はなぜ病気になりにくいのか? 高学歴のパートナーがいる人も健康に? テレビをつけたままで寝るとヤバいのはなぜ?
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
IQが高い人はなぜ病気になりにくいのか問題
IQが高い人は老けにくいって話が昔からありまして、新しいデータ(R)も「IQと健康」の関係性について調べてくれておりました。
これはエジンバラ大学などの研究で、1936年にスコットランドで生まれた男性33,536人、女性32,229人が対象。みんなに11歳のときに知能テストを受けてもらい、それを2015年12月時点での死因データと比較したんだそうな。これまでも似たような研究はあったんですけど、数が最大級なのと、68年間も追跡調査を行なっているのがナイスなポイントですね。
でもって、みんなのIQと、脳卒中、癌、呼吸器疾患、認知症などの発生率を調べたところ、
- 子供のころに知能が高かった人ほど、79歳までの死亡リスクが低い傾向があった
- 具体的には、子供のころにIQテストの点数が高いと、呼吸器の病気による死亡リスクが28%、心臓や血管の病気による死亡リスクが25%、脳卒中による死亡リスクが24%低下した
- 喫煙に関連する癌(特に肺癌と胃癌)、消化器系疾患、認知症による死亡についても、子供の頃のIQが高い人ほどリスクが低くなる傾向が見られた
だったそうです。ってことで、従来の知見どおり「IQが高くなるほど死亡リスクは低い!」って傾向が再び確認されたわけですが、ここで得られた新たな知見としては、
- 知能が死亡率の違いに及ぼす影響については、特に喫煙の有無が重要な要素なのかも
ってのが示唆されたところでしょうね。研究チームいわく、
幼少期のIQは定番の健康リスク要因と関係があり、喫煙と経済的な差が特に重要な可能性がある。
とのこと。もちろん、このデータでは、喫煙と収入を調整しても有意な相関が残ったみたいなんで、タバコだけで死亡率の差は完全には説明できないものの、まぁ「IQが高い人ほどお金があって健康なライフスタイルを送りがちだから寿命が伸びる」ってことなんでしょうな。
高学歴のパートナーがいる人も健康になりやすい説
上述のとおり、知能と健康のあいだに一定の相関が存在するのは間違いないところ。でもって新しい研究(R)では、「高学歴のパートナーがいる人も健康になりやすいかもよ!」って話になってておもしろいです。
これはウィスコンシン縦断調査っていう大規模な調査データを使ったもので、回答者の健康状態、結婚生活、配偶者の学歴などを半世紀以上にわたって調べた内容になっております。そこでどんな傾向が見てとれたかと言いますと、
- 教育レベルが高いパートナーと結婚すると、より健康レベルが上がりやすい。その効果の大きさは、本人が高い教育を受けた時と同じレベルだった
- 特に高学歴の夫を持つ女性は、健康面で恩恵を受けやすかった(この点は、1960年代〜1970年代の時代を反映していると思われる)
- その他にも、楽観性と幸福感が高いパートナーを得た人ほど、健康になりやすい傾向もあった(幸せな人と付き合うと活動的になるからだと思われる)
- 楽観的な人と結婚した人は、認知症や認知機能低下のリスクが低くなる(楽観的な人ほど健康的な環境を作るのがうまいからだと考えられる。あと、楽観的な人はポジティブな性格なので、おかげ夫婦の争いが少なくなるのだと思われる)
だったそうです。学歴の高さは本人の健康レベルを高めるだけでなく、パートナーにも恩恵をおよぼすかもしんないわけですね。まぁたいていの人はパートナーの影響を受けるから、当然の結果と言えるかもしれませんが。
研究チームいわく、
今回の結果は、誰と結婚しているか、そしてその人がどれだけの教育を受けているかが、健康に重要であることを示している。これは、教育が個人にとって価値あるものであるだけでなく、共有可能な資源でもあることを示すさらなる証拠だろう。
有意なクロスオーバー効果が観察されたということは、教育は個人の健康増進に役立つだけでなく、周囲の人々、特に親密な関係にも具体的な利益をもたらすということだ。このことは、教育の重要性を強調するとともに、それが社会に与える恩恵が想像よりも大きい可能性を示している。
とのこと。というわけで、教育の大事さをあらためて痛感させられますが、同時に楽天的で幸福レベルが高い人も相変わらず強いので、そちらも大事にしておきたいところです。
テレビをつけたままで寝るとヤバいのはなぜか?
睡眠中でも人間は他人の声を聞いているぞ!ってデータ(R)が出ておりました。
これはザルツブルク大学などの研究で、17人の男女に協力してもらい、
- 眠ったまま「親しい人の声」を聞く
- 眠ったまま「知らない人の声」を聞く
っていう2パターンの状態で寝てもらい、そのあいだの睡眠との動きをチェックしたんだそうな。すると、2パターンの声によって睡眠中の脳は反応が大きく異なりまして、
- 「親しい人の声」を聞いた場合は、特に脳波には目立った変化が起きなかった
- 「知らない人の声」を聞きながら寝た場合は、深い睡眠に入っているときでも、脳が「なにか異変が起きているぞ!」って警戒状態に入っていた(K複合体と呼ばれる波形が出まくった)
って感じだったそうです。つまり、睡眠中でも人間の脳は「知らない人の声」に敏感に反応して、「ちょっと注意した方がいいかもしれないぞ!」とアラームと鳴らし続けてるわけですね。やっぱ人間の脳は優秀ですねぇ。
この話から考えると、おそらく「テレビやラジオを聞きながら眠りに入ると、深い睡眠の間も脳が警戒状態に入っちゃってよくないだろう」と推測できるわけです。寝ながらテレビを見るなとはよく言われてきたことですが、それが「脳の警戒信号のせいだ!」と言われると、なんか納得できるとこっすね。
ちなみに、この実験では、「知らない人の声」をずっと聞かせた場合は、脳が「あ、これは別に異変じゃないんだな」と判断して、警戒信号を解いてくれたそうな。そう考えると、聞き慣れた落語の音源などを聞き続けるぶんには、そこまで悪影響じゃないのかもしれんですな。