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「未来を予想するのがうまい人」「意思決定がうまい人」を判断する2つの質問とは?


  

未来を予想するのがうまいのはどんな人だ選手権!」みたいな調査(R)が開催されておりました。

 

 

このイベントは、こないだ当ブログで「シンク・アゲイン」って著作を紹介したアダム・グラント先生が手がけたもので、オンラインで参加者を募って、未来にどんなことが起きるかを予想してもらったんだそうな。参加者が予想した出来事は、

 

  • ブラジルでは7月までに何人のCOVID感染者が確認されるか?
  • ジェフ・ベゾスとリチャード・ブランソンのどちらが先に宇宙に行くか?
  • 2021年のオリンピックで女子サッカーの金メダルを獲得するのはどの国?
  • ビットコインの価格は今後どうなる?

 

みたいなものでして、だいたい2,000人以上の人が25種類の予想を立てたとのこと。

 

 

また、みんなに予想してもらう前には、各自のマインドセットモデルを判断する質問に答えてもらったらしい。マインドセットモデルについては「変化が激しい現代の必須スキル「考え直す」を身につけるには?」を参考にしていただければ幸いですが、簡単に言えば「自分が無意識のうちに使っている思考スタイル」のことで、これによって多くの人は人生の正しい選択ができるかどうかが決まってるのでは?」とグラント先生は考えてるんですね。

 

 

具体的にどんなマインドセットモデルが想定されているかと言いますと、

 

  1. 伝道師:自分の考えを広めることに必死で、自分の考えを変えることは道徳的な弱さの表れだと捉える。

  2. 検察官:議論に勝つために他人の考えを攻撃するタイプで、あいてに説得されることは敗北を意味する。

  3. 政治家:他人の支持を得るために承認と同意を求め、コロコロと自分の意見を変える。

  4. 科学者:仮説を立てて実験を繰り返し、新しい真実を発見しては考えを修正していく。

 

という4パターンです。で、このなかでもっとも未来を読むのがうまいのはどのタイプか?ってのを、この調査ではチェックしたわけですね(もちろん、「科学者」タイプが最強だと想定されてるわけですが)。

 

 

また、参加者のマインドセットモデルを調べるにあたっては、以下のような選択肢からどれを選ぶかで判断してます。

 

 

  • 自分の考え方を変える行為とは……

    • 負けを認めることだ

    • 意志の弱さの表れだ

    • 承認を得たいだけだ

    • 真実を探すプロセスだ

    • 記憶力の悪さの表れだ

 

 

  • SNSで私が集中するポイントは……

    • 自分の結論に皆が賛成してくれるかどうか

    • 自分の考えの誤りを指摘する人から学べるかどうか

    • 他人の誤った考え方を指摘できるかどうか

    • フォロワーから大量の「いいね」をもらえるかどうか

 

 

そのうえで、すべてのデータをまとめてみたところ、やっぱり結果は科学者タイプの圧勝。未来の予測がうまい人ほど「自分の考え方を変える行為とは真実を探すプロセスだ」と考えていたし、「SNSで私が集中するポイントは、自分の考えの誤りを指摘する人から学べるかどうかだ」と答えたんだそうな。

 

 

これらの答えを選んだ人たちは、平均して2倍ぐらいの予測精度を保っていたそうで、これはなかなかの違いじゃないでしょうか。さらに、その他の傾向も紹介しておくと、

 

  • 自分の予測を見直す頻度が高い人ほど、精度のスコアはちょっとだけ高くなる傾向があった(r = 0.19なのでかなり弱めですが)
  • 予測の精度が高い人は、平均して1つの質問につき9.5回も予測を更新していた(メンタルが柔軟なんでしょうな)

 

って傾向もあったんだとか。グラント先生いわく、

 

(科学者のように考える)とは、自分の考えを自分のアイデンティティにしないということだ。自分が知らないことを知る謙虚さを持ち、自分の信念を疑う好奇心を抱き、そして自分の仮定に反する証拠や自分の思考プロセスの誤りを指摘する人を探す知的誠実さを持っている。

 

とのことで、まことにおっしゃるとおりですけど、意識しておかないとこの態度を保つのって意外と難しいですよねーとか思いました。

 

 

ちなみに、この調査で使われた質問のうち、もっとも「その人は未来の予測がうまいか?」を確かめるのに役立ったのは以下の2問だったそうです。

 

 

  • 私が真実だと強く信じているのは……

    • 自分自身に忠実なのが重要だ

    • 考えることはみんな一緒だ

    • 頑固さは狭量な心の表れだ

    • 他人の間違いを証明するのは最良の行為だ

 

 

  • 私は自分の政治的見解を以下のように考えている

    • 議論に勝つための道具

    • 検証されるべき直感的な思考

    • 忠誠心の象徴

    • 自分のアイデンティティ

 

 

この2問で「科学者タイプ」の答えを選んだ人は、そうでない人と比べて予測の精度が3倍以上になる傾向があったんだそうな(どの答えが科学者タイプかは一目瞭然なので、あえて答えは書きませんが)。うーん、すごい……。

 

 

ちなみに、この質問で科学者タイプじゃなかった人でも、「この問題は科学者みたいに考えるぞ!」みたいに意図的にマインドセットモデルを採用するだけでも予測の精度は上がるらしいので、お試しいただくといいんじゃないでしょうか。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。