やっぱプロバイオティクスと食物繊維は風邪に効く!……かもしれないよーというメタ分析の話
「腸内細菌のサプリは風邪に効いたりするんじゃないか?」って話が昔からあるんですよね。例えば、ちょっと前の研究(R)を参照すると、
- 母乳育児で育った乳幼児はミルク育児と比べて風邪(正確には呼吸器感染症)の発生率が低い
- また、母乳で育った子供は腸内フローラが健康的であることが多い(病原性の細菌が少なく、ビフィズス菌や乳酸菌が多い)
- 2つの観察結果に因果関係があるとすれば、プレバイオティクス(食物繊維など)、プロバイオティクス(腸内細菌サプリ)、シンバイオティクス(プレバイオティクスとプロバイオティクスを組み合わせたもの)で風邪の予防になるのでは?
みたいな話が考えられまして、わりと可能性がある話かなーとか思うんですよね。
ということで、新しい研究(R)は、過去の「プロバイオティクスと乳幼児の風邪」について調べた15件の無作為化比較試験(RCT)を対象にメタ分析をしてくれてて参考になりました。
ざっくりどんな話かと言いますと、
- 「バイオティックミルク」(プレバイオティクス、プロバイオティクス、またはシンバイオティクスを配合した乳児用ミルク)と普通のミルクを用意する
- これらを飲ませた子供たちのあいだで、どれぐらい感染症の発生率が異なるのかを調べる
- 研究に参加した幼児と子どもは合計3,805名で、実験のスタート時に健康で4歳までの子供たちに限定。実験期間は3カ月から5年のあいだで実施された
みたいになります。「バイオティックミルク」って知らなかったんですけど、普通に「ミルク生活プラス」みたいな粉ミルクも売られてたんですね(これは大人用ですが)。ちょっと飲んでみるか……。
で、分析の結果はこんな感じになりました。
- 全体的な分析結果としては、バイオティックミルクは感染症のリスクを11%減少させた(対照と比較)
- すべての試験の品質は良好であり、出版バイアスの証拠は認められなかった
って感じになってます。あくまで乳幼児の話ではありますが、こうして見ると「あれ?やっぱ腸内細菌っていいんじゃないの?」って気になってきますね。
もっとも、残念なポイントとしては、このデータはかなり結果にバラつきがありまして「どんな人にもプロバイオティクスが効く!」とはとても言えないレベルではあります。と同時に、プレ・プロ・シンバイオティクスの種類や投与量が実験ごとにかなり異なるんで、「感染症の対策に、これぐらいプロバイオティクスを飲もうぜ!」みたいな明確な指針が出せないんですよねー。これは難しいところです。
とはいえ、今回の結果は、感染症に対するプロバイオティクスの効果を検討した過去のメタ分析の結果と一貫性がありまして、
- 2014年のメタ分析では、一般的な急性呼吸器感染症を発症した子どもと大人を対象にプロバイオティクスの効果をチェック。その結果、プロバイオティクス(特にビフィズス菌と乳酸菌)は、病気の期間と総病欠日数を中等度に減少させることがわかった(R)
- 2015年のメタ分析でも、子どもと大人を対象にプロバイオティクスの効果をチェック。その結果、プロバイオティクスは、風邪の症状、風邪による学校の欠席、抗生物質の使用などを減少させることがわかった(R)
- 2016年のメタ分析では、プロバイオティクスは少なくとも1つの感染症を持つ子供の数を減少させる働きが確認された(R)
- 2020年のメタ分析では、プロバイオティクスは、成人における尿路感染症の発生率と期間を減少させることがわかった(R)
みたいな結果は過去にも得られてるんですよね。いずれのメタ分析においても、「実験ごとに結果がバラバラで解釈が難しい!」ってのは同じなんですが、やっぱ「腸内環境を整えておくのが普通の風邪やその他の感染症の対策になるんだなー」って感じはプンプン臭ってくるわけです。
くり返しになりますが、まだ「この菌株をこれぐらい飲もうぜ!」とはとても言えない段階ではありますが、プレバイオティクス(食物繊維など)、プロバイオティクス(腸内細菌サプリ)、シンバイオティクス(プレバイオティクスとプロバイオティクスを組み合わせたもの)の3つはいずれも気にしておくと良さそうであります。とりあえず大人の粉ミルク買ってみよう。