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プロバイオティクスはエクササイズと免疫改善にどれだけ役立つか?を調べた系統的レビューの話

 

プロバイオティクスってどこまで効くの?って問題については、まだよくわかってない面が多いわけです。ヒトの健康を維持するためにお腹の調子が大事なのは確実なものの、果たして腸内細菌をサプリとして飲んだ場合にも様々なメリットが得られるのか?って話ですね。

 

 

この問題については、過去にも「すでに健康な人は無意味かも?」みたいな見解も出てまして、個人的にも「サプリメーカーが言うほどのメリットはないだろうけど、お腹の調子が悪い人にはそれなりの意味があるだろうなぁ」ぐらいに思っております。ここらへんは非常に判断が難しいとこっすね。

 

 

といった状況下、今度は「プロバイオティクスがエクササイズと免疫改善にどれだけ役立つか?」ってところを徹底的に調べた論文(R)が出てて役立ちそうであります。

 

 

これは過去のプロバイオティクス研究から、

 

  • そこそこ日常的に体を動かしている人
  • トップアスリート

 

のように、普段の運動量が多い参加者を対象にした研究をまとめた系統的レビューです。そのうち10件のRCTはバイアスの影響が強くて信頼性は中程度なんだけど、残り14件は実験のクオリティも高くていい感じになってます。

 

 

1.プロバイオティクスで運動パフォーマンスは上がるか?

では、系統的レビューでわかったことをまとめていきましょう。

 

 

まずプロバイオティクスと運動パフォーマンスの関係については、5件のデータがアスリートを対象にしております。例えば、「プロバイオティクスで筋肉痛は治るか?」を調べた実験(R)では、参加者の男性に対して、

 

  • Bifidobacterium breve BR03
  • Streptococcus thermophilus FP4

 

っていう2種類の腸内細菌を21日ほど飲み続けてもらったら、筋トレのダメージが”ちょっとだけ"やわらぎ、さらに体内の炎症マーカー(IL6)も減ってたそうな。

 

 

さらにまた別の実験(R)では、趣味で筋トレをやってる男性に対して、

 

  • Bacillus coagulans GBI-30 6086

 

って菌を朝食といっしょに飲んでもらったら、やはり筋肉ダメージの回復スピードがアップしたらしい(クレアチンキナーゼも少なかった)。

 

 

というと、「プロバイオティクスは筋トレにも役立つんだ!」って気分になりそうですが、一方では「効果が確認されなかったぞ!」ってデータ(R)もあるのが悩ましいところ。こちらの実験では、参加者に乳酸菌やビフィズス菌を飲ませつつ筋トレを指示したんですけど、筋肉ダメージや体内の炎症レベルには変化がなかったそうな。うーん、悩ましい……。

 

 

とりあえず、ざっくりとした傾向を見てみると、

 

  • プロバイオティクスで運動パフォーマンスが上がることを示したデータは一件もない
  • もしかしたら、筋トレのダメージ回復には効くのかも?ぐらいの印象だけど、これもよくわからない

 

ぐらいの感じになりますね。トレーニング用にプロバイオティクスを使うのは現実的じゃないかなー、という。

 

 

 

2.プロバイオティクスと免疫システム

続いて、プロバイオティクスで免疫システムは改善するのか?ってとこを見てみましょう。プロバイオティクスで体内の炎症が減ったり、風邪が回復したりといったメリットは得られるのか?って問題ですね。

 

 

こちらについては、もう少しハッキリした結論が出てまして、

 

  • 全体的にみると、風邪の症状に対する効果が高そう!(もちろんいくつかの例外はあるものの)

 

って感じです。どうやらプロバイオティクスは免疫システムを刺激するうえに、病原菌が使うレセプターをブロックし、さらには腸内細菌が生み出す短鎖脂肪酸も風邪の症状をやわらげるために役立つみたいなんですな。

 

 

ちなみに、ご存じの方も多いでしょうが、毎日のようにハードすぎる運動をしている人は風邪をひきやすい傾向がありまして、そのようなタイプの人にもプロバイオティクスは有効っぽいです。ハードな運動はリーキーガットを引き起こしたり、免疫機能を低下させるんで、どうしても病気に弱くなるんですよね。

 

 

そんなわけで、ここまでの話をまとめると、

 

  • プロバイオティクスで筋肉や筋力が増えたりはしないが、疲労感の軽減に役立つ可能性はある
  • ハードな運動で免疫システムが不調を起こしたときも、プロバイオティクスが効く可能性はそこそこある

 

といったところになりましょう。いずれにせよ、まだまだ「そうだったらいいなぁ……」ぐらいの結論しか出せないレベルではありますが、意外と希望のあるデータじゃないでしょうか。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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